中高年に厳しい「年齢ミスマッチ」のケース
求人票では年齢制限はないのに…… 若手を求める企業の本音
採用したい企業と就職・転職したい人材がいるのに、さまざまな理由でうまくいかないことがある。特にミスマッチが起こりやすいのは、転職の際の「スキル」と「年齢」の問題だ。企業側では高いスキルを持った人材を求めながらも、一方で給料が安い若手を採用したがる傾向にある。募集条件で年齢制限をかけられなくなった現在も、その傾向は変わらないようだ。
実力十分の人材を紹介できない
「この年齢だと、ぜいたくはいえないと思っています。募集条件に合う企業にはすべて応募してください」
そう言いながら軽く頭を下げるSさん。この日が最初の転職相談だった。「わかりました。さっそく推薦の手続きを進めます」と答えながらも、厳しいだろうなと私は考えていた。
Sさんの実力が不足しているわけではない。豊富な経験は間違いなく即戦力といえるだろう。Sさんは、現在勤務している企業が事業からの撤退を決めたため、まったく畑違いの部門に異動することになったが、それよりもこれまでの経験を生かしていきたいと考えて、今回、転職に踏み切ったのだ。スキルもモチベーションも十分だといえる。問題はSさんがまもなく50歳を迎えることだ。
「他の紹介会社でも、紹介される求人はあまり多くありません。この年齢だとやはり難しいのでしょうか」
参考に渡した何枚かの求人票に目を通しながら、Sさんが聞いてきた。
「案件はどうしても少なくなりますね。ただ、Sさんのご経験は間違いなく即戦力ですから、タイミングさえ合えばすぐに決まることも十分あると思っています。過去にそういう例もいくつか見ています。多少の長期戦は覚悟する必要がありますが……」
とはいえ、管理職をいきなり外部から中途採用するというケースは少ない。
「管理職が必要になったとしても、多くの場合、今いる社員の中から適任の人材を昇格させます。そして空席になった一般スタッフを募集する場合がほとんどです。その方が、社内事情がわかった人が管理職になれますし、一般スタッフはたいてい若手なので給与も安くてすみますから」
私が説明すると、Sさんも苦笑いしながらうなずいた。
「それは今の会社でも同じですね。とてもよくわかります」
一方、管理職でも募集するケースがあるのは外資系企業だ。ただし、当然のようにビジネスレベルの英語力が必須になってくる。
「英語は勉強していますが、実務で使ったことはありません。できれば日本企業の紹介をお願いします」
しかし、その後、打診してみたいくつかの企業からは、書類選考の段階で不採用の返事が返ってきただけだった。