職務に制限を設けた場合の対応
職員が病気休暇取得後、現場復帰しました。しかし、体調が完全ではないので(身体的後遺症有、完治不能)それまでの業務の一部を軽減した内容「夜勤無、時間外無、ローテによる休日当番も無」で勤務させてほしい旨の申請がなされ、身体状況を考慮すればいたし方ないということで了承されました。(ただし身体障害者には該当しません。診断書も提出済み)本来ならそのような職員ができる部署なり業務に配置換えをするのが妥当なのですが、職場の体制上そういう訳にもいきません。そのため「同じ業務をしていないにもかかわらず給料(月給制)が同じに保証されるのはおかしい。給料や身分保障に差がつかないのは納得行かない」とのクレームを他の職員から受けています。職員の権利が守られるのは他の職員が同じ境遇に至った場合を考慮すれば不利益なことではないのですが、さすがに”不公平感”を払拭できないため業務内容の軽減を申請した職員に対して①基本給与額を下げる、②ボーナス支給率に差を付ける、③あるいは臨時職員になってもらう等、なんらかの対応を就業規則で改訂できないか検討していきたいと思います。
そこでお聞きしたいのは「正規職員の身分を変えたり、または給与やボーナスに差をつけることを定めることが法的に支障無いのか?できるとすればどのような対応なのか?」ということです。職員間に不平不満を生じたままでも困りますし、かといって職員への不利益を一方的に生じさせるわけにも行かないので、なにとぞ賢明なご指導をお願いいたします。
投稿日:2009/10/03 16:57 ID:QA-0017676
- *****さん
- 長野県/医療・福祉関連(企業規模 101~300人)
この相談に関連するQ&A
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、それまでの業務の一部を軽減した内容というのが「夜勤無、時間外無、ローテによる休日当番も無」のみでしたら、こうした勤務はいずれも原則としまして割増賃金が必要なそれ自体特別な勤務ですので、むしろそうした勤務が無いのが本来であれば人事管理上適切な状況といえますね‥
また給与の面を考えましても、免除される時間外分等の割増賃金に関しては支給されないわけですから、その分実際に支給される額は大きく減ることになります。
従いまして、決して他の従業員と同じ給料を貰っているわけではございませんので、その上更に基本給まで減額するというのは明らかな労働条件の不利益変更となり、本人の自発的同意を得ない限りは出来ないものといえます。こうした点については誤解がないよう他の従業員にも説明しておかれるべきです。
これに対し、時間内の勤務につきましても業務負担が通常よりも軽減され、何らかの特別な取り扱いを受けるということであれば、公平性の観点からも本人とも相談の上賃金額を変更した内容の労働契約を結び直すことが妥当でしょう。
但し、そのような場合でも、就業規則上にそのような職務内容変更による賃金見直しについて全く定めがないようですと、不利益変更となること自体に変わりはございませんので原則として本人の同意を得ることが必要です。臨時職員になってもらう場合でも同様といえます。
その一方で、業務に関する人事評価の結果により行われる賃金規定に基いた基本給や賞与額の見直しは問題ないことですので、そうした評価制度があれば当人の実際のパフォーマンスが落ちた際に評価減給で対応する事が現実的な方策といえるでしょう。
ちなみに、「身体的後遺症有、完治不能」ということであれば、無理に現在の仕事を続けるよりも他の職種に変更する事が今後の本人にとっても利益となる場合があることも考えられます。
その辺は状況にもよりますが本人の許可も取った上で主治医に実際本人の健康上どのような就労が望ましいかも確認されると共に、様子を見ながら今後の就労に関し本人とも面談して長期的にベストな方向を探っていくことが重要といえるでしょう。
投稿日:2009/10/03 19:57 ID:QA-0017677
相談者より
早速のご指導、ありがとうございました。働きやすい職場の構築、なかなか難しい面がありますがまず話合そしてはっきりした規則や制度の構築を目指したいと思います。
お世話になりました。
投稿日:2009/10/06 10:32 ID:QA-0036912大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答え致します
ご利用ありがとうございます。
実務運用面での回答をさせていただきます。
今回ご質問のケースは、非常にレアなケースではないでしょうか。
こういう稀なケースに対応するために、
わざわざ就業規則を改定する必要はないと思われます。
御社に労働組合があるかどうかわかりませんが、
不利益変更を規程に盛り込むことによって、
無駄に不信を買ってしまう恐れがあります。
同一労働・同一賃金、ノーワーク・ノーペイの観点から、
夜勤無、時間外無、休日当番無という点で、
充分に給与額は下がっているものと推察されます。
規程上にあるなしよりも、ご本人とよくお話し合いの上、
周りの理解を得られるよう周知する環境を整えることを検討されてみてはいかがでしょうか。
ご質問内にもあるように、他の職員の方にとっても不利益ではありません。
御社が医療・福祉関連の業種であることからも、
多様な人材を活かす環境を整えることは、悪いことではないように思います。
また、正社員から臨時職員への身分変更も考えておられるようですが、
安定した正社員からいつ仕事が切られるか分からない臨時(契約)社員になりたいと思う社員はいません。
