人材の確保が厳しい状況下で、企業は自社の魅力として何を打ち出していくべきか。従業員の生産性やエンゲージメントを高めるため、どのような施策を行えばいいのか。これらの課題を解決する上で注目されるのが、福利厚生の一つである「社宅制度」です。これまでは従業員にとって自由度がほとんどなく、人事担当者には手続きで多くの手間が発生してしまうという難しさがありました。
そうした社宅に関わる手間を軽減し、さらには従業員のエンゲージメントや生産性向上にもつなげることができるのが、三優エステート株式会社の社宅代行サービス「社宅2.0」です。同社のサービスを利用する社会福祉法人 茶の花福祉会の清水さんと佐藤さんに導入の背景やメリットを、三優エステートの池田さんに「社宅2.0」の概要や今後の展望について聞きました。
仕事に前向きになれる住環境づくりを目指して
まずは、茶の花福祉会の事業内容と清水さんの業務内容についてお聞かせください。
清水:茶の花福祉会は、障がい者を支援している社会福祉法人です。所沢市・入間市・狭山市など、埼玉県西部地域を中心に40以上の施設を運営しています。
私は6年前に当法人に中途入社し、新卒・中途・外国籍の方の採用を中心に人事業務全般を担当しています。前職では飲食店で店長やマネジャー職を務めていたこともあり、人事にとってのお客さまは従業員であると位置づけ、従業員満足度を高めることが私の役割だと考えて日々の業務に取り組んでいます。
入社後、人事業務において課題だと感じたことはありましたか。
清水:入社してすぐに感じたのは、さまざまな福利厚生制度や報酬制度があるのに、従業員や応募者にうまく伝えられていないことでした。例えば、有給休暇制度は入社月に関係なく、毎年4月に一斉付与されます。家賃補助は、社宅であれば手当が上乗せされます。しかし、誰もが「そんな制度があるの」というような状況でした。
当法人が福利厚生や報酬制度の充実を図って来た根幹には、理事長の思いがあります。「障がい者支援の仕事は、人ありき。どれだけ技術が進歩しても、従業員を大切にしなければいけない」と考えていたからです。
福利厚生の一つである社宅制度では、どのような取り組みをされているのでしょうか。
清水:寮を設置したのが社宅の始まりです。その後、事業拡大に伴って、不動産賃貸会社を利用した借り上げ社宅を従業員に提供するようになりました。
以前の社宅入居者は15人から20名ほどでしたが、当法人の福利厚生の良さを積極的に伝えるようにしてからは、社宅利用が拡大しています。新卒採用活動でも全国各地から入職希望の応募があり、新規の社宅入居者が年間40人ほどいます。
当初は私が社宅に関する窓口を担当していました。物件に関する要望のヒアリングに始まり、物件探し、現地確認、家具・家電の設置、敷金・家賃の振込、入居手続き、入居後のクレーム対応など、細かな業務も担当していました。
一人が入居するにあたり、最低5物件は提案したいと考えているので、トータルで200物件を提案していました。なぜそこまでするのかとよく聞かれましたが、従業員が仕事で疲れて帰ったときに、くつろぐことのできる環境があってほしいと考えたからです。
しかし、その当時お願いしていた不動産賃貸会社は、部屋の構造や造りがどれも似通っていました。それでは、従業員の多種多様な価値観や好みに応えられません。
また、女性従業員は一人暮らしに不安があるため、オートロックやセキュリティシステム付きの部屋を希望することが多くなります。しかし残念ながら、当社が提示する予算内では要望を満たす物件がほとんどありませんでした。
そういったことが理由で、不動産賃貸会社を見直さなければならないと考えるようになりました。
三優エステートのサービスを導入した背景を教えてください。
清水:2020年に、三優エステートの営業の方と偶然知り合ったのがきっかけです。社宅業務に関して抱えていた課題をすべてお伝えしたところ、「当社のサービスであれば、すべて解決することができます」とおっしゃったんです。
決め手になったのは、物件の現地確認をはじめ、社宅にまつわる業務について責任を持って対応していただけたこと。最終的に「三優エステートに任せても大丈夫だ」と判断しました。
理想郷と呼べる社宅を提供する「社宅2.0」
三優エステートの「社宅2.0」とは、どのようなサービスでしょうか。一般的な社宅との違いなど、具体的にお聞かせください。
池田:当社は、社宅制度の提供を通じて、働く人たちのワーク・エンゲージメント向上を目指しています。しかし多くの方が社宅と聞いてイメージするのは、会社が保有している物件に住む、といったものではないでしょうか。
借り上げ社宅の場合も、会社が決めた不動産業者、代行業者から提示された物件の中から選ぶことが多く、制限があります。従業員側は用意された社宅に黙って入居するというケースが多いのではないでしょうか。
「社宅2.0」は、こうした従来型の社宅制度とは全く異なります。企業とそこで働く社員、双方の幸福を実現するため、「住まい」の環境を整備するコンサルティングサービスです。
その考え方のベースにあるのが、当社の経営理念「3U is excellent !」で掲げている三つのUの一つである、「Utopia(理想郷)」です。社宅を利用される方に理想郷を提供したい、という思いに基づいて、利用者に寄り添った住まい環境をお探ししています。
近年、「社宅2.0」への問い合わせが増えています。理由の一つは、プライベートを大切にされたい方が増えていること。家でリラックスして鋭気を養いたい、趣味を楽しみたい、といったご要望がますます強くなっています。
また、コロナ禍でテレワークが常態化していることも理由の一つです。家で仕事をする時間が増えたことで、住まいに対する要望が変化しています。「社宅2.0」では、入居者のニーズに寄り添い、社宅を提供している会社とのエンゲージメントや絆が深まるサービスになるよう、心がけています。
