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【ヨミ】ショウヨ ボーナス

賞与(ボーナス)

賞与(ボーナス)とは?

「賞与(ボーナス、bonus)」は、一般的には企業が一定水準以上の利益を上げた場合に、従業員への還元として支払われる一時金です。ラテン語で「良い」という意味の「ボヌス」を語源とするポジティブな言葉ですが、実際の運用では、評価基準の明確化や同一労働同一賃金への配慮などの注意が必要です。

更新日:2023/07/12

1. 賞与(ボーナス)とは

「賞与(ボーナス)」は、企業が従業員に利益を還元するために支払う一時金です。健康保険法第3条第6項の条文の定義が端的でわかりやすいでしょう。

「賞与」とは、賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。

欧米では、賞与は著しい業績を上げた場合に支給される特別な一時金というイメージですが、日本では金額の変動こそありますが、定期的に支給される賃金の一つ、というイメージが強いようです。毎年、夏と冬に月給の数ヵ月分を支給する企業が多いため、賞与を当て込んだ「ボーナス払い」でローンを組むのも一般的です。しかし、給与と賞与には、明らかな違いがあります。

賞与の定義 ―給与との違い―

給与は、労働基準法第24条により、毎月1回以上決まった日に支払う義務があると定められていますが、法律で賞与を支払う義務は定められていません。賞与を誰にいくら支払うのかは、企業が自由に決定できます。この点が、給与と賞与の大きな違いです。ただし、賞与の支給条件などを就業規則や労働契約などで規定している場合は、支払う義務が生じます。

賞与とは、前述した健康保険法で定められているように、「労働の対償」であり「三月を超える期間ごとに」支払われるものです。ただし、年4回以上支給される賞与は、社会保険料の計算上は「報酬」として扱われます。

また飲食店などで、売り上げや客数などが一定数を超えた場合に支給される「大入り手当」や「大入り袋」も、労働の対償となるため、賞与や報酬に該当します。ただし、発生が不定期、もしくは高額ではなく恩恵的要素が強い場合は、賞与や報酬に含まないと考えられています。

給与・賞与ともに源泉徴収されますが、後述するように源泉徴収額の計算方法は異なります。

寸志とは

「寸志」の本来の意味は「心ばかりの贈り物」です。求人広告などでは、新入社員に対して満額の賞与は出さないが少なめの金額を支給する意味合いで「入社1年目は寸志あり」などと使われる場合があります。

前述したように、賞与は「労働の対償」として「三月を超える期間ごとに」受け取るものであれば、名称は問いません。寸志という名前であっても法律上は賞与と見なされるため、社会保険料と所得税(源泉徴収税)が引かれます。

賞与支払い対象者とは ―アルバイト・パートは?―

前述したように、賞与を支払う義務は法律で定められていません。就業規則や労働契約書などに賞与の有無や支払う対象に関する記載がない限り、企業が自由に決められます。

賞与の対象は自由に決められますが、正社員には賞与を支払い、アルバイトやパートには支払わないなど、雇用の属性によって一律に決めることは法に違反する可能性があります。

働き方改革の一環として、大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月から「同一労働同一賃金」の義務化がスタートしました。「同一労働同一賃金」は、同じ企業における正規雇用者と、アルバイト・パートなどの非正規雇用者との、合理的な理由がない待遇差の解消を目指しています。

「パートタイム・有期雇用労働法」第8条、第9条や、「同一労働同一賃金ガイドライン」では、非正規雇用者であっても、正規雇用者と同じ職務内容や責任を伴う仕事をしている場合は、賞与についても同じ待遇をしなければならないと定められています。

同じ仕事をしている正社員などに賞与を支給している場合には、合理的な理由がない限り、パートなどの非正規雇用者にも支給しなければ違法になる恐れがあります。まずは、自社の賞与制度や労働条件が、非正規雇用者にとって不合理なものになっていないかどうか、確認することが必要です。「責任に違いがある」など合理的な理由で差がある場合は、その理由を明確にしておかなければなりません。

