企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

となりの人事部
第84回 味の素株式会社

味の素のグローバル化に向けた
“トランスフォーメーション”による人財マネジメント変革(前編)

味の素株式会社 理事 グローバル人事部 次長 髙倉 千春さん
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
味の素株式会社 理事 グローバル人事部 次長 髙倉 千春さん
味の素は世界130以上の国や地域で事業を展開する、日本におけるグローバル企業の草分け的存在です。しかし数年前まで、人事制度の仕組みは「職能資格制度」をベースとした「日本的」なものでした。「人事全体の仕組みや考え方を変えていかなければグローバル展開は難しい」――そう考えて近年、変革に注力しているのが、同社グローバル人事部次長の髙倉千春さん。味の素を真のグローバル企業へと変革するための動きが活発化していますが、その際には「チェンジ」ではなく「トランスフォーメーション」が重要だと髙倉さんは言います。インタビュー前編では、外資系企業を中心に20年以上人事を経験してきた髙倉さんにご自身のキャリアを振り返ってもらうと同時に、日本企業がグローバル化を図る上でのポイントについて、お話をうかがいました。
プロフィール
味の素株式会社 理事 グローバル人事部 次長 髙倉 千春さん プロフィール写真
髙倉 千春さん
味の素株式会社 理事 グローバル人事部 次長
たかくら・ちはる●津田塾大学(国際関係学科)卒業。1983年、農林水産省へと入省。1990年にフルブライト奨学生として米国Georgetown大学へ留学し、MBAを取得。帰国後、1993年からコンサルティング会社にて、組織再編、新規事業実施などに伴う組織構築、人事開発などに関するコンサルティングを担当する。その後、人事に転じ、1999年ファイザー株式会社、2004年ベクトン・ディッキンソン株式会社、2006年ノバルティスファーマ株式会社において人材組織の要職を歴任。2014年7月味の素株式会社に入社し、2017年7月から現職。同社のグローバル戦略推進に向けたグローバル人事制度の構築と推進のリード役を務めている。

外資系企業の人事責任者を20年にわたって担当し、味の素へ

―― 最初に、髙倉さんのこれまでのご経歴をお聞かせください。

大学卒業後は、農林水産省へ入省しました。自分の得意な英語が活かせる、経済局の国際部に配属されたのですが、当時は中級職の女性が任せてもらえる仕事は限られていました。最初の配属は国際部長の秘書だったのですが、最初の1年半くらいは電話番、コピー取り、部長のスケジュール管理といった雑事がほとんど。ただし、電話番といっても、かけてくるのは自民党の幹部や国会議員など、重鎮の方たちだったので、とても気を使いましたね。

当時はまだ、官民とも女性を活用する雰囲気が希薄な時代でしたが、それでも、国家公務員になったからには特定の案件を担当する「原課」に出て仕事をしたい、と考えていました。するとある時、思わぬチャンスが巡ってきました。私のタイプのブラインドタッチが速いと知った他部署の方が、国際部長秘書の仕事が終わった後に、私をタイプ要員として借りたい、と言ってきたのです。日米農水産物交渉を担当していた国際経済課で、私は仕事をすることになりました。ただ、立場は依然として中級職だったので、何とか上級職になって国際関係の仕事をしたいと思い、普段から経済言論やさまざまな法律について勉強していました。

当時、女性の一般スタッフの多くは、20代で結婚をして寿退職するパターンが多かったのですが、私はといえば、日中は仕事の傍ら経済言論を勉強し、夜は公文書のタイプをひたすら打っているような状況。それなら得意な英語で頑張って働いてもらおうと、次は、USTR(アメリカ合衆国通商代表部)代表のカーラ・ヒルズが来日、日米構造協議が行われている中で、私に日米交渉団の末席で文書を作成する仕事が与えられました。日米要人たちの駆け引きを目の当たりにし、通商交渉の重要性を痛感しましたね。その他にも、自民党本部に行って先生方の話を聞いてメモを取る、といった政策的な仕事もこなしました。

―― 1980年代後半、まさにアメリカが日本に貿易自由化を迫っていた時代に、日米の要人と関わる仕事をされていたわけですね。

本当に貴重な経験をさせてもらって、今でも感謝しています。しかし、いろいろと考えた結果、ビジネススクールで学び直すことにしました。幸運にも、フルブライト奨学生の試験に合格。米国ジョージタウン大学(MBA)に留学することになりました。ちょうどその頃に結婚したのですが、偶然にも夫がアメリカ大使館勤務になり、ビジネススクールに通いながら外交官夫人としての役割をこなす、という生活をワシントンで3年間続けました。

―― 帰国後は、どのようなキャリアを歩まれたのですか。

3年間、ビジネスについてさまざまなことを学んだことで、私にはコンサルタントの仕事をしたい、という思いが募っていました。そこで帰国後に中途採用試験を受け、三和総合研究所に就職することになりました。1993年のことです。国際経営開発部に所属し、日本企業のアジア戦略のコンサルティングを行いましたが、ここでの経験が今の仕事に反映されています。

