「役員出向」の際の労務管理・雇用保険・個別同意書について
いつも大変参考にさせていただいております。
この度、弊社(出向元)の従業員(部長クラス)を、子会社(出向先)へ「役員として在籍出向」させることになりました。
出向中も出向元での従業員としての身分は保持し、給与も出向元の給与規程に基づき、出向元から全額支給する予定です。(出向先への費用請求はございます)
このケースにおける、労務管理、雇用保険の取り扱い、および役員就任に関する個別同意書の作成について、以下3点ご相談させてください。
① 労務管理(労働基準法)の適用について
出向先で役員(取締役等)に就任する場合、原則として労働基準法の対象外(労働者ではない)となる認識でよろしいでしょうか。
「実態判断」になる場合、どのようなケース(例:出向先での業務執行権の有無や指揮命令の状況など)において労働基準法の適用下にとどまると判断されるのか、具体的な基準や注意点をご教示いただけますと幸いです。
② 雇用保険の取り扱いについて
出向元で従業員の身分を保持し、給与も出向元から支払われる場合であっても、出向先で役員に就任する以上、雇用保険の資格喪失手続き(兼務役員としての扱いなど)が必要になりますでしょうか。
こちらも実態に応じた判断となる場合、どのような基準で喪失手続きの要否を決めるべきかご教示ください。
③ 役員就任に関する「個別同意書」に盛り込むべき項目について
出向者本人と役員就任および出向に関する合意書(取り決め書)を個別に交わす予定です。
この書面に「最低限盛り込むべき項目」や、実務上トラブル防止のために記載しておくべき内容があればご教示ください。
お手数をおかけしますが、知見をお借りできますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
投稿日:2026/07/02 19:11 ID:QA-0169654
- なつきしさん
- 東京都/その他業種(企業規模 3001~5000人)
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回答内容の正確性・完全性を保証するものではなく、本情報の利用により生じたいかなる損害についても、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
具体的な事案については、必ずご自身の責任で弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
ご質問のケースでは、「在籍出向」と「役員就任」が重なるため、労働者性の有無を実態に即して整理することが重要です。
(1) 労務管理(労働基準法)の適用について
取締役等の役員は、会社法上は会社の機関であり、原則として労働基準法上の「労働者」には該当しません。しかし、形式的に役員であっても、実態として出向先代表者等の指揮命令を受け、担当業務を遂行し、経営方針の決定権や業務執行権を有していない場合には、「使用従属性」が認められ、労働者性が肯定される可能性があります。
例えば、肩書のみが取締役で、実際には部長等と同様の業務を担当し、勤務時間・勤務場所の拘束を受け、出勤管理や人事考課の対象となっているような場合には、労働基準法が適用される余地があります。一方、経営判断に参画し、業務執行権限や代表権限を有し、自らの裁量で業務を遂行している場合は、労働者性は否定される可能性が高いと考えられます。
(2) 雇用保険の取扱いについて
雇用保険も名称ではなく実態で判断されます。出向元との雇用契約を維持し、出向元から賃金が支払われていても、出向先で役員としてのみ活動し、労働者性が認められない場合は、原則として雇用保険の被保険者資格は喪失となります。
一方、役員就任後も実態として労働者性が認められる場合には、「兼務役員」として被保険者資格を継続できる可能性があります。兼務役員として認められるかは、職務内容、指揮命令関係、就業実態、賃金体系等を総合的に判断し、必要に応じてハローワークへ兼務役員に関する確認書類を提出することになります。
(3) 個別同意書に盛り込むべき事項について
実務上は、少なくとも以下の事項を明記することをお勧めします。
・出向期間および役員就任日
・出向元との雇用契約を継続すること
・出向先での役職・職務内容・権限
・指揮命令系統および勤務場所
・賃金の支払者(出向元)および賞与・退職金等の取扱い
・社会保険、雇用保険等の取扱い
・服務規律、秘密保持、競業避止等の適用関係
・出向終了時の復帰先、復帰後の処遇
・役員退任や出向解除となる事由
・本人が内容を理解し同意した旨
特に、労働者性や雇用保険の適用は肩書ではなく実態で判断されるため、実際の職務内容や権限が同意書や出向命令書の内容と一致するよう整備しておくことが重要です。また、出向先での権限や指揮命令関係を明確にしておくことは、後日の労務トラブルや雇用保険手続においても有効な資料となります。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2026/07/03 09:10 ID:QA-0169661
