民法改正に伴う身元保証書に係る対応の影響について
いつも大変参考にさせて頂いております。
さて、新規学卒者の採用手続きの時期となり、準備作業に追われているところでありますが、当社で慣習的に行っている点につきご質問いたします。
当社では、新規採用者からの「身元保証書」の提出を受けております。
内容としては、「身元保証人は採用者本人が故意又は重大な過失により当社に損害を与えた場合に一切の責任を負う」旨の文言の下に署名捺印を頂く形としています。
実務上、単に採用社員の経歴や素性に問題がないことを確認するという認識でおりましたが、見方によっては社員の行為によって損害が発生した場合、特段の限度額もなく保障するというリスクが高い書類にも見えます。
【質問1】2020年の民法改正にあたって、保証人の責務について変更があることは認識していますが、
当社の現状の身元保証書を使用し続けるとした場合、法的に無効となるようなリスクはございますか?
【質問2】当社では身元保証書について、採用時に提出を受けて以降、特に改めて提出してもらうことは行っておりません。この運用について法的に問題はございますか。
身元保証書の提出を受けることについて、慣例的に続いていますが、法的な位置づけが今一つ理解に至っていないのが現状です。
大変初歩的な質問で恐縮ですが、よろしくご教示下さいますよう、お願い申し上げます。
投稿日:2018/02/19 18:01 ID:QA-0074964
- 着眼大局さん
- 静岡県/医療・福祉関連(企業規模 10001人以上)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
現行方式でよい。何れにしても、実効性は薄い
▼ 雇用に関する「身元保証ニ関スル法律」(制定・昭和八年)の保証期間である「5年」が、どの様な変更を受けるのか一寸掴めません。然し、現行でも、身元保証書の提出を求める企業は多い割合に、大きな話題は余り耳にしません。それには、賃貸契約書や事業借入契約書と違い、身元保証書は、入社時=保証日、という限り、保証できるのは、その時点の想定行為に限定(固定)される点にあります。
▼ 例えば、転勤で、海外を含む遠方勤務となった以降は、保証人の目は届かなくなりますし、新入社員で、職務責任、権限が大きくなれば、保証内容は、保証当時から大きく変質・拡大し、保証リスクも、保証人の知らないうちに変わってしまいます。
▼ 従って、会社は、これらの保証契約内容に変更があった場合は、その都度、保証人に遅滞なく通知しなければ責任を問えなくなります。そして、通知された保証人はそれ以後の契約を解除できることになっています。
▼ 実際に、人事異動の都度、社員全体に就いてその保証人に異動内容を通知している企業など皆無でしょう。元々、保証対象の「身元」の定義も明確とは言えない保証書に、(入社後、数年を除き)何時までも、依存するようなことは百害あって一利なしの感がしますが、如何がでしょうか。
▼【ご質問1】
⇒ 法的に無効となるようなリスクはないと思います。然し、上述の様に、実効性は、現在でも希薄で、ある種の気休め、略ぼ、形骸化しているので現行運用を継続されてよいと思います。
▼【ご質問2】
⇒ 法的に問題はありません。但し、上記の様に、実効性は、現行同様、気休め程度です。
投稿日:2018/02/19 22:41 ID:QA-0074969
相談者より
早々の回答ありがとうございました。
投稿日:2018/02/20 10:50 ID:QA-0074981大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、身元保証につきましてはご認識の通り採用社員に関わる損害補償というよりは社員の経歴や素性に問題がないことを確認する主旨で通常行われるものといえます。
そしてご懸念の点につきましては、
・従業員が招いた損害であっても、会社に従業員への指導・管理責任がある事から全てを請求するのは通常困難である事
・そもそも従業員が自らの責任となる形でで会社に巨額の損害を与える事態は極めて特異であり稀である事
からも現実には通常問題とはならないものといえるでしょう。実際、一般的な民事損害賠償事件とは異なり、従業員の身元保証で大きなトラブルとなった実例は殆ど見当たらないものといえます。この点については民法改正後も大きく変わりないものと考えられるでしょう。
従いまして、身元保証書の再提出の件も含めまして、現状では従来通りの対応で特に差し支えないものといえるでしょう。
投稿日:2018/02/19 23:12 ID:QA-0074972
相談者より
明快な解答ありがとうございました。
投稿日:2018/02/20 10:51 ID:QA-0074982大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
通例
その効果はともかく、今でも新卒採用はもちろん、中途採用でも身元保証を取ることは広く行われています。
①法的に無効なのは保証人が保証し得ない事態への責任は問えないことでしょう。就職前からわかっていた瑕疵(現実的にあるとは思えませんが)などがなければ、通常の職務遂行上保証人は監督できないはずなので、一義的な管理責任は会社となります。
②①のようにそもそもたいした意味のない補償なので、そうした運用が多いと思います。
投稿日:2018/02/22 10:47 ID:QA-0075028
相談者より
ご回答ありがとうございました。
投稿日:2018/02/22 11:21 ID:QA-0075032参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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