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人材採用“ウラ”“オモテ” 
企業・求職者・人材紹介会社の「転職」三角関係

応募先企業を人材紹介会社に明かしたくない求職者
派遣社員として働くメリットが大きい仕事

取り越し苦労もあるようですが…

応募先企業を言いたくないさまざまな理由

転職活動で応募するのは一社だけという人は少数派。ほとんどの人が、複数の企業の面接を受けて(できれば内定までもらって)、比較検討した上で転職先を決めたいと思っている。しかし、人材紹介会社のキャリアカウンセラーには応募している企業名は明かしたくない…という人は、意外といる。

不採用になると恥ずかしい?

「転職活動の進み具合はいかがですか? よろしければ応募先企業などもあわせて教えていただければ、今後ご紹介していく上での参考になります…」

求職者との初回の相談では、まず転職活動の状況やその内容などを聞くのが定番だ。とりわけ応募先企業は、その人がどんな会社に興味を持っているのか、どういう方向性で転職活動を進めているのか…などが具体的に分かる、とても貴重な情報である。もちろん、今後紹介する企業が重複しないようにするためでもある。

「…進捗状況はこんな感じです。ただ…応募先企業の社名は控えさせてください」

内定した企業の有無や書類選考中の企業が何社あるか、といった活動の進み具合については教えてくれても、具体的な社名については言いたくないという人がけっこういる。

もうすでに転職活動を終えて、新しい会社で活躍中のFさんに会う機会があり、かつて求職者だった当時を思い出してもらい、なぜ応募先企業名を言いたくないのか教えてもらった。

「私の場合は、単純に『そこまで教えなくても紹介してくれるだろう』と軽く考えていましたね。プライバシーだからあまり詳しくは教えたくないという程度のことでしょうか」

初対面のキャリアカウンセラーにすべて明かしてしまうのは、さすがに抵抗があったということらしい。

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「転職が初めてだったので、応募先企業を言って『不採用になったら恥ずかしい』という気持ちもありましたね。けっこう背伸びした会社にも応募していたんですよ。ダメもとでも応募したい場合ってあるじゃないですか。でも、それを言ってしまうと、『この身の程知らずが…』と思われるんじゃないかと…。キャリアカウンセラーの皆さんは転職相談のプロですから、あまり夢を見ていると思われたくなかったんですよね」

求職者は、とてもデリケートなのだ。

気になる人材紹介会社の影響力

「あと、同じ時期に転職活動を行っていた友人はこんなことも言っていましたね」

Fさんの話を要約すると…人材紹介会社は多くの企業の人事部と直接接触している。だから、特定の候補者の合否についても何らかの影響力を持っている可能性がある。だから言わないほうが安心できる…。

「常識的に考えればそんなことはないと思うんですけど、転職活動中はいろいろと神経質になっていますので、その話を聞いた時には、ひょっとしたらそういうこともあるのかな…と考えてしまいましたね」

たしかに、企業トップなどから採用コンサルタントとして信頼を得ている人材紹介会社もあることはある。しかし、特定の応募者の合否を自社で決めずに人材紹介会社に相談するという企業はあまりないし、逆にあるとしても「そんな頼りない企業はやめておいて正解」なのである。

また、人材紹介会社も特定の求職者の合否を不正に左右するような動きをしたことが明るみに出れば、社会的信用を失う。その人材紹介会社を利用する企業も求職者も激減することは間違いないから、あえてそんなリスクを冒すことは考えられない。

「たしかに疑心暗鬼になっている部分が大きいとは思いますね…」

Fさんはこう言ってくれたが、人材紹介会社は一層信頼を得るための努力が必要なのだな、と改めて考えさせられた。もちろん、求職者が応募先企業名を教えてくれなかった場合も、相談は親身に行なっている。

場合によっては大きなキャリアアップに…

あえて「派遣」がお勧めの仕事とは?