2. 賞与支払届の記入・届け出フローと社会保険料・所得税(源泉徴収税)の計算方法

●賞与からは各種社会保険料と源泉徴収税が引かれる

賞与は、給与と同じく源泉徴収の対象となります。源泉徴収とは、給与などの支払者が、支払う金額から所得税などをあらかじめ差し引いて預かり、代わりに納税する制度です。

企業から支払われた賃金が賞与に該当するかどうかは、次の定義に従って税務署が判断します。

(1) 純益を基準として支給されるもの
(2) あらかじめ支給額又は支給基準の定めのないもの
(3) あらかじめ支給期の定めのないもの。ただし、雇用契約そのものが臨時である場合のものを除きます。
(4) 法人税法第34条第1項第2号≪事前確定届出給与≫に規定する給与(他に定期の給与を受けていない者に対して継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づき支給されるものを除きます。)
(5) 法人税法第34条第1項第3号に規定する業績連動給与

賞与からは、社会保険料と所得税(源泉徴収税)が引かれます。国税庁は計算方法について次のように説明しています。

(1) 前月の給与から社会保険料等を差し引きます。
(2) 上記(1)の金額と扶養親族等の数を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて税率(賞与の金額に乗ずべき率)を求めます。
(3) (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)×上記(2)の税率
この金額が、賞与から源泉徴収する税額になります。

つまり、社会保険料を計算したあとに所得税を計算します。以下では、社会保険料を決定するための「賞与支払届」、決定してからの社会保険料の計算、社会保険料を差し引いた後の源泉徴収税額の計算を順番に解説します。

賞与支払届提出までの流れ

賞与から引かれるものの一つに社会保険料があります。保険料を決定するため、健康保険・厚生年金保険の被保険者である従業員に賞与を支給する場合、企業は支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を年金事務所に提出しなければなりません。

賞与支払届を提出する手続きは、次のような流れで行います。

1)賞与支払予定月を登録
・賞与支払届の送付を受けるため、事前に「新規適用届」あるいは「事業所関係変更(訂正)届」を年金事務所に提出して、賞与支払予定月を登録しておく

2)賞与支払届が送付される
・登録した賞与支払予定月の前月に、日本年金機構または各健康保険組合より、賞与支払届の届け出用紙が送付される
・加入している健康保険組合によっては、固有のフォーマットを使う場合もある

3)「標準賞与額」と保険料を算出
・標準賞与額=実際の賞与額(税引き前の総支給金額)より1,000円未満を切り捨てた額
・保険料=標準賞与額×健康保険・厚生年金保険の保険料率
(保険料は事業主・被保険者が折半で負担)

4)賞与支払届(または賞与不支給報告書)を作成
・登録した賞与支払予定月に賞与を支払わなかった場合も、後述する「賞与不支給報告書」を提出する必要がある

5)4)を賞与支給日から5日以内に、管轄の年金事務所に提出
・郵送や窓口持参のほかにも、電子申請や電子媒体での提出も可能

3)については、後の章でも説明します。

賞与支払届総括表が廃止に

これまで賞与支払届の提出時に「総括表」の添付も必要でしたが、2021年4月に総括表が廃止されました。

賞与を支払わなかった場合も届け出が必要

登録した賞与支払予定月に賞与を支払わなかった場合、従来はその旨を記載した総括表の提出が必要でしたが、総括表の廃止に伴い、2021年4月からは「賞与不支給報告書」の提出が必要になりました。

社会保険料の計算方法(1)健康保険料

賞与を基に計算する社会保険料には、次の種類があります。

  • 健康保険料
  • 介護保険料(※40歳以上65歳未満のみ)
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料
  • 労災保険料(※企業が全額負担)

まず、健康保険料の計算方法です。

健康保険料=標準賞与額×健康保険料率

「標準賞与額」とは、実際の賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額です。標準賞与額は年度における累計額上限が573万円と決められています。また、健康保険料率は加入している健康保険の保険者によって異なるため、加入している健康保険の保険者が出している保険料率表などを参照します。毎年改定されるので、注意が必要です。

健康保険料は、企業と従業員が折半して負担します。算出した保険料を2で割った金額が、企業が負担する金額です。

社会保険料の計算方法(2)介護保険料(40歳以上65歳未満のみ)

介護保険料は、従業員が40歳以上65歳未満の場合のみ、賞与から引かれます。計算方法は健康保険料に準じます。介護保険料率も、加入している介護保険の保険者による保険料率表などを参照して算出します。