具体的なサービス内容について教えてください。
池田:「社宅2.0」では、企業からの社宅に関する要望を、全国規模でお応えしています。ご希望に合った物件を探し出し、物件オーナーとの交渉も当社がすべて代行します。特長は、転貸借モデルを採用していること。まず、貸主から当社が物件を借り受け、カスタマイズした上で、社宅として企業に提供しています。
つまり、当社が貸主ということです。単なる代行業では、企業と貸主の間に入って契約手続きを代行するだけですが、当社は貸主として管理会社的な側面も担っています。そのため、家電・家具の手配やインターネット環境の整備、入居後のトラブル対応なども、すべて当社の担当者が行っています。
採用活動の活性化と従業員満足度の向上を実現
茶の花福祉会では、いつから三優エステートのサービスを導入されたのでしょうか。
清水:2021年卒の新入社員が入職するタイミングで、導入しました。当法人では、毎年1月に内定者の配属先が決まり、入職後はその拠点の近くに住んでもらうことになっています。2021年卒の新入社員は17名。そのうち12名が社宅を希望していました。
12名に社宅に対するヒアリングシートを記入してもらうと、2階以上や角部屋、オートロックなどの条件が挙がってきました。さすがに予算内ではオートロックは難しいのではないかと思っていたのですが、紹介された物件のバリエーションは期待以上で、オートロックの物件もありました。それ以外の要望にも、スピーディーかつきめ細かに対応してくれました。
例えば、社宅で一人暮らしを始める際に、家具や家電をそろえるのは大変です。セッティングするのが苦手な人もいます。しかし三優エステートでは、必要な家具・家電を伝えると設置だけではなく、電源スイッチを入れればすぐにでも使える状態にしてくれます。入居者の中には、「テレビだけを持ち込みたい」という新卒社員もいます。一般的な家具・家電付き物件ではワンセットになっていますが、必要がないものは省いてもらえ、家賃も減額されます。
「社宅2.0」を導入後、どのような変化がありましたか。
清水:一番大きいのは、採用活動でのアピールポイントに活用できることです。新卒採用活動で応募者が増える要因の一つとなり、前年比でエントリー数が2.5倍、内定者数が5倍に伸びました。
従来の社宅は、自分好みの物件を自由に選べませんでした。満足度は低く、早く社宅を出ることが新入社員の目標となっているような状況でした。中には、「こんな社宅は嫌だから会社を辞めよう」と考える人もいたかもしれません。しかし「社宅2.0」を導入後は、社宅に関する不満はほとんど聞かなくなりました。帰宅後のプライベート空間に不満がなくなった分、仕事も前向きに取り組めているように感じます。
人事担当者として、社宅業務の負担は軽減されましたか。
清水:社宅業務は、三優エステートの担当営業の方にほぼお任せしています。私は入居希望者からヒアリングシートを回収して渡すだけです。利用者には「何か要望があれば、三優エステートの担当者に直接言ってください」と伝えているほどです。
以前の業務負担の度合が10だったとしたら、現在は1か2ぐらいに減っています。当然、空いた時間は他のやるべき人事業務に割くことができています。
従業員に魅力的な物件を紹介していきたい
佐藤さんは、三優エステートのサービスを介して社宅に入居されています。充実した社宅制度は魅力的でしたか。
佐藤:私は宮城県仙台市の出身です。就職活動中、採用担当だった清水から社宅の説明を聞いたとき、魅力的な制度だと感じました。入職を決めた一つの理由になったといっても良いくらいです。
私がヒアリングシートで要望したのは、勤務する施設まで自転車で通える距離であること、家賃が6万円以下でバス・トイレ別であることなど。その後、三優エステートから提示された物件は、私の希望を上回るものでした。
家賃が5万円に届かないのに、鉄筋コンクリート造りの2階角部屋で10畳と広く、クローゼットが二つあります。1階は接骨院なのですが、夜は営業していないので、遠慮なく趣味の楽器演奏を楽しめそうでした。入居まで時間がない中で、非常にいい物件を紹介してもらえました。両親も「良い部屋で良かったね」と安心してくれています。
茶の花福祉会で、今後予定されている人事施策などがありましたら教えてください。
清水:社宅制度では、2022年卒の新入社員に向けて、より詳細なヒアリングシートを用意したいと思っています。現在は社外向けにアピールしていますが、今後は従業員向けにも周知していきたいですね。社宅に入る・入らないは別としても、制度があることを知ってもらうことは、従業員の満足度が向上する一つの要因になるからです。
また、外国籍の従業員にも対象を広げる予定です。現在は、実質的に家賃のかからない、シェアリング型の社宅に住んでもらっていますが、モチベーション高く働いてもらうために、しっかりとお金を稼げば一人暮らしも可能だという選択肢を提示したいと考えています。
最後に「社宅2.0」のサービス展望などがあればお聞かせください。
池田:「社宅2.0」が企業の採用活動に役立ち、社宅を利用する従業員の満足度やエンゲージメント向上に寄与しているのはうれしい限りです。清水さんからヒアリングシートのお話がありましたが、当社では入居される方のニーズを聞き出し、ご要望にマッチした物件の提供を通じて、ワーク・エンゲージメント向上のお役に立ちたいと考えています。
三優エステート株式会社は、社宅制度の導入を通じて、組織のワーク・エンゲージメントを向上させるソリューションを提供しています。
適正な住まいの提供により社員のワーク・エンゲージメントを高め、社員個人の幸福感の向上と同時に離職率の低下を実現、個人と組織の両方に良い影響を与える、その実現に努めています。