相談者より
ご丁寧にご回答くださりありがとうございます。
「使用従属性」をどのように判断したらよいのかが疑問でしたので、具体的にご教示くださり大変助かりました。参考にさせていただきます。
投稿日:2026/07/14 18:54 ID:QA-0170221大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
1.労働基準法の適用について
出向先での取締役就任により、原則として労基法上の労働者からは外れますが、
最終的には実態で判断されます。出向先で経営方針の決定権や業務執行権を持た
ず、代表取締役等の指揮命令下で実務に従事する場合は労働者性が認められ、
役員であっても労基法が適用されるため注意が必要です。
2.雇用保険の取り扱いについて
雇用保険も実態に基づき判断します。今回は出向元が給与を全額支給し雇用関係
も継続するため、出向先で労働者性が認められる兼務役員の実態であれば被保険
者資格を維持できます。一方、出向先で代表権を持つなど経営者としての性格が
強く労働者性が否定される場合は、資格喪失手続きが必要です。
3.個別同意書の記載項目について
後日のトラブルを防ぐため、出向期間、出向先での役職や職務内容、権限の範囲、
指揮命令系統、給与や諸手当の支給条件、出向元での身分保障、復帰条件、秘密
保持義務を明確に記載しておくと良いでしょう。
投稿日:2026/07/03 09:13 ID:QA-0169662
相談者より
ご回答ありがとうございます。
兼務役員であれば雇用保険は継続、代表権をもち経営者としての性質が高い場合は資格喪失が必要ですね。丁寧にご回答くださりありがとうございました。
投稿日:2026/07/14 18:56 ID:QA-0170222大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
いつも日本の人事部をご利用くださりありがとうございます。
早速ですが3つのご質問について順を追って回答してから、一点注意すべき事項などを補足させて頂きます。
■質問1への回答
出向先で取締役(委任契約)に就任する場合、原則として出向先においては労働者ではなくなりますので、労働基準法が適用されなくなります。しかし取締役という肩書であっても、業務遂行や労働時間の決定において、通常の労働者(出向先の部課長)と同等程度の裁量権しか与えられていない場合は、実態として労働者とみなされ、労働基準法が適用されることがあります。
なお、出向元(貴社)との関係では雇用関係が継続していますので、出向者は出向後も労働基準法にもとづき労働者としての権利が守られます。賃金は出向元たる貴社から支給されるとのことですので、賃金支払ルール(5原則)などは、引き続き労働基準法に則って取り扱われる必要があります。
■質問2への回答
雇用保険法は、労働者が同時に2以上の雇用関係にある場合(在籍出向など)、「その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける一の雇用関係」についてのみ被保険者となると規定しています。ご質問のケースは、在籍出向で出向元から賃金が支払われるため、貴社での雇用保険被保険者資格は継続します。
なお、もし出向される方が使用人兼務役員でなおかつ出向先で賃金が支払われる場合は、出向元での雇用保険被保険者資格を喪失し、出向先で新たに雇用保険被保険者資格を取得します。また在籍出向であっても出向先で代表取締役に就任する場合は、労働者性が皆無であるため、資格喪失します。
■質問3への回答
検討すべき論点は、出向元の雇用関係が出向先では委任関係に変わるため、善管注意義務や忠実義務といった会社法が適用されることです。部長から取締役に身分が変わることで、従来の労働者の権利が保障されなくなったり、あるいは経営上の過失について、会社や第三者から個人責任を追及されることがあります。
したがって次の各事項に十分留意しつつ出向契約書や役員就任届を作成することをお勧めします。
(1).出向契約書
・出向先における法的地位(雇用契約→委任契約)
・経営責任、損害賠償義務(出向先での経営責任について出向元は免責)
・役員賠償責任保険(D&O保険)の加入
・解任や退任時の取り扱い(辞任や死亡等の際の権利義務関係の整理)
・機密保持義務と利益相反行為の禁止
(2).役員就任届
・委任契約への移行と善管注意義務および忠実義務の受託
・労働基準法の適用除外(出向先関係)
・役員報酬(出向元の賃金ベース)と退職慰労金の取り扱い
・労災時の補償(特別加入あるいは民間の損保で補償するのか)
・出向解除後の取り扱い(復職調整の方法や時期)
■特記事項
出向者が、出向先において取締役という経営上の責任ある地位に就く場合、その労務提供の主たる受益者は出向先であるとみなされますが、役員報酬を出向元が負担している場合、法人税法において寄付金と認定され、出向元において当該出向者に支払った賃金を損金算入できなくなる可能性があります。
