有給休暇の分割付与から通常付与への変更に伴う措置について
いつもお世話になっております。
表題の件について、先日質問させていただきました関連でご質問させていただきます。
来年の4月1日より、有給休暇を現状の分割付与(正社員は入社時3日、6カ月経過後に7日付与)から通常付与(6カ月経過後に10日付与)へ変更を検討しております。
その中で2点質問失礼します。
① 例えば1月1日に入社した職員は1月1日時点で3日付与されてます。そういった旧制度が適用されている職員は4月1日から通常付与に変更する場合に何か措置が必要でしょうか。例えば、6カ月経過後に改めて10日付与するとか、入社時の3日を無効にするとか。
② ①の措置はどちらも不要だとは思いますが、一般的に分割付与から通常付与へ変更する場合に必要な措置、その際の就業規則上の文言を具体的にご教示いただけますでしょうか。
調べましても中々具体的な記述が見つからないので質問させていただきました。
ご回答よろしくお願いします。
投稿日:2025/11/29 22:08 ID:QA-0161297
- アストラエルさん
- 東京都/医療・福祉関連(企業規模 101~300人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1.結論
(1) 特に追加措置は不要(3日の扱いもそのままでよい)
(2) 就業規則の変更だけで対応可能(個別の調整や遡り付与は不要)
(3) 就業規則の文言は「施行日以降入社の者は通常付与」「経過措置として旧制度付与分を有効とする」と書くのが最も安全
2.質問(1)への回答
旧制度(入社時3日付与 → 6か月後7日付与)適用中の者を
2026年4月1日から通常付与(6か月で10日)へ変更する場合、何か措置は必要か?
【結論】
特別な措置は不要。
入社時付与の3日は無効にする必要もないし、6か月後に改めて10日付与する必要もない。
【理由】
労基法39条は「最低10日付与」を義務とするが、入社時付与日数は会社裁量である
→入社時3日付与は会社独自の優遇措置。廃止しても法的問題なし。
すでに付与された3日は「確定した労働条件」なので取消は不利益変更に当たり不可
→既付与分はそのまま残すのが正解。
旧制度で“入社半年経過後に7日付与”が確定している場合、それを10日に上乗せする義務はない
→ただし就業規則改定後は「今後の付与ルール」が変更されるだけ。
したがって
2026/1/1入社 → 2026/1/1に3日付与済
6か月後(2026/7/1)の付与は
旧制度:7日付与 → 新制度:10日付与 に切り替えればよい
※3日分は「先行付与」という扱いで残して問題なし。
3.質問(2)への回答
・一般的に、分割付与から通常付与へ切り替える際に必要な措置は?
【必要なもの】
(1) 就業規則の改定(改定条文の明確化)
分割付与制度を廃止し、通常付与へ一本化する旨を規定する。
(2) 経過措置の記載
既に付与された日数は有効であり、施行日以前の付与日数を減らさないと明記。
(3) 従業員への説明・周知
育児時間・年休・分割付与の変更は「労働条件の一部」
→ 就業規則変更の周知(労基法106)で足りる。
4.実務として必要な調整は?
