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従業員に対し「能力不足」による降格を実施する場合の
法的留意点と踏むべき手順

弁護士

藤井 康広(ベーカー&マッケンジー法律事務所(外国法共同事業))

3.人事異動としての降格―降格の意義

人事異動としての降格と言っても、実は、その内容は様々です。一般に「降格」と言う場合には、役職ないし職位を引き下げること(降職)を言います。例えば、部長職から課長職への降格などがそれです。しかし、伝統的な日本の制度である職能資格制度における資格の引下げ(狭義の降格)、賃金規程上の賃金等級ないし号数(あるいは号俸)の引下げ(降級)、あるいは、比較的外資系企業によく見られる職務等級制度における等級の引下げ(降級)などにも、「降格」という言葉が使われます。

ここで、職能資格制度と職務等級制度(ないし職務給制度)について少し説明をしておきます。

「職能資格制度」とは、技能・経験などに基づく職務遂行能力に応じて割り当てられる資格(職能資格)に基づいて賃金を定める制度です。資格の呼称としては、一般職、上級職、参事、参与、理事などの言葉が使用されたり、あるいは、1等級、2等級などの数字が使用されたり、さらには、これらが併用されたりと様々です。基本的には、年功に応じて技能と経験が蓄積することから、年功に従って階段方式に職能資格が上昇し、それに応じて賃金が増える制度です。なお、資格と職務あるいは職位とは必ずしも明確に関連付けられているとは限りません。例えば、職位と資格とが明確に関連付けられていない場合は、部長から課長に降格(降職)する場合も、当然に参与から上級職へ降格(降級)するものではありません。また、人事評価の結果を踏まえて職能資格を決定する制度もあります(能力給制度)。

「職能資格制度」とは、技能・経験などに基づく職務遂行能力に応じて割り当てられる資格(職能資格)に基づいて賃金を定める制度

他方、職務等級制度ないし職務給制度は、職務の難易度、責任度合い、会社への貢献度などに応じて職務ごとに賃金を決める制度です。職務の難易度や責任の度合いに応じて広く職務範囲(職群ないし職務バンド)を定めてそれぞれに等級を割り振る制度や、職務役割を階層化して、それぞれの階層(職務グレード)の中で、さらに職務の量や会社への貢献度などの職務価値をもとに等級を設ける制度などがあります。賃金は、職務ごとに細かく決められていることもありますが、バンド、グレードあるいは等級別に賃金幅(賃金レンジ)が設けられ、その範囲内で使用者により具体的な賃金額が決められることもあります。職務等級制度の中には、業績評価の結果を踏まえた資格ないし等級との併用型もみられます。この場合、各バンドないしグレードの中で、能力に応じた資格ないし等級でさらにランク分けされ、それに応じて賃金(ないし賃金幅)が定められています。

なお、職能資格制度の場合も、前述の通り、資格の呼称として、1等級、2等級などの等級が使用されることがありますし、また、賃金規程において賃金(あるいは賃金幅)を等級という名称で区分(賃金等級)し、資格と賃金等級とを関連付けて、連動させている制度もありますので、「等級」という言葉のみで、職務等級制度と決めつけることのないように注意しなければなりません。

また、「降級」という言葉が使われることがありますが、職能資格や職務等級とは関係なく、単に、賃金規程における賃金区分(あるいは賃金幅の区分)としての等級(賃金等級)の引下げ(賃金減額ないし減給)に使用されることも多くあります。通常、職務等級制度の場合は、職務と賃金等級が連動していますので、降格は、役職ないし職位の引下げに伴う賃金等級の引下げ全体を意味することが多いでしょう。他方、職能資格制度の場合は、職能資格と役職ないし職務あるいは、職能資格と賃金等級が必ずしも連動しているわけではありませんので、役職ないし職位の引下げを伴うことなく賃金等級だけが引き下げられることもあります(能力給制度における業績評価に基づく資格の引下げとそれに伴う賃金等級の引下げなど)。この場合、厳密な意味においては、人事異動としての降格には該当しませんので、賃金の一方的な引下げの可否として議論することになります。もっとも、能力給制度における業績評価に基づく降級は、人事権の行使の範疇で議論されますが、本記事では省略します。