介護保険料=標準賞与額×介護保険料率

介護保険料も、企業と従業員の負担は折半であり、算出した保険料を2で割った金額が企業の負担額となります。

社会保険料の計算方法(3)厚生年金保険料

厚生年金保険料の計算方法も、健康保険料に準じます。厚生年金保険料率は、加入している厚生年金保険の保険料率表を参照してください。計算方法は次の通りです。

厚生年金保険料=標準賞与額×厚生年金保険料率

厚生年金保険料も、企業と従業員が折半で負担し、算出した保険料を2で割った金額を企業が負担します。加えて、厚生年金保険も上限額が決まっており、1ヵ月当たり150万円までとなっています。

なお、従業員が厚生年金保険に加入している場合、企業は「子ども・子育て拠出金」を納める必要があります。子ども・子育て拠出金は日本年金機構が徴収していますが、社会保険料ではなく税金で、子育て支援に充てられます。これは企業が全額負担し、従業員が負担する必要はありません。なお、厚生年金保険に加入している全ての従業員が対象となり、従業員の子どもの有無は関係ありません。計算式はほかの社会保険に準じます。

子ども・子育て拠出金=標準賞与額×拠出金率

拠出金率は、2020年4月時点で0.36%に改定されています。

社会保険料の計算方法(4)雇用保険料

雇用保険料はこれまでの計算方法とは異なり、標準賞与額ではなく、実際に支払われる賞与額に雇用保険料率を乗じるので注意が必要です。

雇用保険料=賞与額×雇用保険料率
(企業の負担額=賞与額×事業主負担率)

雇用保険料における企業と従業員の負担割合は、ほかの保険料のように折半ではなく、事業の種類によってそれぞれ負担する割合が異なります。例えば、一般の事業の場合、労働者の負担率は3/1,000、事業主の負担率は6/1,000、雇用保険料率は合計して9/1,000となっており次のような計算になります。


雇用保険料=賞与額×9/1,000
従業員が負担する雇用保険料=賞与額×3/1,000
企業が負担する雇用保険料=賞与額×6/1,000

また、雇用保険の保険料率は毎年見直されます。詳しくは、厚生労働省が公表している雇用保険料率を確認してください。

社会保険料の計算方法(5)労災保険料

労災保険料も、標準賞与額ではなく、実際に支払われる賞与額に労災保険料率を掛けて計算します。労災保険料率は事業の種類によって異なり、毎年見直されます。労災保険料は企業が全額負担するため、従業員が負担料を計算する必要はありません。

労災保険料=賞与額×労災保険料率

所得税(源泉徴収税)の計算方法

従業員の賞与からは社会保険料に加えて所得税(源泉徴収税)が引かれることから、企業側は所得税(源泉徴収税)も計算する必要があります。

賞与にかかる所得税(源泉徴収税)額=(賞与−下記の社会保険料)×税率

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 介護保険料(※40歳以上65歳未満のみ)
  • 雇用保険料

労災保険料は、企業が全額負担するため賞与からは差し引かれません。社会保険料は従業員が負担する金額で、健康保険料の従業員負担分は労使折半のため、総額の1/2となります。

税率は、次の二つを基に、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を参照して求めます。

  • 前月の給与から、社会保険料などを控除した金額
  • 扶養親族の人数

賞与から保険料が控除されない場合とは

賞与から社会保険料が引かれない、次の二つのケースに注意が必要です。

・賞与支給月の月末までに退職する従業員
健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料は、資格を失う月の前月分までの保険料が徴収されます。ポイントは、退職日の翌日に資格を喪失すること。つまり、退職日が月の末日の場合、翌月の1日に資格を喪失するので、退職月の保険料は徴収されます。

このことから、賞与支給月に退職する場合、末日より前に退職したのであれば上記の保険料はかからず、雇用保険料と労災保険料のみ徴収されます。

・育児休業や産前産後休暇を取得中の従業員
育児休業・産前産後休暇中は、健康保険法第159条(育児休業)、159条の3(産前産後休業)により、各休業を開始した日が含まれる月から、休業が終了する日の翌日が含まれる月の前月まで、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料は免除され、雇用保険と労災保険のみを支払う義務が生じます。

雇用保険料は、当月に実際支払われた賃金に対して発生する仕組みですから、休業中に勤務先から給与を支払われない場合は徴収されません。

3. 賞与(ボーナス)の平均額

自社の賞与額を決定する際に、賞与の平均額について情報を得て、検討材料とすることは重要です。

賞与の平均相場調査

●経団連の調査
一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)の調査によると、経団連会員企業など357社における2020年の賞与の平均額は、次のようになっています。