また出向先が出向元に、当該出向者の賃金相当額を出向負担金として支払っている場合、出向先においては外注労務費等ではなく役員給与とみなされ、自社の役員報酬同様に損金算入するためには、定期同額給与である必要があります(これら税務マターは顧問税理士あるいは所轄の税務署にご確認ください)。
以上長文となりましたがご参考になれば幸いです。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
投稿日:2026/07/03 10:43 ID:QA-0169664
相談者より
回答ありがとうございます。
会社法まで含めてご回答くださり、大変参考になりました。従業員・労働者の性質が高い場合は労働基準法が適用される一方、役員になることで善管注意義務や忠実義務が発生するのですね。しっかりと書面での契約をするようにいたします。
ご丁寧にありがとうございました。
投稿日:2026/07/14 19:05 ID:QA-0170223大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
1.ご提示通り、基本的に役員は労働者ではありませんが、「実態」で勤怠管理や指揮命令などを受けて働く労働者的なものの場合は経営管理者と見なされません。
2.実態として労働者性が高ければ、出向元から賃金が支払われる以上、貴社の被保険継続です。経営者性が高ければ、資格喪失となり、手続きが必要となります。
3.一般的な出向同様、出向期間、役員就任日、役職・職務権限、指揮命令系統など、後でもめそうなことを明文化しておくのが良いでしょう。
投稿日:2026/07/03 13:23 ID:QA-0169668
相談者より
ご回答くださりありがとうございます。
参考にさせていただきながら、社内で検討してまいります。
投稿日:2026/07/14 19:05 ID:QA-0170224参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
1.原則として出向先では労基法対象外、出向元では労基法対象となります。
出向元としては、賃金支払い、有休、健康診断などが対象です。
出向先で役員登記するのかどうか、誰かの指揮命令を受け、
労働時間管理されているのかなどにより、実態として労働者と判断されることも
あります。
2.在籍出向で、出向元で給与そのまま全額支払い、
特に役員報酬はなしということであれば、雇用保険はそのまま継続で問題ありません。
3.出向の目的、期間、形態、出向先での役職、担当業務、責任の範囲
賃金の支払者、賃金額・賞与・手当などの取扱い
勤務地・勤務時間・休日・休暇などの労働条件、
社会保険・労働保険の加入先。出向後はどちらの会社の制度に属するかを明示 退職金・福利厚生の扱いなどです。
投稿日:2026/07/03 15:17 ID:QA-0169672
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、1につきましては、通常の場合ですとご認識の通りになります。その上で、実態判断としましては、示された通り出向先の管理職従業員とは異なり出向先から指揮命令を受けない等、役員としての取り扱いがきちんとされているか否かが基準になるものといえます。
2につきましても、出向先のみの勤務でかつ役員専任であれば、労働者には該当しませんので、雇用保険については適用されず被保険者資格喪失届の提出が必要とされます。
実態判断に関しましては、1と同様の考え方になります。
3につきましては、役員に関わる部分は労働法令の適用が無い事から人事労務管理上注意すべき点はございませんが、会社法務に関わる事柄になりますので不明点があれば企業実務に精通した弁護士等にご相談される事をお勧めいたします。一方、御社における既存の従業員の部分につきましては、役員就任と同時に従業員としての身分は一旦喪失となる旨を明記されておく事が必要です。この点を曖昧にされますと、従業員も兼務する役員と受け取られる可能性も生じますので、その辺は記載された上できちんと説明もされておかれるべきです。
投稿日:2026/07/03 19:25 ID:QA-0169694
相談者より
ご回答くださりありがとうございます。
指揮命令が出向先からあるかないかで役員としての取り扱いの有無が決まるのですね。
いただいたアドバイスを踏まえ社内で検討してまいります。ありがとうございました。
投稿日:2026/07/14 19:08 ID:QA-0170225参考になった
本Q&Aは法的な助言・診断を行うものではなく、専門家による一般的な情報提供を目的としています。
回答内容の正確性・完全性を保証するものではなく、本情報の利用により生じたいかなる損害についても、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
具体的な事案については、必ずご自身の責任で弁護士・社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
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