借上住宅制度を導入した場合の企業側のリスク
いつもお世話になっております。
弊社では福利厚生の一環として、住宅手当または借上社宅の導入を検討しております。税制上の課税対象や社会保険料の算定基礎への影響を踏まえると、借上社宅の方が経済的メリットがあるとのご意見が多いように感じております(この理解が合っているかもご指摘を賜りたく存じます)
そこで、借上社宅制度を導入した場合に考えられるデメリットやリスクについてご教示いただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。
投稿日:2026/01/08 00:50 ID:QA-0162849
- HRHAMさん
- 東京都/その他業種(企業規模 31~50人)
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具体的な事案については、必ずご自身の責任で弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
住宅手当と借上社宅の比較を前提に、借上社宅制度のデメリット・リスクを中心に整理してご説明申し上げます。
1.借上社宅の方が有利かについて
結論から申し上げると、一定の要件を満たす限り、借上社宅の方が税務・社会保険の面で有利になるケースが多いという理解は概ね正しいです。
借上社宅では、会社が家主と賃貸借契約を結び、従業員から「賃料相当額(一定の計算式)」を徴収すれば、その差額は給与課税・社会保険料算定の対象外となります。一方、住宅手当は原則として全額が課税・算定基礎対象となるため、実質手取りに差が出ます。
2.借上社宅制度の主なデメリット・リスク
(1) 制度設計・運用が煩雑
借上社宅は
会社名義での契約
社宅規程の整備
従業員からの賃料徴収(最低限必要)
などが不可欠で、住宅手当に比べ制度設計・管理コストが高い点がデメリットです。
特に「賃料相当額」の計算を誤ると、差額全額が給与課税されるリスクがあります。
(2) 税務調査・年金事務所調査で否認されやすい
借上社宅は節税効果が高いため、
従業員負担額が著しく低い
規程が形式的
実態が「給与補填」に近い
と判断されると、遡って給与扱いとされるリスクがあります。
否認された場合、**所得税・住民税・社会保険料の追徴(会社負担分含む)**が発生し、影響は大きくなります。
(3) 対象者の公平性・不満リスク
借上社宅は
既婚者のみ
転勤者のみ
希望者のみ
など対象を限定することが多く、非対象者から不公平感が生じやすい制度です。
住宅手当と併存させる場合も、処遇差が説明できないと人事トラブルにつながる可能性があります。
(4) 退職・異動時のトラブル
会社名義の契約であるため、
退職時の退去期限
原状回復費用の負担
中途解約違約金
などについて、会社と本人の責任分界を明確にしておかないと紛争化しやすいです。
特に短期退職者が多い場合、会社側のコスト負担が想定以上になることがあります。
(5) 住宅選定・入居制限に関する問題
高額物件や本人希望の自由度をどこまで認めるかによって、
福利厚生の趣旨を逸脱
役職者優遇と受け取られる
といったリスクがあります。上限賃料や物件基準を明確にしない運用は危険です。
3.実務上の対応ポイント(重要)
借上社宅を導入する場合は、
社宅規程の整備
賃料相当額の適正計算
従業員負担額の確実な徴収
対象者・上限額・退去ルールの明確化
が不可欠です。
「節税になるから」という理由だけでの導入は、後日の否認リスクが高いため、制度趣旨と実態の整合性が重要となります。
4.まとめ
借上社宅は、税・社会保険面では住宅手当より有利になりやすい一方、制度設計・管理・否認リスクが高い制度です。
企業規模、従業員構成、定着率を踏まえ、「簡便さ重視なら住宅手当」「長期雇用・制度運用が可能なら借上社宅」といった整理が実務的といえます。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2026/01/08 08:38 ID:QA-0162854
相談者より
早速のご回答を有難うございました。詳細にご教示頂きまして、私の理解が深まるとともに今後対応すべき事項も明確になり、大変参考になりました。引き続き、よろしくお願いいたします。
投稿日:2026/01/08 10:29 ID:QA-0162866大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
借上社宅は住宅手当と比較して所得税や社会保険料の負担を抑えられるため、
労使双方に高い経済的メリットがあるとは思います。
一方で、ご記載の通り、導入時にはいくつかの注意点が存在するかと存じます。
まず、会社が直接契約の主体となるため、物件の契約や更新、原状回復費用の
精算など事務負担が大幅に増加します。
また、従業員の退職時に発生する解約までの空家賃は会社負担となるリスクが
