在籍出向者の社宅について
子会社に親会社在籍の出向者が配属され、赴任した場合の社宅の契約についてご質問です。
親会社の異動細則には、出向者は親会社の福利厚生を適用するとあります。
現在は、出向者の社宅は親会社の名義で不動産会社と契約し、親会社の運用(広さや賃貸料の限度額。社員の自己負担額)に従って借りています。賃貸料は、親会社が負担し、社員の一部自己負担額も親会社の給与計算の基礎に入っています。
出向者の労働に係る人件費として社宅費含めて給与と賞与額を全額、子会社から親会社に支払ってます。
この度、出向者の社宅を子会社の名義で不動産会社と契約し、支払うよう提案されました。賃貸契約内容は、親会社の給与計算に入れるため、親会社の人事部に連絡するようにとのことでした。
個人情報保護法では、子会社は第三者扱いであることや、親会社の給与計算のソフトに社宅費を登録することによって、社会保険料の現物給与の計算や、社員の給与からは社宅費の一部の自己負担額が控除されますので、本人と会社間で相殺方法が正しくできるのか心配です。また、その給与計算は、合ってるのでしょうか。
そもそも、親会社在籍の出向者であるため、親会社の給与計算で、現物給与は社会保険料の基礎に含まれて計算され、また、社宅費の一部自己負担額を控除するのに、子会社の名義で不動産会社と賃貸契約することに違和感があります。
今は人件費として社宅費含めて、子会社から親会社に支払っていますが、この提案では、子会社名義の賃貸料を親会社に支払うことはなくなり、相殺のような方法となりそうです。
もし、親会社の提案通りに動いた場合、リスクはありますでしょうか。
またどのようなリスクが考えられますでしょうか。
ご教示のほどよろしくお願いいたします。
投稿日:2025/06/06 22:21 ID:QA-0153649
- *****さん
- 東京都/販売・小売(企業規模 101~300人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1,現状の整理
出向者は親会社に在籍し、子会社に出向。
社宅は親会社名義で契約 → 社宅の貸主は親会社。
賃料:親会社が全額負担し、出向者から一部自己負担を給与天引き。
子会社は、社宅費含む出向者の人件費全体を親会社に立替払い。
→ このスキームでは、
社宅は親会社の福利厚生の一環として機能。
親会社の給与計算システムで、現物給与(社宅貸与)を正しく社会保険料計算に反映できている。
出向者の名義はあくまで親会社所属として整合が取れている。
2.子会社名義で社宅契約とする案の問題点
原則として、出向者が親会社に在籍している以上、社宅契約も親会社が行うことが原則的に適切です。子会社名義で契約することにより、以下のリスクが発生します:
(1)社会保険料の算定リスク(現物給与の取り扱い)
現状→社宅は親会社の福利厚生として貸与され、厚生労働省の定める「現物給与」として処理。
→ 社宅の貸与価値が標準報酬月額の算定に含まれる。
リスク→子会社名義になると、親会社が「現物給与を提供している」とみなされにくくなる。→ 親会社給与計算で現物給与の算入が適正と見なされないリスク(社会保険料の算定誤り)。
結果として、将来の年金額や傷病手当金等の給付額に影響する恐れあり。
(2)給与からの自己負担額控除の法的根拠の希薄化
子会社が契約・支払している場合、親会社が社員の給与から自己負担額を控除する契約的根拠が弱くなる。
就業規則や賃金規程上、「親会社が貸与している社宅について自己負担を徴収」と記載があっても、
→ 貸主が子会社なら、親会社が控除する法的根拠が曖昧になる。
(3)個人情報保護上の懸念
出向者の社宅費、給与控除額、その他給与計算データを子会社と共有する場合、
→ 親会社と子会社が「別法人」である以上、原則として第三者提供に該当。
出向契約書や本人同意書に「情報共有に関する明示的同意」がなければ、個人情報保護法違反リスクが生じ得ます。
(4)契約主体の不一致による福利厚生の統一運用の困難化
出向者に対し親会社の福利厚生(社宅運用基準)を適用すると規定していても、貸主が子会社になると、
→ 親会社の基準(広さ、賃料限度額等)との齟齬が発生しやすくなる。
結果として、福利厚生制度の一貫性が損なわれ、将来的にトラブルの火種になり得ます。
3.提案されたスキームのリスクまとめ
リスクカテゴリ→内容
社会保険料の算定→親会社が「現物給与の提供者」とみなされず、標準報酬月額に正しく算入されない可能性。
給与控除の根拠→子会社契約では、親会社が給与から控除する法的・契約的根拠が弱くなる。
個人情報の取扱→給与や社宅費の情報共有が、同意なく行われた場合、個人情報保護法上の問題。
福利厚生基準の不統一→親会社基準と子会社の契約実態がずれ、社員間の不公平やトラブルの可能性。
4.対処・対応策
(1)出向契約書・規定類の整備
出向契約書や出向規程に以下の条文を入れることを検討:
「社宅等の福利厚生は、親会社の運用基準に基づき親会社が提供する」
「子会社が物理的契約主体となる場合であっても、費用等は親会社の給与処理の一環として扱う」
(2)本人同意書の取得
社宅契約者が子会社になる場合は、以下について明確に同意を得ておく:
社宅費用の給与天引き
親子会社間の情報共有(社宅費用・控除額・住居情報等)
(3)実務的代替案(おすすめ)
名義は引き続き親会社とする。
費用負担や事務の煩雑さが問題であれば、
→ 費用は親会社が一括処理し、子会社から精算請求を受ける形で現状維持が最もリスクが少ない運用です。
5.結論
親会社に在籍する出向者の社宅契約について、子会社名義で契約することには複数の法的・実務的リスクが伴います。
したがって、
社宅契約は原則、親会社名義で継続し、出向先での実務負担を軽減するのであれば、費用の精算や一部事務を子会社が担う形が望ましいです。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/06/09 10:21 ID:QA-0153680
相談者より
詳細にご教示くださり、誠にありがとうございます。今の形式が一番リスクが無く、望ましい形であることを再認識いたしました。
親会社名の契約を引き続き行うよう、話し合います。
投稿日:2025/06/09 13:06 ID:QA-0153699大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
・まずは、出向者の社宅を子会社の名義で不動産会社と契約し、支払うよう提案があったということですが、
子会社といっても別法人ですので、会社として、出向者の社宅を持つのかどうかは、経営判断でもありますので、今後のことも含め、検討・確認してください。
・また、親会社の社宅であれば、例えばマンションごと契約しているケースも
少なくありませんが、子会社名義の契約は、可能なのでしょうか?
