部署や年齢、性別も超えて役員をロールモデルに――
あいおいニッセイ同和損保に学ぶ
「女性管理職の育成」とは
人事部 ダイバーシティ推進室長
福岡 藤乃さん
トップの“えこひいき”宣言が業界特有の男性社会を変えた
すでにさまざまな施策が実践され、取り組みも進んでいるようですね。
最初は、主に女性活躍推進に資する制度面の強化から始まりました。出産・育児関連の制度拡充や短時間勤務制度の新設などが第1ステップです。続く第2ステップは、実際にロールモデルを創ることでした。なにしろ07年頃までは女性管理職がほとんどいませんでしたから。ポジティブアクションを実施し、意欲と能力のある女性社員にはどんどんポジションに就いてもらうようにしました。第3ステップとなる現在は、男女を問わず、役割を拡大し能力を発揮していける環境整備に取り組むとともに、さらなるキャリア形成支援と女性、外国人、障がい者を含めた多様性強化のための風土醸成に努めているところです。
具体的な施策としては、ダイバーシティに関する役員のメッセージを社内向けのインターネットTVやニュース(ダイバーシティだより)で紹介したり、社外に向けても積極的に情報発信を行なったりするなど、社員の意識改革を促す情報宣伝に取り組んでいます。また、冒頭に申し上げた女性管理職の支援を目的に、2011年から男性の役員クラスをメンターに、女性管理職をメンティーとする「女性管理職メンター制度」を開始しました。さらに、育休中の女性社員の復職支援として「カンガルーミーティング」の実施や、配偶者の転勤先地域へ同じ資格のまま異動できる「あいムーブ」制度の導入など、ライフイベントへの対応にも力を入れています。現実問題として、結婚や出産に伴う環境変化を乗り越えない限り、管理職やその上への道はなかなか開けていきませんから。
風土の醸成というお話がありましたが、確かに制度をつくるだけでは組織は変わりません。もともと企業風土や職場の雰囲気はどのような感じだったのでしょうか。
一般的に保険会社というと、生命保険のセールスレディーのイメージが強く、女性の世界という先入観をお持ちの方も多いと思いますが、弊社に限らず損保業界は基本的に男性社会で、女性の営業社員はかつてはほとんどいませんでした。
ですから、女性活躍の支援やダイバーシティを進めるにしても、生命保険会社とはスタートからして全然違います。もちろん人事制度の上では、男女の区別はすでにありません。誰でも、同じ資格なら同じ仕事ができる制度になっていますし、冒頭でご説明したとおり、最近は現場部門と言われる営業部門や保険金支払い部門にもようやく女性の管理職が出てくるようになりました。トップの鈴木(久仁代表取締役社長)のリーダーシップにも支えられ、少しずつですが、男性社会だった社内の古い体質や固定観念に風穴が明きつつあります。
鈴木社長はダイバーシティ推進をとても強力にサポートされているそうですね。
はい。他社との意見交流会などに参加すると、そこまでトップが後ろ盾になってくれるケースは珍しい、とよく言われます。社長自らがダイバーシティ推進の旗を振り、「女性から役員が出るまで、私は女性を“えこひいき”する」とまで宣言していますから、推進部門の人事部としてはありがたい限りです。もちろんえこひいきとは、女性であれば、誰かれかまわず引き立てるという意味ではありません。意欲と能力のある社員に対して、成長の機会をできるだけ多く与えようということです。女性管理職のさらなる飛躍には経営層全体の理解と関心が不可欠ですが、トップがそういう認識ですから、役員・部長クラスにも協力体制が広がっています。