「日本一働きたい会社」から「世界最高のチーム」へ
経営理念に命を吹き込む、企業文化のつくり方
株式会社LIFULL 執行役員 人事本部長
羽田幸広さん
企業文化の醸成や組織変革に魔法の杖はない
貴社はこれまで「日本一働きたい会社」を標榜されてきました。世界最大級の働きがい専門研究機関であるGPTW(Great Place to Work)の調査で「働きがいのある会社」ベストカンパニーに7年連続で選出されるなど理想を体現されていますが、次なるステージとして「世界最高のチーム」を目指しているそうですね。
はい、昨年の10月頃からこの会社を「世界最高のチームにしよう」という目標を掲げています。「LIFULL」という社名には、“世界中のあらゆるLIFEを、安心と喜びでFULLにしたい”という想いが込められています。私たちが手がけたいサービスの規模感は、事業内容は違えどもGAFAに代表されるような世界的企業の規模感と何ら変わりがないわけです。彼らと同規模の価値を世界中で提供していくためには、私たち自身が日本という枠にとらわれず、世界レベルのチームになる必要があると考えました。
「世界最高のチーム」になるために、人事部門ではどのような取り組みをされているのですか。
世界最高のチームをつくるためには、社員一人ひとりがよりプロフェッショナルになっていかなければなりません。そのうえで、さらにチームに貢献する意識を高めていく必要があります。たとえば、サッカーチームの名門「FCバルセロナ」には、世界を代表するプレイヤーであるメッシ選手が所属していますが、彼はあれほどの才能を持ちながらも、常にチームの勝利を第一に考えています。世界トップクラスの年俸を稼ぎながら、試合では泥臭くチームに貢献している。これが私たちの目指すスタイルです。強い個が集まったうえで、一人ひとりが経営理念の実現に向けてチームに尽くす。そんな組織にしたいのです。
昨年は半年かけて、「プロフェッショナルとは何か」というテーマで、全社員が話し合う機会を設けました。自らの働き方を振り返り、その差を埋めていくにはどうすればいいのかを議論したり、どのように行動すればワンランク上のステージにあがれるのかを考えたり。何か制度を導入するというよりは、まずは目指すべき姿や考え方をブラッシュアップしているところです。
「日本一働きたい会社」から「世界最高のチーム」にステップアップする過程でも、社員の皆さんで話し合いながら進めていくことを大事にされているのですね。
企業文化とはボスが出ていったあとに起こると言われたりしますが、誰も見ていない、何も縛りがないなかで、社員がどのように行動するのかが肝心だと思います。会社がいくら「プロフェッショナルを目指そう」と言っても、社員自身がその価値を感じ、行動しなければ意味がありません。プロとしての働き方がしたいと自発的に思ってもらうためには、みんなで話し合い、私たちらしい結論を出すことが大切だと考えています。
文化をつくっていくというのは、とても地道な作業です。何か制度を導入すれば、仕組みだけまねれば、うまくいくというものでもありません。しかも、すぐに成果はでない。文化が根づくまでには5年、10年とかかります。組織運営がうまくいっている企業の人事の方は、誰もが陰ながらすごく努力をされています。社員との対話を繰り返したり、提案してくれたことに感謝したり、何か相談を受けたときにはできる限り解決できるよう動いたり、みんなで何度も議論したり……。そういった努力を積み重ねた先に、社員一人ひとりの行動の変革があり、理想とする組織があるのだと思います。