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『労政時報』調査記事
高年齢者雇用の最新実態
――改正高齢法への対応と継続雇用制度の実態を調査

団塊世代の大量退職が始まる2007年を目前にして、「改正高年齢者雇用安定法」が2006年4月から施行されました。改正法は、定年後65歳までの安定した雇用確保を企業に義務付けています。2006年5月から6月にかけて『労政時報』が行った「改正高齢法への対応と高年齢者処遇の実態調査」から、各企業の改正法への対応状況や雇用確保の中核をなす継続雇用制度の実態を探りました。

改正高齢法への対応は再雇用制度が中心

改正高年齢者雇用安定法(以下、「改正高齢法」という)は、2006年4月から、事業主に、(1)定年の引き上げ、(2)定年の定めの廃止または(3)継続雇用制度の導入により、年金支給開始年齢までの間、安定した雇用の確保を義務付けています。そこで改正高齢法が施行された2006年4月以降の各社の取り組み状況について取り上げます。

図表1をご覧下さい。雇用確保措置の具体的対応策については、「再雇用制度で対応」が実に94.6%と圧倒的多数を占め、同じ継続雇用制度である「勤務延長制度で対応」はわずか2.5%にとどまっています。

勤務延長制度が定年前の賃金や労働時間、仕事内容等の労働条件が原則として継続されるのに対し、再雇用制度は、一度退職し、定年前の雇用条件がいったんリセットされ、新たな雇用契約で処遇を抑えられる点から、このような結果になったと思われます。

また、定年年齢の引き上げを実施した企業は1.7%とわずか4社。このうち、2006年4月時点で雇用確保の上限年齢である「65歳」まで延長した企業は1社のみ、残り3社は「62歳」と年金の受給年齢と合わせて段階的に年齢を引き上げていくものでした。なお、「定年制の廃止」については今回の調査企業からはまったく出てきませんでした。

図表1
改正高年齢者雇用安定法への具体的対応策(複数回答)
-(社), % -
区 分 全 産 業
規模計 1,000人
以上
300~
999人
300人
未満
合 計 (242)
100.0
( 92)
100.0
( 95)
100.0
( 55)
100.0
定年年齢の引き上げ
定年の廃止
再雇用制度で対応
勤務延長制度で対応
未定・検討中
その他
1.7

94.6
2.5
2.5
0.4
2.2

96.7
2.2
1.1

2.1

97.9
2.1




85.5
3.6
9.1
1.8


継続雇用の対象者・希望者は企業規模によって格差あり

次に再雇用・勤務延長制度の対象者についてですが、改正高齢法では、原則として希望者全員を制度の対象者とすることを求めています。しかし、同法の9条2項では現実的な対応策として、過半数組合、それがない場合は労働者の過半数代表者と、継続雇用の対象者に関する基準を定めて、「労使協定」を結ぶことにより、現実には対象者を絞ることができる、としています。

以上を踏まえて、制度の対象者を調べたところ、「原則として希望者全員」とする割合はわずか14.5%。ただし、規模別にみると、中小企業ほど「原則として希望者全員」とする割合が多く、300人未満では25.5%なのに対し、1000人以上では9.2%と1割にも満たない状況でした。

また、調査時点での継続雇用を希望する社員の有無については、「いる」が55.6%、「いない」が44.4%と10ポイントほど、「いる」企業の方が上回っています。これを規模別でみてみると、大企業ほど継続雇用を希望する社員が多く、1000人以上では81.3%と8割を超えるのに対し、300人未満では24.4%と、規模間の格差が顕著となりました。


定年時年収に占める継続雇用時の年収の割合は6割が主流

図表2をご覧下さい。継続雇用者の仕事内容については、定年時と「変わらない」が一般従業員で49.1%と最も多く、次いで「同じ仕事だが負荷は下がる」が40.2%、「別の仕事に移る」が23.4%と続きます。一方、管理職は一般従業員と異なり、「同じ仕事だが負荷が下がる」が64.9%と最も多くなっています。これは役職から外れるケースが8割を超えているためで、部下のマネジメントという大きな役割・職務がなくなった点が要因となっています。

図表2
フルタイム勤務者の仕事内容(複数回答)

図表(2)フルタイム勤務者の仕事内容(複数回答)

最後に、継続雇用者に企業が支払う給与についてですが、図表3をご覧下さい。ここでは定年時と同一職務でフルタイム勤務の場合の、企業が継続雇用者に支払う平均年収額と定年時年収に占める割合についてまとめています。これによると、公的給付金(年金)を含む場合の平均年収額は、定年前の役位が一般従業員と管理職とで24万円の差であるのに対し、公的給付金を含まない場合は80万円ほどの格差が付いているのが分かります。そして、上記の割合について回答した企業の平均をみると、公的給付金の有無を問わず、一般従業員、管理職ともいずれも6割程度となっています。

図表3
月例賃金、賞与[公的給付金(年金)]をトータルした平均年収額
および定年時年収に占める割合


定年時と同一職務でフルタイム勤務
区 分 平均年収額(万円) 定年時年収に
占める割合(平均) (%)
一般従業員 管理職 一般従業員 管理職
社数 年収 社数 年収 社数 割合 社数 割合
公的給付金を含む 15 363.9 9 387.9 24 60.4 18 61.9
同含まない 49 307.8 37 378.5 56 59.3 48 61.1


注)
ここでは、労務行政研究所が2006年5月10日から6月29日にかけて、全国の上場企業3791社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上)349社の合計4140社を対象として(回答があったのは242社)行った調査をもとに、「日本の人事部」編集部が一部をピックアップし記事を作成しました。調査は「高年齢者雇用の最新実態」と題されたもので、詳細は『労政時報 第3687号』(2006年10月13日発行)に掲載されています。

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