その後、外資系のコンサルティング会社であるジェミニ・コンサルティング・ジャパンへ転職。日系と外資系で経営コンサルティングを学び、この経験を実業の世界で活かしたいと思っていた頃に、医薬品メーカーのファイザーから話があり、1999年、人事部企画担当リーダーとして就任することになりました。当時、急成長していたファイザーでは、職能給から職務給への転換が求められていました。そこで給与価格を市場水準に合わせ、評価を目標設定に応じた成果報酬とし、それに至るまでのプロセスをコンピテンシーで測るといった大掛かりな人事改革に着手しましたが、今、味の素でやっているのはまさにこのことです。

味の素株式会社 理事 グローバル人事部 次長 髙倉 千春さん

振り返ってみると、この頃から日本企業では「成果主義」が台頭し、人事制度も職能給から職務給、コンピテンシーへの転換という流れがありました。当時、いくつかの日本企業が先駆的に導入していましたが、導入の仕方が中途半端なケースや、変化への対応に二の足を踏んでいるケースも少なくありませんでした。そのような変革を行わなくても日本企業は成長したので、グローバルスタンダードとしての人事制度の立ち上げが遅れてしまい、「失われた25年」を招くことになってしまったのではないかと思います。

ファイザーの後は、日本べクトン・ディッキンソン、ノバルティスファーマ、日本テトラパックと、さまざまな企業で人事責任者を務めてきました。味の素に入社したのは2014年7月です。グローバル化に向けた人事制度改革の話をいただき、伝統的な日本企業の味の素での人事制度改革なら、私の今までの外資系企業での経験が活かせるのではないか、と考えたのです。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事にコメントする

この記事に対するご意見・ご感想のコメントをご投稿ください。
※コメントの投稿をするにはログインが必要です。

※コメントのほか、ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)がサイト上に公開されます。

※投稿をしたコメントは、『日本の人事部』事務局で確認後、掲載されます。投稿後すぐには掲載されませんので予めご了承ください。

となりの人事部のバックナンバー

古河電気工業株式会社:
OJTリーダー制度で、創業130年の企業文化に新しい風を
古河電工が取り組む組織風土改革とは(後編)
古河電気工業では、昔からの企業文化を大切にしつつ「人と人との横のつながり」を強化するため、教育体制の見直しによる組織力最大化を目指しました。その取り組みの一つが...
2017/12/07掲載
古河電気工業株式会社:
OJTリーダー制度で、創業130年の企業文化に新しい風を
古河電工が取り組む組織風土改革とは(前編)
光ファイバケーブルをはじめ、多彩な最先端の技術で生活や産業を支える古河電気工業。創業から133年もの歴史を持つ同社の技術力は、階層別・部門別にセグメントされた細...
2017/11/30掲載
味の素株式会社:
味の素のグローバル化に向けた
“トランスフォーメーション”による人財マネジメント変革(後編)
味の素では、「グローバル食品企業トップ10」に入ることを目標に、事業構造改革に取り組んでいます。その中で、人事制度の変革は大きな柱の一つとなっています。人事全体...
2017/10/04掲載

関連する記事

「グローバル化」推進のポイントがわかる記事14選
現在、日本企業の多くがグローバル展開を進めています。人材の面からそれらの事業を支えるのが人事の役割ですが、人事部門のグローバル化や、社員の語学力向上、グローバル...
2017/07/04掲載『日本の人事部』編集部 厳選記事
強い企業ではなく、変化できる企業が生き残る。
2020年以降を見据えたグローバル人材マネジメントの実現に向けて
日本企業の海外売上比率が高まっているが、一方でグローバル人材の育成やマネジメントには、まだ多くの課題が残されている。いま人事はどのような投資を行い、どのような方...
2017/06/08掲載注目の記事
武田薬品工業株式会社:
人事はビジネスに貢献する戦略的パートナー
タケダのHR改革に学ぶグローバルマインドセットとは(後編)
武田薬品工業では現在、社内取締役の4割、経営会議メンバーの7割に外国人を登用しています。彼らが経営トップや各部門のヘッドに就き、組織のマジョリティーを占めるよう...
2017/04/24掲載となりの人事部
武田薬品工業株式会社:
人事はビジネスに貢献する戦略的パートナー
タケダのHR改革に学ぶグローバルマインドセットとは(前編)
武田薬品工業は235年以上の長い歴史を持つ日本最大手の製薬企業ですが、約3万人いる従業員のうち、日本人が占める割合は何と2割しかありません。国内の企業では類を見...
2017/04/17掲載となりの人事部
ワーク・ライフ・バランスとは何か?
「仕事と生活の調和が実現した社会」の指針となるワーク・ライフ・バランスへの取り組みとは?近年社会に認知されてきた背景と現状について考察する。
2017/03/31掲載よくわかる講座
「注目のセミナー特集」新たな人事ソリューション導入をご検討の企業様向けに厳選セミナーをご紹介。

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

社宅でもUR賃貸住宅 【採用】インディードオンラインセミナー

注目コンテンツ


「注目のセミナー特集」
課題解決のノウハウが満載!

新たな人事ソリューション導入をご検討の企業様向けに厳選セミナーをご紹介。


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


いま求められる“効率的”人事給与業務とは?(第1回)

いま求められる“効率的”人事給与業務とは?(第1回)

日々激しく変化する、ビジネス社会。企業を取り巻く環境も、厳しさを増して...