従業員への制裁(降格・降給)
いつも当ご相談サイトを参考にさせていただいております。
本日ご相談させていただきたいのは、弊社の従業員の懲戒降給についてです。
【状況ご説明】
・弊社従業員が会社の販促費用を虚偽の申請により不当に使用していたことが判明。その従業員(2名)に対する制裁として「給与の号俸を下げる」ことにしたい。
・弊社の給与制度は、基準内賃金が「資格給+職能給」で構成されており、「資格給」は一般職4級・3級・2級・1級、基幹職3級・2級・1級それぞれの級ごとに定められた金額の資格給が支給されます。「職能給」はそれぞれの資格(級)の中で決められた数段階構成の「号俸」制により、号俸ごとに積算された金額の「職能給」が支給されるものです。(例: 一般職1級3号俸の月額給与=¥200,000〔内訳:¥150,000(資格給)+¥50,000(職能給)〕など。左記金額はあくまでも例としての数字で実際のものではありません。)
・弊社では、「資格(級)」が下がることを「降格」、「号俸」が下がることを「降給」と呼び、年に一度の昇給昇格考課において、全従業員の評価が実施され、つけられた評価(S⇒A⇒B⇒C⇒D)のいづれかによって号俸の上がり具合(または下がり具合)が変わり、昇給昇格(または降給降格)がされる制度になっております。
降給(号俸が下がる)に関しては、最低号俸を超えて下がってしまった場合と連続3回(=3年間)のD評価となってしまった場合に、「降格」となるシステムになっています。
・今回の制裁で「給与の号俸を下げる」という意図は、実質 その従業員のお給料を下げることにあります。 前述の人事考課時期ではありませんが、制裁目的で号俸を下げることを検討しています。
・なお、今回制裁の対象となっている従業員2名は、1名が正社員・もう1名が契約社員です。両者とも基幹職(管理職)です。
・契約社員の規程の中の「制裁」については、正社員と同様の記載があります。
・契約社員は基本的に1年間の契約となっており、契約満了日は各契約社員の入社日によってことなります。現在の契約が満了となり契約更新をおこなう時(ほぼ継続的に更新)に、更新後のお給料を決めています。前述の正社員の人事考課(昇給昇格評価)とは異なるやり方(⇒ 過去1年間の契約社員の活躍を鑑み、担当役員が本人と面談し、更新後のお給料(職能給+資格給)を決め、社長までの承認が得られればその金額でのお給料で更新後の1年間を勤務いただくやり方)です。
【弊社規程上の明記】
・弊社の規定に基づく制裁は、1)譴責として始末書をとる 2)減給(労基法第91条に準じた表記「1回の額が平均賃金の1日分の半額、総額が1ヶ月の賃金総額の10分の1の範囲で行う」あり。) 3)出勤停止 4)懲戒解雇 の4区分のみです。 「懲戒降格(または降給)」という文言の明記は制裁の条項にはありません。
・規程の中には、「損害賠償」の条文もあります。「従業員が故意または過失によって会社に損害を与えたときは、その全部または一部を賠償させる。ただし、これによって第○条の制裁を免れるものではない。」との記載です。
【ご相談内容】
1) 以上の状況、規程内容の上で、当該社員への「降給」制裁を施すことは問題でしょうか?
⇒ 制裁の規定に「降格・降給」を追加すれば、何の問題もないでしょうか?(当該社員を降給するために規定に追記した行為であることが明らかに分かってしまうかも知れませんが・・・)
2) 契約社員に対する「降給または降格」については、制裁での扱いは正社員と同じように今の規程に明記がない以上は実施できないとした場合、契約更新時の給与決めの際には不当な行為/会社への不利益をもたらしたことを理由に降給することは問題ないでしょうか?
3) 個人的な見解としては、「損害賠償」の規程に準じて、不当に使用した販促費用の全額または一部を会社へ返金してもらい、かつ 不当に使用した(複数回の)費用に対しての制裁として、その期間の賃金総額の10分の1以内で減給をし、降格・降給は行わないことを選択するのが会社として妥当かも知れないと思っておりますが、その見解はいかがでしょうか? またその場合でも、年に1度の(正社員の)昇給昇格考課、(契約社員の)契約更新時には、不当行為をした実績があることによって職能評価を下げ、通常の評価の中で(その結果として)降格・降給となるのが本来のやり方ではないか?と思っておりますが、(制裁で)減給した後に(前述の理由によって評価が悪くなった結果の)降格・降級を施すことは、「二重処分」とみなされてしまうものでしょうか?
長くなりまして恐縮ですが、よろしくお願い致します。
投稿日:2010/11/17 18:33 ID:QA-0023875
- munashioさん
- 東京都/繊維製品・アパレル・服飾(企業規模 1001~3000人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- この回答者の情報は非公開になりました
減給処分
今回のケースは、貴社の就業規則では「減給」という懲戒処分に当たることになりますね。それを人事制度上、懲戒降格、または懲戒降給と呼んでもそれは同じことで、問題はありません。
貴社の給与体系は、職能給と資格給で構成されており、生活関連の基本給がないようですが、過去の人事制度移行の際、職能給に統合されたのでしょうか?
