【“うっかり5年超え”に注意が必要!】無期転換ルールに対応した「定年退職日」と「再雇用終了日」の定め方
特定社会保険労務士
鳥井 玲子
4. 「定年退職日」「再雇用終了日」はどのように定めればよいか
かかる事態を避けるためには、基本的なことではありますが、就業規則等でどのように定年退職日を定めているかを確認したうえで、再雇用終了日を定めることが必要です。自社の就業規則を確認してみたところ、定年退職日と再雇用終了日の定め方にずれが生じていたという場合には、(不利益変更問題がまったくないとは言えませんが)規定を改定するか、今後は、有期雇用特別措置法による特例の適用を受けるための手続きをすることになるでしょう。
なお、再雇用の開始日は、必ず定年退職日の翌日にしなくてはならないわけではありません。再雇用開始日が個別に違うと管理も煩雑になりますから、一定程度統一することも可能です。前掲「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」のA1-7においても、再雇用の開始日について、「雇用管理の事務手続上等の必要性から、定年退職日の翌日から雇用する制度となっていないことをもって、直ちに法に違反するとまではいえないと考えており、このような制度も『継続雇用制度』として取り扱うことは差し支えありません。ただし、定年後相当期間をおいて再雇用する場合には、「継続雇用制度」といえない場合もあります」(下線部分)とされています。「相当期間」の判断が難しいところではありますが、例えば、再雇用の開始日をすべて「1日付」で統一する等であれば、可能と思われます。
●高年齢者雇用安定法Q&A(抜粋)
Q1-7:継続雇用制度として、再雇用する制度を導入する場合、実際に再雇用する日について、定年退職日から1日の空白があってもだめなのでしょうか。
A1-7:継続雇用制度は、定年後も引き続き雇用する制度ですが、雇用管理の事務手続上等の必要性から、定年退職日の翌日から雇用する制度となっていないことをもって、直ちに法に違反するとまではいえないと考えており、このような制度も「継続雇用制度」として取り扱うことは差し支えありません。ただし、定年後相当期間をおいて再雇用する場合には、「継続雇用制度」といえない場合もあります。
5. その他の「定年退職日」「再雇用終了日」の定め方に関する法的留意点
最後に、就業規則や再雇用の規定類の点検をしていると、定年退職日や再雇用終了日の定め方が高年法に違反する可能性があるものを、時々目にすることがあります。その具体例を挙げておきますので、ご注意ください。
例1)「60歳に達する日の属する月の賃金締切日」を定年退職日としている
⇒仮に賃金締切日が20日で、△月25日が誕生日(前日が達する日)の労働者がいた場合、60歳に達する前に定年になってしまうため高年法8条に違反します。
2)「65歳の誕生日の前々日」を再雇用終了日としている
⇒雇用保険の失業等給付の受給の関係から(離職日が65歳の誕生日の前日の場合には、高年齢求職者給付(一時金)の対象となるが、65歳の誕生日の前々日の場合には、基本手当の対象となる)、あえて再雇用終了日を65歳の誕生日の前々日(65歳に達する日の前日)と定めている雇用契約書や規程類がありますが、65歳に達する前に再雇用が終了してしまいますので、高年法9条に違反することになります。
とりい・ れいこ●鳥井特定社会保険労務士事務所 所長。青山学院大学大学院法学研究科修了。1996年伊藤忠商事株式会社退職、1997年行政書士試験合格、1998年社会保険労務士試験合格、2002年10月社会保険労務士登録、2009年8月ロア・ユナイテッド法律事務所パートナー社労士就任・事務所名をロア・ユナイテッド社会保険労務士事務所に変更、2015年1月鳥井特定社会保険労務士事務所として独立。
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