・非管理職:夏季74万1,504円(前年比−1.5%)・冬季68万3,471円(同−4.4%)
・管理職:夏季151万1,632円(同−3.0%)・冬季134万5,972円(同−5.2%)

コロナ禍などの影響で、夏季・冬季ともに前年比マイナス、さらにリーマン・ショック後の2009年に次ぐ減少幅となりました。また、賞与額の決定方法で、後述する「業績連動方式」を採用している企業の割合は60.1%と、初めて6割を超えました。賞与総額を決める基準となる指標としては、営業利益(57.1%)・経常利益(35.7%)の順となっています。

●労務行政研究所の調査
一般財団法人労務行政研究所の調査によると、東証1部上場企業139社における2021年の夏季賞与の平均は71万397円(対前年比−2.5%)、134社の平均月数は2.30ヵ月となっています。こちらも対前年比は、2013年以来8年ぶりのマイナスとなりました。

●国税庁の調査
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、2019年の平均賞与は次のようになっています。

・平均給料・手当:366万円(男性449万円・女性253万円)
・平均賞与:70万円(男性91万円・女性43万円)
・賞与割合(平均給料・手当に対する平均賞与の割合):19.2%(男性20.2%・女性16.8%)

経団連、労務行政研究所、国税庁、これら三つの調査は毎年行われており、相場の判断として有用な資料です。

4. 賞与の査定・評価の方法

賞与の査定における評価基準は明示したほうがよい

前述したように、賞与を支払う義務は法律で定められていません。賞与の有無や支払う対象は企業が自由に決められます。しかし実際には、ほとんどの企業が賞与を支給しています。賞与は従業員のモチベーションに直結するため、優秀な人材の採用や社員の定着度向上につながるのです。

賞与の支給時期と回数も企業が自由に決められますが、夏季と冬季(年末)に2回支給している企業が多い傾向にあります。賞与を定期的に支給すると決めた場合、賞与の算定期間を具体的に決めて明示しておくことが必要です。

例えば、夏季と冬季に支給する場合は、次のように期間を定めます。

・夏季賞与の算定期間:前年12月1日~5月31日
・冬季賞与の算定期間:6月1日~11月30日

原則として賞与は、算定期間における従業員の勤務成績などに従って支給額が決定されることから、算定期間中やその直後に退職する従業員の扱いをどうするのか、就業規則などで定めておくことが必要です。傾向としては、賞与支給日に在籍している従業員に賞与を支給する、つまり、算定期間中に在籍していても支給日に退職している場合は支給されないなどと就業規則に記載するのが一般的です。

賞与額の計算方法には、大きく「給与連動型」と「業績連動型」があります。給与連動型は、「給与○ヵ月分」など基本額に対して一律で数ヵ月分を乗じる計算方法で、従来は一般的な方法でした。しかし近年、成果主義へと移行する企業の大半が「業績連動型」を採用する傾向にあります。

業績連動型では、まず経常利益や営業利益などの企業業績に従って、全従業員に支払う賞与総額(賞与原資)を決定します。それから、査定などに基づいて賞与総額を配分し、それぞれの従業員に支払う個別賞与額を決定します。

賞与算定期間における各従業員の勤務成績に対して査定をし、評価によって賞与額は変わってきます。査定における評価要素には、大きく次のものがあります。

・業績:結果としての成果
・行動:成果を出すための具体的な行動
・能力:保有する能力

ただし、企業によって評価要素と配分はさまざまです。例えば、賞与評価では業績評価のみを使用している企業もあります。

どのような評価要素を使用するにしろ、評価要素や評価基準を公平で客観性のあるものにして明示することが大切です。評価基準が透明性の高いものでないと、賞与に従業員が不満を持つリスクもあります。

求人募集時に賞与を記載する必要はあるのか

求人に応募する人は、月給と年収に注目します。賞与額は年収に影響し、あいまいにすると入社後にトラブルを引き起こしかねません。賞与に関する事項は記載したほうがよいでしょう。

賞与について、記載したほうがよい項目は次の通りです。

  • 賞与制度の有無
  • 制度がある場合は、前年度実績の有無
  • 前年度実績がある場合は、「支給回数」「年間の支給合計月数」ないし「支給金額(従業員平均)」

賞与の回数と、賞与は何ヵ月分か、もしくは総額はどのくらいかがわかるように記載するのがポイントです。また、賞与に関する規定は、就業規則や労使協定にも記載しなければなりません。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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