顧客を感動させるサービスは従業員の「内発的動機」から生まれる
マニュアルのないスターバックスは、
なぜエンゲージメントを高められるのか(後編)[前編を読む]
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 人事本部 人事部 部長
久保田 美紀さん
社員だけでなく、アルバイトリーダーも育成担当
パートナーの育成にために、店舗での実際の業務にあたる際にも、コーチングやフィードバックを行っているそうですね。
たとえば、パートナーの行動がお客さまにとって最善とは思えなかった場合、その行動を「悪い」と言ったり、叱ったりはしません。「お客さまはどう思ったか」「どうすればもっと良かったか」を自分自身で考えられるよう、問いかけを行います。コーチングとフィードバックを繰り返し、一つひとつの行動の意味を理解していくことで、常にどうすればお客さまに喜んでもらえるかを考えられるようになります。こうしたコーチングやフィードバックは、ストアマネジャーだけでなく、アルバイトリーダーやパートナー同士でも行っています。
互いにフィードバックし合うための仕組みづくりも行っています。バリューに沿った素晴らしい行動をしたパートナーは、「Green Apron Card」と呼ばれる5種類のカードにメッセージを書いて手渡されるのです。新人は、このカードをもらうことで、自分のとった行動が賞賛されるものであったと理解でき、バリューを体現するにはどのような行動をとればいいのかがわかります。また、カードをもらう喜びによって、店舗への帰属意識も強くなります。
一般的に飲食業態ではギリギリの人材配置を行っているところも多く、店舗スタッフとじっくり向き合ったり、互いにフィードバックしたりする時間を確保することが難しいことも多いようです。スターバックスではどのような体制でこれを可能にしているのでしょうか。
1店舗あたりの社員数は2名ほど。多くの場合、シフトは早番・中番・遅番の三つに分けられるので、コーチングやフィードバックを社員だけで行うことはできません。手の届かない範囲は、時間帯責任者を務めるアルバイトリーダーに携わってもらっています。その上で、4ヵ月に一度の人事考課をストアマネジャーとアシスタントストアマネジャーで担当するという体制です。
内発的動機を引き出すには、ツールやプログラムも重要ですが、最終的にはやはり「人と人との対話」が鍵になります。こうした「対話」によるマネジメントには、スターバックスでも今後、さらに力を入れていきたいと考えています。