企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

『ビジネスガイド』提携

“うっかり5年超え”に注意が必要!
無期転換ルールに対応した「定年退職日」と「再雇用終了日」の定め方 (1/4ページ)

特定社会保険労務士  鳥井 玲子

2015/5/14

就業規則等で定年および定年後の再雇用制度について定める場合には、労働基準法、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下、「高年法」という)のほか、労働契約法および本年4月から施行される「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」(以下、「有期雇用特別措置法」という)に留意する必要があります。

本稿では、これらの法令と定年および定年後の再雇用制度の関連性に加え、定年退職日および再雇用終了日の定め方に関する実務上の留意点を見ていきたいと思います。

1 高年齢者雇用安定法との関係

(1)定年と高年法

高年法8条により、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務(具体的には施行規則で「坑内作業の業務」と定められている)以外の業務に従事している労働者について定年の定めをする場合には、60歳を下回ることができないとされています。

photo

条文上も「定年の定めをする場合には」とある通り、定年制は、必ず設けなくてはならないものではありませんが、9割以上の企業で定年制が設けられており(厚生労働省「平成26年就労条件総合調査」(以下、「就労条件総合調査」という)によると定年制を定めている企業割合は93.8%)、このうち8割以上の企業で定年年齢を「60歳」としています(「就労条件総合調査」で一律定年制を定めている企業のうち、「60歳」を定年年齢としている企業割合は、81.8%。図表1参照)。

なお、同調査によれば、企業規模が大きくなるほど定年の定めをしている企業の割合が高くなり、定年年齢を60歳としている企業の割合も高くなります。逆に規模が小さくなるほど定年を設けていない企業が多くなり、60歳を超えた定年年齢を設けている企業の割合が高くなります(図表1参照)。

(2)定年後再雇用制度と高年法

次に、定年後の再雇用制度については、高年法9条に「高年齢者雇用確保措置」として定めがあります。すなわち、65歳未満の定年の定めをしている事業主は、その雇用する労働者の65歳までの安定した雇用を確保するため、(1)当該定年の引上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年の定めの廃止の措置のいずれかを講じなければならないとされています。

このうち「(2)継続雇用制度の導入」により雇用確保措置を講じている企業が約8割というのが実態ですが(図表2参照)、この継続雇用制度には、(イ)・(ロ)の2種類があります。

(イ)再雇用制度

定年年齢到達者を一旦退職(雇用契約を終了)させ、就労形態を嘱託、臨時、パートタイマー(短時間労働者)などに変更して、新たに雇用契約を締結することにより、再び雇い入れるもの。

(ロ)勤務延長制度

定年年齢を設定したまま、定年年齢到達者を退職させることなく(雇用契約を継続させたまま)、引き続き雇用するもの。雇用契約は定年前のものが適用される。

両者の違いは、再雇用制度では一旦雇用契約を終了させた後、新たな内容の雇用契約を締結するのに対し、勤務延長制度では当初の雇用契約を継続延長する点です。実態としては、再雇用制度を導入している企業の割合が圧倒的に多いのが現状です(「就労条件総合調査」によると「勤務延長制度のみ」と回答した企業の割合は10.2%、「再雇用制度のみ」は72.1%、「両制度併用」は11.8%。図表3参照)。

そして、再雇用制度を導入している企業のうち、多くが契約期間を1年以下とする有期雇用契約を反復更新する方法をとっており、その最高雇用年齢(以下、「再雇用終了年齢」という)を「65歳」としています(「就労条件総合調査」によると、再雇用制度を導入している企業のうち、最高雇用年齢を定めている企業割合は82.5%で、そのうち最高雇用年齢を「65歳」としている企業割合は93.2%)。

【図表1】一律定年制を定めている企業における定年年齢階級別企業割合(単位:%)
年・企業規模一律定年制
を定めて
いる企業(注1)
 
定年年齢階級
60歳61歳62歳63歳64歳65歳66歳以上(再掲)
65歳以上
平成26年 [98.9] 100.0 81.8 0.8 1.0 0.7 0.1 14.5 1.1 15.5
25 [98.4] 100.0 83.0 0.3 1.2 0.9 0.6 12.5 1.5 14.0
24 [98.8] 100.0 82.7 0.2 1.1 0.9 0.5 13.6 1.0 14.5
23 [98.9] 100.0 82.2 0.5 1.1 1.4 0.7 13.1 0.9 14.0
22 [98.7] 100.0 82.7 0.5 1.1 1.9 0.5 12.3 1.0 13.3
企業規模 1,000人以上 [97.9] 100.0 92.2 0.4 0.4 1.7 - 5.3 0.1 5.4
300~999人 [98.4] 100.0 90.5 0.8 0.6 1.3 0.1 6.6 0.2 6.8
100~299人 [98.8] 100.0 87.2 0.6 1.0 1.1 0.3 9.5 0.3 9.8
30~99人 [99.0] 100.0 79.1 1.0 1.1 0.6 0.1 16.9 1.4 18.3
(注1)[ ]内の数値は、定年制を定めている企業のうち、一律定年制を定めている企業割合である。
【図表2】雇用確保措置実施企業における措置内容の内訳(社、%)
 (1)定年制の廃止(2)定年の引上げ(3)継続雇用制度の導入合計((1)+(2)+(3))
31人以上総計 3,850 (3,736) 22,317 (21,072) 117,012 (107,259) 143,179 (132,067)
2.7% (2.8%) 15.6% (16.0%) 81.7% (81.2%) 100.0% (100.0%)
  51人以上総計 1,697 (1,686) 12,499 (11,716) 80,879 (74,357) 95,075 (87,759)
  1.8% (1.9%) 13.1% (13.4%) 85.1% (84.7%) 100.0% (100.0%)
(注2)( )内の数値は、平成25年6月1日現在の数値。
「合計」は高年齢者雇用確保措置を実施済みと回答した企業の数に対応している。
「(2)定年の引上げ」は65歳以上の定年の定めを設けている企業、「(3)継続雇用制度の導入」は定年年齢は65歳未満だが継続雇用制度の年齢を65歳以上としている企業を、それぞれ計上している。
資料出所:「平成26年『高年齢者の雇用状況』」