なお、本記事において降格とは、原則として、「役職ないし職位の引下げ(降職)」を意味するものとします。

4. 人事異動としての降格―降格の有効性

(1)人事権の範囲

人事異動の一環として実施される降格、すなわち、人事権の行使として行われる降格は、懲戒権の行使としての降格と異なり、就業規則や個別の雇用契約書の根拠なく行うことができるとされています(前述アメリカン・スクール事件ほか)。すなわち、人事権は、労働契約上、使用者の権限として当然に予定されているとされ(東京都自動車整備振興会事件・東京高判H21.11.4労判996号13頁ほか)、かつ、降格を含む人事権の行使は、「労働者が企業組織の中でどのように活用・統制していくかという使用者に委ねられた経営上の裁量判断に属する事柄であり、人事権の行使は、これが社会通念上著しく妥当を欠き、権利の濫用に当たると認められる場合でない限り、違法とはならないものと解すべきである」(バンクオブアメリカイリノイ事件・東京地判H7.12.4 労判685号17頁)とされるところです。

しかし、人事権も、使用者と労働者との間で、人事権の範囲(限界)を画する内容の合意(当事者の合理的意思の合致)が認められる場合には、その範囲の枠内でのみ行使することができることになります。例えば、使用者と労働者との間で職種限定の合意があるような場合は、使用者の有する人事権には、他の職種への配転(降格を含む)を命ずる人事権は含まれません(東京海上日動火災保険事件・東京地判H19.3.26労判941号33頁)。職種限定の中には、営業職や技術職というような職種の限定のほか、役職や職位を含む地位の限定が含まれる場合があります。したがって、降格の実施に際しては、まず、採用の経緯や雇用契約書、就業規則などを確認したうえで、人事権に制限があるかどうかを判断することになります。そして、もし、人事権の範囲を超える降格を実施するのであれば、労働者の同意を得て実施することになります。

(2)人事権の裁量

人事権の範囲内で降格を実施する場合、前述の通り、降格を含む人事権の行使は、使用者に委ねられた経営上の裁量判断に属する事柄ですので、使用者の広範な裁量をもって実施することができることになります。この使用者の裁量は、降格を実施するか否かの判断と、どの程度の降格を実施するかの判断の両側面で尊重されます。

前者の例として、エクイタブル生命保険事件(東京地決H2.4.17労判565号79頁)では、業績評価に基づく管理職から一般社員への降格について、業績評価の評価項目が著しく不合理であると認められる事情がない以上は評価が不公正なものであるとは言えないとして、降格が有効と判断されています。 他方、後者の例として、星電社事件(神戸地判H3.3.14労判584号61頁)では、飲酒運転等の行状を理由とする部長職から一般職への降格について、「降格処分に処すること自体が権利の濫用に当たらないものと判断される以上、同処分の内容は被告会社の経営方針ないし経営内容の判断に従ってなされるものであるから、これは明らかにその内容においても不当なものであると見られないものであるときは、被告会社の判断を尊重すべき性質のものであると解される」として、降格が有効と判断されています。

降格有効の判断

しかし、人事権の行使も、権利濫用と認められる場合には無効となり、場合によっては不法行為と評価されることになります(労契法3条5項)。一般に、配転については、業務上の必要性が存在し、かつ、その命令が他の不当な動機、目的をもってなされたとか、または労働者に対して通常受忍すべき程度を著しく超える不利益を負わせることになるなどの特段の事情がない限り、権利濫用とはならないとされるところですが(東亜ペイント事件・最二小判 S61.7.14労判477号6頁、日産自動車村山工場事件・東京高判S62.12.24労判512号66頁)、降格についても、「労働者の人格権を侵害する等の違法・不当な目的・態様をもってなされてはならないことはいうまでもなく、経営者に委ねられた右裁量判断を逸脱するものであるかどうかについては、使用者側における業務上・組織上の必要性の有無・程度、労働者がその職務・地位にふさわしい能力・適性を有するかどうか、労働者の受ける不利益の性質・程度等の諸点が考慮されるべきである」とされるところです(前述バンクオブアメリカイリノイ事件、なお、同旨の判決として前述東京都自動車整備振興会事件、大阪府板金工業組合事件・大阪地判H22.5.21労判1015号48頁ほか)。

したがって、人事異動としての降格を実施する場合は、使用者の裁量権が広く認められているとはいえ、降格の理由および目的が適切ないし合理的か否か、降格の理由および目的に応じた職位ないし職務への降格か否か、労働者の受ける不利益が相当か否かについて、慎重に検討する必要があります。

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この記事ジャンル 人事管理諸制度

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