親会社が具体的にどのようしろといっているのか、又、その理由もよく確認してください。
・本人負担分は、どちらの名義でも発生しますので、どちらが、
給与計算しても本人負担分を控除することは問題ありません。
・出向元・先間の契約の話ですので、お互い対等の立場で、疑問点があれば、
ざっくばらんに確認してください。親会社の目的にもよりますが、
子会社にリスクを被せるようなことはしないでしょう。
投稿日:2025/06/09 11:44 ID:QA-0153688
相談者より
ご回答いただきありがとうございます。別法人なので、出向者の社宅を持つかどうかは経営判断とのこと、承知いたしました。
子会社では、マンションごとの社宅契約は行っておりません。
親会社の提案の意図を確認して話し合いいたします。
貴重なご意見ありがとうございます。
投稿日:2025/06/09 15:01 ID:QA-0153713大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
基本的に人事は貴社社員への対応となり、貴社社員かどうかの判断は在籍の有無です。転籍であればもう貴社社員ではありませんので、貴社が他社社員に何らかの補助をしたりすれば税務上も対応が必要になるでしょう。
対応できるのは雇用者だけですので、それは親会社が独占的に対応すべきこととなります。また転籍=退職なので、個人情報についても籍が移れば取り扱いはできなくなります。
投稿日:2025/06/09 12:03 ID:QA-0153693
相談者より
ご回答いただきありがとうございます。
税務上の対応も必要とのこと、承知いたしました。
雇用者は親会社ですので、子会社での対応も慎重にいたします。
ありがとうございます。
投稿日:2025/06/09 15:04 ID:QA-0153715大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
以下の点がポイントになるかと存じます。
>この度、出向者の社宅を子会社の名義で不動産会社と契約し、
>支払うよう提案されました。
上記ですが、経緯・理由はしっかりと確認なさってください。
また、お金の動きなど手続き面についても、しっかりと確認なさってください。
ご危惧なさっている点については、既に親会社としては回答を持っているように
思えます。一度、細かい点まで会話なさってみてください。
その上で、賃貸契約にまつわるお金の流れについて、疑問や課題があれば、
そちらについては税務の専門家である、税理士にご確認いただくことを
お勧めいたします。
少なからず、給与における本人からの社宅費控除につきましては生じますが、
控除における手続きプロセスにつきましては、出向先・出向元できちんと
取り決めをいただければ、労働法令に抵触することはございません。
投稿日:2025/06/09 13:39 ID:QA-0153707
相談者より
ご回答いただきありがとうございます。親会社との話し合いをし、慎重に進めてまいります。必要に応じて、税理士にご相談いたします。ご意見いただきありがとうございます。
投稿日:2025/06/09 15:07 ID:QA-0153716大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
問題が解決していない方はこちら
-
転籍出向者の出向について 弊社の子会社に転籍出向させている... [2006/03/01]
-
出向に関する注意事項 出向契約をする際、通常、出向元の... [2011/07/28]
-
出向者が一定期間 出向元で働かいていたときの労災は? 出向元から、出向者を一定期間 出... [2020/03/28]
-
出向通知の取得について 出向において、出向通知や同意書を... [2022/10/13]
-
子会社へ出向させた社員 親会社の本社(出向元)から子会社... [2006/02/13]
-
出向料について 在籍出向での契約を行った場合の出... [2010/03/31]
-
出向契約期間中に一時的に出向元で就業させる場合 出向者を出向契約期間中に一時的(... [2022/08/26]
-
二重出向の可否について 二重出向(再出向)の可否について... [2018/12/13]
-
出向者の賞与について 出向元会社と出向先会社の間に締結... [2010/02/05]
-
出向者をその出向元から請け負った業務に就かせる 質問させて頂きます。以下のような... [2013/03/28]
お気軽にご利用ください。
社労士などの専門家がお答えします。
関連する書式・テンプレート
出向同意書(サンプル2)
出向同意書の書式文例です。
出向命令書と出向同意書はセットで用意しましょう。また、出向命令が権利濫用にあたらないかの注意も必要です。
在籍出向・転籍出向など形態に合わせて適宜編集した上でご利用ください。
出向同意書(サンプル1)
出向同意書の書式文例です。
出向命令書と出向同意書はセットで用意しましょう。また、出向命令が権利濫用にあたらないかの注意も必要です。
社宅使用誓約書
社宅使用誓約書のサンプルです。ダウンロードして自由に編集することができます。
出向通知書・出向命令書(サンプル1)
出向通知書・命令書の書式文例です。
出向命令書と出向同意書はセットで用意しましょう。また、「労働契約法14条」の定めに則って、出向命令が権利濫用にあたらないかの注意も必要です。