「格差社会」を象徴するものとして、非正規雇用、派遣社員…などのイメージが定着しつつある。現在はネガティブな印象が強くなっているのだが、実は派遣社員として実務経験を積むことが有利になる仕事もある。しかも、正社員として働くのと年収も変わらない。勤務時間や勤務地などの制約がある人以外は希望者が少ない派遣社員だが、利用の仕方次第ではキャリアアップの一つのステップになりそうである。

看護師から臨床開発関連を希望

「正社員よりも派遣社員のほうがキャリアが身につく…なんてことがあるんでしょうか」

Kさんは、ある人材紹介会社で「まずは派遣社員として経験を積んでみては…」と勧められたそうだ。Kさんの前職は看護師。今後は新薬の開発など臨床開発関連の仕事で働きたい…という希望で相談を受けていた。

「正直、人材派遣にはあまり良いイメージが持てないのですが…」

Kさんの不安もよく分かる。たしかに昨今、派遣社員など非正規雇用の労働形態は格差社会の根源のように言われている。もともとは、残業ができないとか転勤したくない…といった制約がありながらも働きたい人のためのワークスタイルとして利用されてきたのだが、近年は企業による人件費削減のための手法という面ばかりに焦点が当てられるようになってしまった。

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「正社員希望の方があえて派遣社員になる必要は、一般的にはないと思いますよ。ただ、一部例外もあるんです。その例外の一つが新薬の臨床開発関連の仕事なんです」

臨床開発関連の求人では、看護師経験者などが多く採用されている。その内訳は大きく分けて、(1)製薬会社(2)CRO(製薬会社から臨床試験を請け負う専門企業)だ。

「製薬会社の正社員の求人では、ほとんど経験者しか採用されません。したがって看護師から製薬会社に転職できるケースはきわめてまれなんです。そこで、ほとんどの方はまずCROから臨床開発のキャリアをスタートさせます。これは正社員での採用です」

しかし、実はもう一つ違うパターンがあり、それが「製薬会社が利用する派遣社員」なのである。

「製薬会社でも経験者の採用のみだと人員が不足する場合があります。それを派遣社員で補っているんです」

今後は製薬会社の意向がカギ

「でも、仕事内容が同じならCROの正社員として働くほうが安定しているんじゃないでしょうか」

Kさんの疑問ももっともである。しかし、臨床開発関連が例外の一つだと言ったのは、まさにこの部分なのである。

「CROの場合は、プロジェクトごとに仕事を請け負う形になります。それに対して、製薬会社での業務は、一つの新薬の開発に一貫して関わることができるんです。そして、それは派遣社員も同じです。ですから、比較的ゆとりを持って働けますし、新薬が開発されていく全体像をつかみながら業務を経験していくことができるんです」

しかも、製薬会社では業務を一貫して担当するため長期契約が多く、また対外的には製薬会社の社員と同じ名刺を持って仕事をするため、製薬会社主導でしっかりした教育も行なわれるという。自然に「自分たちでこの新薬を開発した」という意識を持つようになり、それは臨床開発の経験としては非常に意味のあるものになるのだ。仮に数年間、この業務を経験してから転職すれば、CROなどではリーダークラスで採用されるという。

「しかも、年収もCROの正社員として勤務するのと変わらない、場合によってそれ以上になる場合もあるそうですよ。したがって採用基準も決して低くはありません。CROに合格するのと同レベル以上のスキルは必要になると聞いています」

そうお伝えしても、Kさんは何となく腑に落ちていない表情である。

「メリットがあるのは分かるんですけど、やはり派遣社員というのは気になってしまいます…」

もちろん最終的に判断するのは求職者である。しかし、派遣社員を最初から拒否するのではなく、場合によっては有効に活用してもいいのではないだろうか。もちろん、派遣社員というワークスタイルが本人の心理的な負担になっては意味がない。また、昨今派遣に対する見方が変化しつつあることから、今後も製薬会社が派遣社員を採用し続けるかどうかという問題もあるだろう。

「一度、実際に働いている方の話をお聞きになってみてはどうでしょう。私からも同様の企業はご紹介できますよ」

それを聞いてKさんの表情が明るくなった。



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