「人」が介在することで成功するマッチング
まず会ってもらうことの重要性 普通の会社と普通の人材を結びつける
- 1
- 2
募集条件にあわないのは承知の上
「Bさんにぜひご紹介したい企業があるんですよ。S社での経理の仕事です」
S社は派手さこそないが、いい会社だ。BさんならS社の社風にあうのではないかと考えて勧めたのだが、Bさんはここでも慎重だった。
「良さそうな会社だとは思いますが、経理ですか。他の紹介会社では30代なら経理経験10年程度は求められると聞いていますが、大丈夫ですかね」
「S社では、20代の採用を考えているようです。しかし、Bさんのようにいろいろな部署を経験している方なら、S社のような会社に合うと思いますよ。書類選考がOKだったら、一度訪ねてみませんか?」
Bさんにはなんとか了解をもらうことができた。次はS社を説得する番だ。まともに紹介しても、おそらく年齢で書類選考を通らないだろう。そこで、「いい人材なので、まず人事のT係長に予備面接してもらえないか」ともちかけた。もちろん、その席には私も同席する。最初はT係長もつれなかった。
「いや、絶対無理ですよ。経理部長が若手が欲しいといってますから。部内の年齢バランスもありますしね」
「お会いになってみて無理だと判断されたら、そこで諦めます。30分だけお時間をいただけませんか」
粘った甲斐あり、ともかく「会うだけは会う」ということに。その背景にはやはり、S社には候補者がそれほど集まっていないという事情があったようだ。また今後、営業職の募集でも手助けしてもらえるなら、という気持ちもあったのかもしれない。
面接当日。雰囲気は和やかだったが、しばらく話しているうちに、T係長が「ちょっと待ってもらえますか」と言いだした。
「経理部長を呼んできます。せっかく来てもらったので、もし時間さえ問題なければ、少し話をしてもらった方がいいのではないかと思いまして」 「もちろんです。ぜひお願いします」
私とBさんに異存はない。経理部長を交えての面接は1時間以上に及んだ。面接終了後、ビルの外に出るとBさんが小さい声で言った。
「最初は建設資材商社と聞いて、経験もないし、どうしようかなと思ったんですが、意外と今の会社に近い雰囲気で安心しました」
正直いってIT系企業などはかなり雰囲気が違いますよね、とBさんは続けた。緊張が解けて表情がリラックスしている。
「ああいう会社もいいかもしれないですね」
この面接結果がどうなるかはまだわからない。しかし、「普通の会社」と「普通の人材」との相性は決して悪くない、という手応えを私は感じていた。スペックだけでは決まらないのが人材紹介の奥深いところなのである。
- 1
- 2