だからといって労働契約を一方的に解約すれば解雇となりますので、解雇権濫用法理の制約を受けます。
合意の上で労働契約を結び直すのであれば問題はないかと思いますので、
この点もよくご本人と話し合っていただければと存じます。
以上、ご参考になれば幸いです。
投稿日:2009/10/04 21:27 ID:QA-0017678
相談者より
早速のご指導、ありがとうございます。こちらの職場にも職員組合はあり、執行部とも若干この対応について話し合いがされていますので、双方そして関係者で納得の行く制度の構築を探って行きたいと思います。
投稿日:2009/10/06 10:37 ID:QA-0036913大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
賃金の考え方
「経営者の考え方」→「評価基準」→「賃金」という流れがあります。
賃金で悩まれる企業は、「評価基準」が曖昧なため、賃金の決め方が曖昧となっています。
また、評価基準は「会社あるいは経営者の考え方」が大きく影響しています。
したがって、賃金の支払い方で「会社あるいは経営者の考え方」がよく分かってしまいます。
法律の範囲で許されるのなら・・・、というのではなく、「当社はこういう考え方です」という「理念・哲学」~「評価基準」~「賃金制度」が望ましいと思います。
今回の件は、企業として、「働く人を大切にしていくのか」ということが問われていると思います。
投稿日:2009/10/05 08:19 ID:QA-0017682
相談者より
早速のご回答、ありがとうございました。
共に働く者同士、曖昧な基準ではなく、はっきりした制度を整備しておくことが必要であることを痛感しました。
投稿日:2009/10/06 10:45 ID:QA-0036915大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
- 川勝 民雄
- 川勝研究所 代表者
《 仕事の量 》 と 《 仕事の質 》 に分けて考える
■ 何が問題なのかを判断する基準として、《 仕事の量 》 と 《 仕事の質 》に分けて整理すると分かり易いと思います。
■ 今回、本人から申請されている事項は、主として、標準を上回って課される 《 仕事の量 》 に対する義務免除です。上回る業務量に対する賃金は、当然、不支給となりますので、不公平とは言えません。それでも、回りの人が、不公平と感じるのであれば、上回る業務量に対し支払われる割増賃金率の設定に問題があるかも知れませんが、これは別問題で、説明すれば比較的理解して貰い易いと思います。
■ 次に、《 仕事の質 》 の面です。完治不能な後遺症により、レベルダウンが避けられないにも拘わらず、賃金調整がなされない (従来と変らない) ことからくる不公平感です。配置転換もできず、恐らく、仕事の質のレベルダウン査定と賃下げとの関係もルール化されていない状態では、納得性の高い措置は極めて困難でしょう。
■ ご質問の「正規職員の身分を変えたり、給与やボーナスに差をつけたりすることを定める」こと自体は違法ではありませんが、合理的な事由の設定と変更のプロセスをルール化(就業規則化)しなければなりません。
■ ご説明では、恐らく、現在の就業規則ではこのような対応ができない状況だと思います。改訂するのであれば、今回の特定事例だけではなく、仕事、評価、処遇の全般に亘って検討することが必要ですので、場合により、外部専門家の助言を含めた検討体制が欠かせないと思います。
投稿日:2009/10/05 09:07 ID:QA-0017684
相談者より
早速のご指導、ありがとうございます。
皆さんからのご指摘のとおり、仕事量とレベルの低下が指摘される対象となっています。この点についての不公平感を生じさせないはっきりした制度構築が必要だと思います。その節にはまたご相談させていただくかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
投稿日:2009/10/06 10:58 ID:QA-0036916大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
問題が解決していない方はこちら
-
正職員からパートになった職員の有給休暇について 正職員がこの度一旦退職し、翌日か... [2006/10/20]
-
26業務について 26号業務内で2つ以上の業務を行... [2007/02/06]
-
同一労働同一賃金の対応について 御社では正職員には賞与、昇給、退... [2019/10/09]
-
給料未払い分 6月分の給料を7月15日に支払う... [2024/07/14]
-
夜勤専従職員の有給休暇取得時の賃金 当社では、夜勤専従のパート職員が... [2008/05/02]
-
同一労働同一賃金の対応について 当社では基本給において正職員より... [2019/10/16]
-
翌日に跨ぐ勤務時間について 基本的な質問になるかと思いますが... [2005/11/10]
-
勤務中に所用で抜けた際の給与計算について 勤務中に所用で1時間ぬけた際の給... [2014/07/24]
-
夜勤専従のパート職員の社保適用について 来月より夜勤専従になる職員がいま... [2023/03/16]
-
身分変更による有給休暇について 非常勤から常勤になる職員の有給休... [2009/09/11]
お気軽にご利用ください。
社労士などの専門家がお答えします。
関連する書式・テンプレート
業務の週報
週次で業務を報告するためのテンプレートです。