厳選採用時代の中途採用に必要な「企業の意識」とは
厳選採用のもう一つの顔 企業が「厳選」されることもある
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一部の優秀人材に企業の内定が集中
その数日後、M社の採用マネジャーから急な連絡が入ってきた。
「この間紹介していただいた候補者は、まだ活動中ですか? 先日は内容も見ないでお断りしてしまったのですが、もし可能なら再度送っていただいてもよろしいでしょうか」
状況を聞いてみると、非常にポテンシャルの高そうな若手人材を厳選して内定を出したところ、その半分以上に辞退されてしまったのだという。どうやら複数の企業から内定が出たため、他社に流れてしまったらしい。
「1次面接から内定までに時間がかかりすぎたようです。その間に他社の選考が進んでしまったんですね。数日の差だったようですが…」
若手人材は、実務の経験が少ないため、人柄や意欲など、いわゆるポテンシャルでの選考が中心になる。つまり、どの業界も似たような選考基準で人材を選ぶため、どうしても一部の「優秀そうな人材」に内定が集中する傾向がある。このあたりは、新卒の採用市場と非常に似ている。
「厳選採用を意識しすぎました。私たちから見て優秀な人材は、他社にとっても優秀な人材なんですよね」
私は、「厳選採用時代には、企業も厳選される側面があります」という言葉を飲み込んだ。採用計画が遅れて落ち込んでいるマネジャーを、これ以上がっかりさせることに意味はない。私はなるべく明るく返事をした。
「承知しました。先日の方には、御社の募集枠が広がったということで、再度応募する気があるか確認してみます」
厳選採用を突き詰めれば、「良い人材がいなければ採用しない」ということになるのだろう。しかし、各部門から「何人ほしい」というオーダーを受けて動いている場合は、必要最低限の人数を確保しなくてはならない。
人材の質と量の問題。質にこだわるのが近年のトレンドではあるが、それを確保するためには、まず企業自体が“人材に選ばれる存在”でなければならないといえるだろう。
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