あります。さらに持ち家の人との不公平感にも配慮が必要です。
運用の際は、社宅管理規程を整備し、事務工数の削減策を検討することを、
お勧めいたします。
投稿日:2026/01/08 08:43 ID:QA-0162856
相談者より
早速のご回答を有難うございました。大変参考になりました。今後取り組むべきことへの理解も深まりました。引き続き、よろしくお願いいたします。
投稿日:2026/01/08 10:32 ID:QA-0162867大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
借上社宅は税制面などのメリットが大きいことは知られていますが、その運用が意外に手間であることはあまり認識されていないことが多いようです。
特にどこまで社が負担するのか、対象外の社員、持ち家社員との不公平感を完全に払拭することは不可能ですが、それでも導入するだけのメリットを経営的に感じているかどうかです。
強い意志と決断によって、実行できますので、途中でハシゴを外すことがないよう、運用ルールやトラブル対応まで正確にシミュレーションしておく必要があるでしょう。
投稿日:2026/01/08 10:35 ID:QA-0162868
相談者より
ご回答を頂き有難うございます。「運用ルールやトラブル対応まで正確にシミュレーションしておく必要がある」とのアドバイスを参考にさせていただきます。引き続き、よろしくお願いいたします。
投稿日:2026/01/10 21:33 ID:QA-0163005大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
「借上社宅の企業側のリスク」について回答させていただきます。
ご質問の件、社宅代行業務を行っている会社として、
主に運用と業務の面から回答させていただきます。
まず税法上の扱いだけを見ると、
「住宅手当を支給する場合よりも、借上社宅のほうが有利になるケースが多い」
という点は他の方のご回答の通りです。
一方で、借上社宅には制度としてのメリットがある反面、
「運用面での負担が生じる」という側面もございます。
【最大のポイント】
借上社宅の特徴は"法人様が賃貸借契約の主体になる"という点です。
個人契約とは異なり、法人様が主体となる以上「決めること」「動くこと」を自社で行う必要があるため、それに伴って責任や対応義務も発生します。
<運用開始前>
・社宅規程の策定
・申請フローの制定
<運用中>
・入居の手続き(お部屋探し~新規契約手続き)
・更新・解約・名義変更(継続的に発生)
・毎月の家賃送金
・入居者様からの問い合わせ対応
……など
こうした実務は一つ一つは難しいものではないかもしれませんが、積み重なると膨大な工数がかかります。
不動産業が主業務ではない企業様にとっては、
●慣れない業務に時間を取られる
●判断や調整に迷う場面が増える
このような時間的・精神的に負担を感じやすい点が、リスクとして挙げられます。
<実際に導入している企業様の対応>
上記のような背景から、多くの企業様が業務負担の軽減を目的として社宅代行業者を活用されています。
弊社が専門業者として社宅運用をお手伝いする中で、「制度自体よりも、運用をどう回すか」が導入後の満足度を左右する場面をよく見てまいりました。
なお、デメリットがあるにもかかわらず借上社宅を導入する企業様が多いのは、
税法上のメリットに加え、人材獲得や定着、離職防止といった面で、
制度がしっかり貢献していると感じられているからだと思います。
運用面の負担と、必要に応じて外部の力を借りるかどうかも含めて、
御社に合った形を見極めながら検討されるのがよいのでは、と考えています。
長くなりましたが、少しでも借上社宅導入のご検討の一助となれましたら幸いです。
投稿日:2026/01/08 15:18 ID:QA-0162882
相談者より
ご回答を有難うございます。詳細にご教示いただき、理解が深まりました。おっしゃる通り、法人が契約主体となることの責任やオペレーションの負荷が高まることを勘案しますと導入については慎重に検討するべきかと思います。有難うございました。
投稿日:2026/01/13 12:16 ID:QA-0163023大変参考になった
本Q&Aは法的な助言・診断を行うものではなく、専門家による一般的な情報提供を目的としています。
回答内容の正確性・完全性を保証するものではなく、本情報の利用により生じたいかなる損害についても、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
具体的な事案については、必ずご自身の責任で弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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