研修受講に伴う誓約書の取り交わしについて
いつもお世話になっております。
この度、当社ではハイポテンシャル人材に対し、ある研修の実施を検討しています。受講対象者は、各部門長が選出した人材です。
この研修は長期にわたり、かつ費用も非常に高額となり、将来の成長が期待される人材への会社としての大きな投資となります。
そのため、研修を受講するにあたり、
・研修終了後1年以内に退職した場合
・修了要件を満たさない場合
は、全額を自己負担とさせたく、その旨の誓約書を取り交わすことは問題ありませんでしょうか。
尚、研修受講の時間は全てを業務時間とする、または一日○時間までを業務時間とする、と定めたいと考えております。
ご教示のほど、宜しくお願いします。
投稿日:2025/08/28 16:38 ID:QA-0157410
- ぴっきーさん
- 大阪府/機械(企業規模 301~500人)
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プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
誓約書を設け、一定の退職抑制をかける行為自体は問題ないと思案しますが、
実際、全額の研修費用を変換させることになりますと、慎重な判断が必要です。
裁判例でも、有効性が認められるためには、以下の条件を全て満たす必要が
あるとされています。
・研修が業務上必須ではない、または自己啓発的な要素が強いこと。
・研修の受講が従業員の自由意志によるものであること。
・返還義務の対象となる期間が、社会通念上妥当な範囲であること。
・返還を求める金額が、実際の研修費用と比べて過大でないこと。
本ケースにおいては、各部門長が選出しとありますので、トラブルに発展した
際は、業務指示とみなされる可能性が高いものと思案します。
投稿日:2025/08/28 17:14 ID:QA-0157412
相談者より
ご回答いただきありがとうございました。
研修実施の目的としては、グローバルで開催されるリーダーシップ研修(全て英語で実施)に参加させ、グローバルで活躍できるリーダーの養成となります。そのため、その研修に参加できるレベルへの英語力の引き上げを今回の研修で実施します。
研修期間としては16ヶ月(1年4カ月)、研修費用は一人当たり一般社員クラスの月額基本給程度の相当します。
この場合、やはり業務指示とみなされ、対象・未修了の場合、いずれも受講費の返還を求めるのは難しいでしょうか。もしくは半額を負担等にすれば許容範囲なのでしょうか。
追加の質問となり恐縮ですが、再度ご教示いただきたく、宜しくお願いいたします。
投稿日:2025/08/28 17:35 ID:QA-0157414大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、まず業務上必須とされ受講が義務化された研修の費用につきましては、会社が負担すべきものですので、事情がどのようであれ従業員の自己負担とされる措置は困難といえます。
自己負担を有効とする為には、少なくとも
・研修について強制ではなく、従業員が受講有無について任意に選択出来るものとされる事
・研修の受講費用について労働契約と切り離し、別途金銭消費貸借契約を締結され原則費用返還要の旨定めた上で、一定の要件を満たした場合にのみ返還を免除されるものとする事
・上記研修の取り扱いに関し選考段階できちんと事前に説明されておかれる事
といった措置が必要といえるでしょう。
投稿日:2025/08/28 17:36 ID:QA-0157415
相談者より
ご回答いただきありがとうございました
金銭消費貸借契約、つまり一旦研修費用を貸与した形にし、一定の要件をもとに返還を免除する、といった方法もある事が分かりました。
再度真摯に検討いたします。
投稿日:2025/08/29 09:38 ID:QA-0157437参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
1. 退職時や修了要件未達時の費用負担について
法的な考え方
原則:「研修は会社の業務命令に基づく教育訓練」と位置づけられる場合、その費用は会社が負担するのが通常です。
返還請求の可否:裁判例でも、一定の条件を満たせば「返還義務を定めた誓約書」が有効と認められることがあります。
例:海外MBA派遣制度などで、修了後に一定期間勤務する義務を課し、それを守らず退職した場合の返還条項。
ただし、有効とされるためには以下が重要です。
投下費用が会社業務の範囲を超えるほど高額である(=通常のOJT研修とは異なる)。
誓約の内容が明確かつ合理的である(返還範囲・金額・期間などが明示されている)。
