労働関係・社会保険の改正項目を一元整理
社会保険労務士
安部敏志
令和2年の通常国会に提出された法改正の内容と企業実務への影響について、ビジネスガイド4月号で「雇用保険、労災保険、高年齢者の雇用等の労働関係」の改正、5月号で「年金制度等の社会保険」の改正に関して取り上げましたが、これらは相互に関連し合う内容となっており、一元的に把握する必要があります。本稿では、施行スケジュールを掲げながら改正内容を整理していきます。
1 国会における改正項目
まず、今回の法改正の内容を一括りにしてわかりやすく言えば、国は、「少子高齢化への対応を急務として、国民ができる限り長く働き、働いている間は公的年金に貢献しつつ個人の老後の生活を見据えた企業年金・個人年金を活用し、働けなくなってから年金制度を利用するための政策を推進している」ということです。そのために必要なのが、労働力確保と年金制度の安定・充実化です。
今回の労働関係・社会保険関係に関する法改正の内容は、さまざまな改正が相互に関連し合っているため分けづらいのですが、あえて横断して整理・分類すると、以下の3項目に分けることができます。
- 高年齢者就業確保措置の導入:令和3年4月1日施行
- 60~64歳の在職老齢年金制度の支給停止基準額の引上げ:令和4年4月1日施行
- 65歳以上を対象にした在職定時改定の導入:令和4年4月1日施行
- 高年齢雇用継続給付の改正:令和7年4月1日施行
(2) 複業の推進とセーフティネットの整備
- 被保険者期間の算入基準に労働時間を追加:令和2年8月1日施行
- 複数業務要因災害に関する保険給付の導入:公布後6月を超えない範囲内で政令で定める日施行
- 複業する高年齢被保険者の特例制度の導入:令和4年1月1日施行
(3) 年金制度の安定・充実化
- 確定給付企業年金の受給開始時期の選択肢の拡大(上限70歳):公布の日施行
- 簡易企業型年金と中小事業主掛金納付制度(iDeCo+)の対象範囲の拡大(100人→300人以下の企業):公布後6月を超えない範囲内で政令で定める日施行
- 年金の受給開始時期の選択肢の拡大(上限75歳):令和4年4月1日施行
- 確定拠出年金の受給開始時期の選択肢の拡大(上限75歳):令和4年4月1日施行
- 確定拠出年金の加入可能年齢の見直し:令和4年5月1日施行
- マッチング拠出とiDeCo加入の選択:令和4年10月1日施行
労働関係 | 社会保険関係 | |
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■8月1日施行 雇用保険法
■公布後6月を超えない範囲内で政令で定める日施行 労働者災害補償保険法
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2020年 令和2年 |
■公布の日施行 確定給付企業年金法
■公布後6月を超えない範囲内で政令で定める日施行 確定拠出年金法
|
■4月1日施行 高年齢者雇用安定法
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2021年 令和3年 |
― |
■1月1日施行 雇用保険法
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2022年 令和4年 |
■4月1日施行 国民年金法・厚生年金保険法
■5月1日施行 確定拠出年金法
■10月1日施行
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― | 2023年 令和5年 |
― |
― | 2024年 令和6年 |
― |
■4月1日施行 雇用保険法
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2025年 令和7年 |
― |
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