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事にコメントする

この記事に対するご意見・ご感想のコメントをご投稿ください。
※コメントの投稿をするにはログインが必要です。

※コメントのほか、ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)がサイト上に公開されます。

※投稿をしたコメントは、『日本の人事部』事務局で確認後、掲載されます。投稿後すぐには掲載されませんので予めご了承ください。

人事・労務関連コラムのバックナンバー

人事労務管理の視点から見る ネット上の誹謗中傷対策
近年、ネットの匿名性を悪用し、会社や上司、同僚を誹謗中傷する事例や、従業員の安易な投稿により世間からの批判が殺到する、いわゆる炎上と呼ばれる事案が増えている。で...
2017/11/06掲載
ミドル層採用時の情報収集・経歴詐称・ミスマッチ等への対応
人材不足で売り手市場の現在、転職市場では、豊富なキャリアやビジネススキルを持つミドル層の転職者割合も上昇しています。そんなミドル層の中途採用をめぐるトラブルを踏...
2017/09/21掲載
“働き方改革”で注目を集める
勤務間インターバル 制度設計と就業規則
現在、長時間労働是正の策の一つとして注目されている「勤務間インターバル」制度。どのような制度で、先行企業ではどのように導入されているのでしょうか。また、導入の際...
2017/07/10掲載

関連する記事

株式会社高島屋
意欲あるかぎり働き続けられる職場へ
ベテランを戦力化する高島屋の「再雇用制度」とは
年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、65歳までの雇用義務化を巡る議論が高まっています。ベテランの暗黙知や熟練の技能を“戦力”として活かすには、どうしたらいいのか...
2012/03/26掲載となりの人事部
「改正高年齢者雇用安定法」施行後の状況は?中小企業の再雇用制度活用事例と運用・処遇決定時のポイント
「改正高年齢者雇用安定法」の施行から1年以上が経過。中小企業の事例を挙げて制度導入の状況を振り返ります。
2007/08/27掲載人事・労務関連コラム
高年齢者雇用の最新実態--改正高齢法への対応と継続雇用制度の実態を調査
団塊世代の大量退職が始まる2007年を目前にして、「改正高年齢者雇用安定法」が2006年4月から施行されました。改正法は、定年後65歳までの安定した雇用確保を企...
2007/04/16掲載人事・労務実態調査
キリンビール株式会社:2007年問題・女性社員をめぐるシステム改革
2007年からホールディングカンパニー制に移行する、キリンビール。同社人事部も今までの「全体最適」から「各社最適」の形へと、新たな体制作りの過程にある。そんな中...
2006/08/28掲載となりの人事部
「人口減少」と「団塊の世代の大量定年」は、企業の人事戦略にどのような影響を与えるか?
国立社会保障・人口問題研究所の2002年1月の推計では、日本の総人口は「2006年をピークに減少していく」と見込まれています。しかし昨年8月に発表された厚生労働...
2006/03/13掲載人事・労務実態調査
【用語解説 人事辞典】
同一労働同一賃金推進法
従業員の健康づくりを通じて生産性向上を目指す!健康経営特集

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

社宅でもUR賃貸住宅
<アンケートのお願い>採用マーケットの構造変化に関する意識調査

記事アクセスランキング

注目コンテンツ


「健康経営特集」
従業員の健康づくりを通じて生産性向上を目指す!

健康経営の推進に役立つ多彩なプログラムをご紹介。資料請求のお申込みや資料のダウンロードも可能です。



『日本の人事部』受けさせたいスキルアップ系講座特集

コミュニケーションや英語力、個人の生産性やPCスキルなど、ビジネス上必須となる多彩なプログラムをご紹介


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


会社の未来を拓く 強い管理職のつくり方~アセスメントツールを“人材育成”に活用する、効果的な手法とは?

会社の未来を拓く 強い管理職のつくり方~アセスメントツールを“人材育成”に活用する、効果的な手法とは?

長期的な不況が続き、グローバル化が進むなか、この時代を企業が生き抜くた...


河合塾マナビスが実践 ~ 自立して考え、行動できる社員を育てる仕組みとは?

河合塾マナビスが実践 ~ 自立して考え、行動できる社員を育てる仕組みとは?

大学への現役合格を目指す高校生に、映像による授業を提供している、株式会...