いずれにしても、販促費をめぐる不正行為は本人も認めるところであり、懲戒解雇もやむなしとする会社もあるところ、貴社は減給に留めるわけですから、本人たちも納得すると考えます。
投稿日:2010/11/17 18:47 ID:QA-0023876
プロフェッショナルからの回答
- この回答者の情報は非公開になりました
減給処分のあれこれ
減給し、降格するほうがすっきりしそうです。
同一等級内での号俸相当分を減給する場合、恒久的に下げにくいです。
ただ、本人も納得しているなら、等級内で号俸を下げて恒久化し、そこから再び昇給させるという実務はありうることでしょう。
ただ、一般に減給という場合、6ヶ月とか12ヶ月とか、期限付きで行なうほうが一般的ですね。
投稿日:2010/11/17 19:21 ID:QA-0023878
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
御質問に各々回答させて頂きますと‥
1):人事評価制度に基づく降格・降給は、あくまで「評価」に基く措置であって制裁には当たりません。
御社の場合、制裁規定上に減給規定がございますが、労基法第91条に触れていることからも降格・降給による減給を指しているとはいえません。
従いまして、規程内容の上で当該社員への「降給」制裁を施すことは出来ませんし、また事後に改正して適用するといった措置も不利益な遡及変更になりますので同じく出来ません。
2):1)と同様に、契約社員との雇用契約においてそうした降給措置について定めがなければ出来ません。但し、有期雇用契約であっても通常であれば評価により更新時に給与の見直しをすることは定めているはずですので、そうした規定内容に従って人事評価の結果として更新時に昇給または降給することは勿論認められます。有期雇用契約書をご確認頂いた上で内容に沿った対応が必要です。
3):貴殿の見解による措置に関しましては特に差し支えございません。規定にもございますように、損害賠償請求と制裁は別物ですので同時に行うことは可能ですし、制裁による降格・降給が出来ないことからも仮に制裁措置発令にこだわるならばこうした措置が現実的ともいえるでしょう。
また制裁・損害賠償と人事評価に関しても別の事柄ですので、制裁や損害賠償請求を加えたとしましても、定期的な人事評価に制裁等の事由となった行為が反映されて降格・降給となるとすれば、それ自体で違法な二重処分とはなりません。
しかしながら、制裁事由となった行為のみでもって評価を行い降格・降給させるとなりますと評価に名を借りた実質上の制裁とも受け取られかねません。従いまして、人事評価として降格・降給措置を採られる際には、他の評価要素も含めた上で御社評価規定に沿った総合的な評価結果として行うべきといえるでしょう。
投稿日:2010/11/17 20:35 ID:QA-0023881
相談者より
詳細のアドバイスを賜り、ありがとうございました。
やはり、人事考課制度の中で今回の事実に対するマイナス評価も加味した評価点をつけ、減給の制裁と損害賠償請求を適用する方法が適切との判断を役員へ投げかけてみます。ありがとうございました。
投稿日:2010/11/18 15:28 ID:QA-0041662大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
定期考課による降格と損害賠償の併用が妥当
.
■ 既に起きてしまっている特定の制裁を実施する目的で、「 降格・降給 」 を規程に追加し、遡及して適用することは、《 違法 》 です。更に、制裁減給を合法化するために、社内の定めを無視した時期に考課を実施するのは、目的が丸見えで、これも、《 社内ルール違反 》 です。
■ 労基法の上限の定めに応じた 「 減給 」 では、不十分で、「 懲戒解雇 」 以外に適用できるものは、( 3 ) の 「 出勤停止 」 だけです。但し、その具体的中身は不明です。「 自宅謹慎 + 減給 」 でしょうか? そうなら、当面の効果は、「 減給 」 とあまり変わりません。
■ 但し、次回の 《 定期考課の実施時 》 に ( どの評価項目に該当するかは分かりませんが )、例えば、基本行動 ( 通常、情意など、社員として要求される基本的行動規範が含まれる ) などの要素への 《 大幅な減点評価を通じた降格措置 》 などは検討する価値があるでしょう。
■ なお、ご相談の事例は、労働基準法第16条の保護対象とはならず、民法709条による不法行為による 《 損害賠償対象になる 》 ものと推定できます。いわゆる、一事不再理には該当しないということです。
投稿日:2010/11/18 10:38 ID:QA-0023887
相談者より
アドバイスをありがとうございました。定期考課を実施する際には、減点幅をどれくらいにするか?も不当に幅を大きくしないように評価者へ注意し、減点以外の要素も加えて適切なジャッジで評価できるよう人事としてサポートしていこうと思います。ありがとうございました。
投稿日:2010/11/18 15:32 ID:QA-0041666大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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