・不要なもの
新たに「10日を再付与」する
付与済の3日を取り消す
手当で調整する
個別同意を取り直す
→ いずれも不要。
制度廃止に伴い「今後の付与ルール」が変わるだけだから。
・必要なもの
就業規則上の「付与日数表」を改定
経過措置を条文化
従業員へ説明(文書 or 朝礼案内等)
5.就業規則の具体的文言案(そのまま使えるレベル)
※最も推奨される書き方を示します。
(1)通常付与への変更条文案
(年次有給休暇の付与)
第○条
1 労働者には、入社後6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合、10日間の年次有給休暇を付与する。
2 前項のほか、勤続期間に応じて次の通り付与する。
(以下、法定どおり)
(2)経過措置条文(必須)
(経過措置)
本規程改定前に分割付与により付与された年次有給休暇は、その効力を失わず、従前のまま使用することができる。
(3)施行日条文
(施行日)
本規程は2026年4月1日より施行する。
同日以降に6か月勤務に到達する者は、本改定後の付与日数による。
6.実務上的に「よくある失敗と注意点」
誤1:入社時3日を取り消す(不利益変更 → 違法)
誤2:新制度適用後に「6か月満了が近い者」をどうするか曖昧
→ 経過措置条文を入れて無矛盾化
誤3:4/1施行だが、付与基準日を忘れて矛盾が生じる
誤4:分割付与分を10日に“含める”処理をし、付与日数が減る
→ これは不利益変更になるので不可
7.まとめ
入社時3日の付与は取り消せない
新制度(6か月10日付与)への切替で追加の付与義務もない
就業規則改定+経過措置を明記するだけで足りる
労基署もこの取り扱いを認めており、実務として標準的
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/12/01 10:48 ID:QA-0161317
相談者より
詳細なご回答誠にありがとうございました。
追加で確認させていただきます。
上記例ですと、1/1入社時に3日付与、4/1より就業規則変更、7/1には追加で7日付与でよろしいということでしょうか。それとも、7/1には新規則を適用の上で10日付与ということでしょうか。
投稿日:2025/12/02 10:00 ID:QA-0161382大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
1.4/1入社の社員より適用とすれば、
1/1入社の社員は、従来通りの付与でよろしいでしょう。
2.労基法どおりの付与ですから、
入社後6ヵ月で10日付与の例は、厚生労働省のモデル就業規則等、
どこにでも記載例があります。
投稿日:2025/12/01 15:39 ID:QA-0161341
相談者より
ご回答ありがとうございました。
投稿日:2025/12/02 10:00 ID:QA-0161383大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
1について、特別措置は特段不要となります。
2について、6カ月経過後に10日付与の旨を規定すれば問題ありませんが、
経過措置についても、規定していだくことも可能です。以下、参考です。
令和7年3月31日までに雇入れられた従業員については、この改正前の規定に
基づき既に付与された年次有給休暇(例:雇入れ時に付与された3日)は、
この附則の施行後も引き続き有効とし、その後の付与については、
本規則第〇条(年次有給休暇の付与)の規定を適用する。
投稿日:2025/12/01 17:44 ID:QA-0161352
相談者より
詳細なご回答誠にありがとうございました。
追加で確認させていただきます。
上記例ですと、1/1入社時に3日付与、4/1より就業規則変更、7/1には追加で7日付与でよろしいということでしょうか。それとも、7/1には新規則を適用の上で10日付与ということでしょうか。
投稿日:2025/12/02 10:00 ID:QA-0161384大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、1につきましては、変更前に入社された方の扱いをどのようにされるかについては事前に就業規則で定めておかれるべきです。逆にいえば、定めておかれる事で特別な措置は不要になるものといえます。
2につきましては、他の文面内容との整合性もございますので、この場で最善のフレーズを示す事は困難ですが、例えば「既存の社員については、既に分割付与されている年休日数が有る場合、当該日数を減じて付与する」等、具体的な対応についてはっきり分かるように定めればよいでしょう。
投稿日:2025/12/01 20:11 ID:QA-0161363
プロフェッショナルからの回答
モデル就業規則
以下、モデル就業規則(厚生労働省)に則り、素案を記述させていただきます。
(年次有給休暇)
第〇条 採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、10日の年次有給休暇を与える。その後1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表1のとおり勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。
但し、令和8年3月31日までに採用した労働者については、採用日に3日の年次有給休暇を与える。採用日から6か月間継続勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、7日の年次有給休暇を与える。採用日から1年間継続勤務するごとに、当該1年間において所定労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、下の表2のとおり勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を与える。
表1
勤続期間 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
表2
勤続期間 採用日 6か月 1年 2年 3年 4年 5年 6年
付与日数 3日 7日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
投稿日:2025/12/01 22:49 ID:QA-0161376
相談者より
詳細なご回答誠にありがとうございました。
投稿日:2025/12/02 10:02 ID:QA-0161385大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
ご自身の責任により判断し、情報をご利用いただけますようお願いいたします。
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