労働者に不当に過大な負担を負わせない。
例:1年以内退職なら全額返還、2年以内なら半額、など「逓減方式」のほうが有効性は高い。
本人の自由意思に基づき誓約している。
リスク
「労働契約の自由」を過度に制約するものは無効とされる可能性があります。
特に「修了要件を満たさない場合に全額返還」とすると、体調不良や会社側事情(配置転換等)で未修了となった場合に不当条項とされかねません。
2. 業務時間の取り扱い
研修が会社の指示に基づくものであれば、基本的には「労働時間」として扱う必要があります。
ただし、全日程を業務時間扱いにするのではなく「一日○時間までは労働時間として取り扱う」とすること自体は可能ですが、その場合でも「実際に使用者の指揮命令下にある時間」は労働時間となるため、線引きには注意が必要です。
例:夜間の自習やレポート作成を労働時間とせず、研修受講時間のみを労働時間とする、といったルール化。
3. 実務上の対応策
誓約書を作成する場合は、以下のような要素を盛り込むとリスク低減になります。
研修の目的・内容・費用を明記。
返還義務が発生する条件を限定・明確化。
返還額は「全額一括」ではなく、経過期間に応じた逓減方式を検討。
修了不能の理由が「会社都合」や「不可抗力」の場合は免除する旨を明記。
本人の署名捺印により、自由意思で同意したことを担保。
4.まとめ
「1年以内退職や未修了で全額返還」という誓約はリスクが高めです。逓減方式や免除事由を設けることで、裁判例でも有効とされやすいです。
業務時間の扱いは「会社の指揮命令下にある時間は原則労働時間」と考え、研修内容に応じた整理が必要です。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/08/28 17:43 ID:QA-0157417
相談者より
ご回答いただきありがとうございました。
様々な観点から見解をお示しいただいたことで、多面的に理解する事ができました。
受講料の返還については会社負担するものとし、研修時間の取扱いについて再検討いたします。
投稿日:2025/08/29 09:41 ID:QA-0157439大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
労基法
以下、回答いたします。
(1)労働基準法第16条との関係で懸念されます。
(賠償予定の禁止)
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
(2)業務命令として(業務時間において)研修を課し、これを修了した者に対し、一定期間の勤務義務を課し、この勤務義務違反者に対して一定額の弁償義務を課することは、上記の第16条に抵触する可能性があります。
[御参考:「令和3年版 労働基準法 上 厚生労働省労働基準局編」]
投稿日:2025/08/28 19:30 ID:QA-0157423
相談者より
ご回答ありがとうございました。
やはり法に抵触するとの事で、慎重に再検討いたします。
投稿日:2025/08/29 09:42 ID:QA-0157440参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
研修終了後1年以内に退職した場合、修了要件を満たさない場合
は、全額を自己負担ということは、
労基法の強制労働の禁止、賠償予定の禁止に抵触しますので、できません。
上記のようにするのであれば、研修費用を会社が貸すといった契約
をして、研修終了後1年経過した場合、修了要件を満たした
場合は返済を免除するといったことであれば可能とはなります。
投稿日:2025/08/29 09:08 ID:QA-0157430
相談者より
ご回答ありがとうございました。
研修費用の貸与後返済免除という方法も視野に入れて、再度検討いたします。
投稿日:2025/08/29 09:45 ID:QA-0157441参考になった
プロフェッショナルからの回答
判断
内容的にも業務ですし、強制労働、賠償に該当すると思われますので、返金義務化は無理でしょう。
研修費用返還で退職を縛ることはできないとお考え下さい。
投稿日:2025/08/29 09:41 ID:QA-0157438
相談者より
ご回答ありがとうございました。
受講料の取扱いについては、慎重に再検討いたします。
投稿日:2025/08/29 09:48 ID:QA-0157442参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
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