転勤に関する諸取り扱いの実態――支度料、荷造運送費、別居手当など
労務行政研究所が2007年以降、2年ぶりに「国内転勤に関する実態調査」を行いました。転勤は、社員の生活や家計に及ぼす影響が大きいため、企業としてもきちんとその取り扱いを整備しておく必要があります。今回の調査では、支度料、荷造運送費、単身赴任者に対する別居手当といった、転勤時の金銭的援助をめぐる取り扱いについて調べています。
※『労政時報』は1930年に創刊。80年の歴史を重ねた人事・労務全般を網羅した専門情報誌です。ここでは、同誌記事の一部抜粋を掲載しています。
約2割が経費削減に取り組む――“転勤の減少”“支度料等の見直し”が半数程度に上る
今回の調査では、「転勤」を「転居を伴う人事異動」と定義し、「国内転勤」に限定して各社の取り扱いについて調べました。
厳しい経済情勢の中、経費削減に取り組む企業も少なくありません。そこで、最近2年間(おおむね2007年以降)に、国内転勤に関する経費の削減に取り組んだかどうか聞きました。
結果、19.2%と約2割が「取り組んだ」と回答。規模別では大きな差はありませんが、産業別では製造業(15.7%)に比べて非製造業(22.5%)のほうでその割合が高くなっています。
取り組み内容としては、「転居を伴う異動(転勤)を減少」が50.0%、「転勤に伴い支給する支度料等の見直し」が45.0%で半数程度に上ります(複数回答)。前者については300人以上規模では5割を超えていますが、300人未満では3割台にとどまっています。社員数の多い企業ほど、相対的に転勤の発生頻度も高くなるためとみられます。また、後者については“支度料の一部を削減”“引っ越し費用を削減”“居住形態により支度料を廃止”などがみられました。
「支度料」の支給基準「単身・複身別または家族数別」が圧倒的に多い
今回の調査では94.3%とほとんどの企業が転勤に伴って「支度料」を支給しています。
支度料の支給基準は(原則として赴任時のもの)、「単身・複身別または家族数別」が93.0%と圧倒的に多くなっています。「単身・複身別」とは、家族帯同赴任、単身赴任、独身者の赴任で区別して支度料を定めるケースを指します。「家族数別」とは、例えば“本人○円、帯同家族1人当たり○円”といった決め方を指します。内訳をみると、「単身・複身別」が67.0%と3社に2社を占め、「家族数別」が13.0%、これら「両方」が20.0%となっています。
以下、割合はかなり減るものの、「役職・資格別または職掌別」(36.7%)、「基本給、基本賃金などの賃金にリンク」(24.6%)、「距離別または地域別」(11.1%)と続きます(複数回答)。
上記より、転勤時に支給される「支度料」は、「単身・複身別または家族数別」をベースに、“役職・資格”“賃金”“距離・地域”等の基準を組み合わせて決められていることが分かります。
「荷造運送費」の支給内容「何らかの支給制限を設けている」が9割近い
今回の調査では、99.5%とほとんどの企業が荷造運送費、いわゆる“引っ越し料”を支給しています。なお、残りの0.5%(211社中1社)については、支度料の中に荷造運送費を含めているとのことでした。
荷造運送費の支給に当たっては、「何らかの支給制限を設けている」ところが88.9%と9割近くを占め主流となっています。規模別にみても、大きな違いはみられません。何も制限を設けないで実費を支給すると会社の負担が増大するため、何らかの支給制限を設けるケースが多いものといえるでしょう。
支給制限の内容としては、「事前に見積もりをとる」が65.9%で最も多く、次いで「運送費を支給しない項目を規定」が43.2%、梱包から荷解き・家具の配置までを業者に任せる「“引っ越しおまかせパック”的なサービスの利用を制限」が33.0%などとなっています (複数回答)。
なお、「“引っ越しおまかせパック”的なサービスの利用を制限」については、家族に未就学児や妊婦がいる場合は特別に利用を認める、とする企業もみられました。また、具体的内容ではなく「抽象的に“会社が定める範囲”と規定」しているところも21.1%と2割に上ります。
「別居手当」の支給基準「役職・資格別または職掌別」が約4割と多い
「役職・資格別または職掌別」に支給するところが41.1%で最も多く、特に区分を設けない「一律定額」が36.2%でこれに続きます。以下、割合は大きく下がりますが「距離別または地域別」14.6%、「基本給、基本賃金などの賃金にリンク」7.0%、「別居事由別、別居形態別」5.9%などとなっています(複数回答)。
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