転職希望者へどう答える? ブラック企業かどうかの判断の難しさ
転職希望者なら絶対気になるポイント 人材紹介を行う際の悩ましい現状
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転職希望者の信頼を失うわけにはいかない
「この会社は、ブラック企業ではないんですか?」
転職相談では本音を言って欲しいと相談者に伝えている。そのため、最近では単刀直入な質問を受ける機会も増えてきた。
それに対して、「ブラック企業かもしれませんね」とはまず言えない。本当にブラック企業なら、なぜそんな会社を推薦するのかという話になるし、そもそもブラック企業の定義が明確ではないからだ。たいていの場合は、「風評どまり」である。
成長企業は採用に熱心で求人ポジションも多く、人事も協力的なので、人材紹介会社にとっては優良な取引先だ。前述のように、紹介した人材が入社して活躍している事例もある。そうなると、意識的に「紹介しない」という判断ができるのは、明らかに反社会的勢力が経営に関わっていたり、違法行為で事件になっていたりするようなケースだろう。
「このところご紹介ありませんが、どのような状況でしょうか?」
採用に熱心な急成長企業からは、「もっと候補者を紹介して欲しい」とプッシュを受けることが少なくない。電話やメールだけでなく、場合によっては直接呼び出されて説明を求められるケースもあるほどだ。とはいっても、転職希望者の意思が第一なので、当たり障りのない回答しかできない。
「誠に申し訳ないのですが、今のところ御社の条件に合う求職者が非常に少ないのが現状でして……」
転職希望者には、とにかく一度情報を見てもらい、風評を気にしているようなら強く薦めることはしないというスタンスをとるしかない。推薦した企業に入社した人が、後になって「あの会社はブラック企業だった」などと発言すれば、「ブラック企業に協力的な人材紹介会社」と見られてしまう怖れもある。いったん信頼を失えば、転職希望者はもう二度と転職相談には来てくれない――企業を紹介するにも、細かい配慮が必要なのだ。
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