トップ自らが面接するベンチャー企業
採用の意思決定は速いはずが……
経営はスピードが重要だといわれる。それは人材採用でも同様だ。優秀な人材はいくつもの企業で奪い合いになるため、のんびりしていると他社に採られてしまう。その点、トップが自ら面接し、採用を即決できるようなベンチャー企業は、有利といえるだろう。ただ、トップは往々にして忙しすぎるため、せっかくの好機を逃してしまうこともある。
最高のマッチング成立か
「うちの採用は一次面接から社長が会いますから、ほぼ即決ですよ。面接した翌日に内定を出して、その翌週から来てもらったこともあります。いい人材がいたら、ぜひご紹介ください」
初訪問時、そう話してくれたのはベンチャー企業・E社の総務マネジャーだった。多くのベンチャー企業がそうであるように、E社の社長も創業者でオーナーだ。業容は急拡大中だが、社員数はまだ多くない。採用担当の総務マネジャーは、面接の日程調整などが主な役割。選考や採用判断はトップに完全に委ねられ、社長自らが全ての候補者を面接して、合否を決定している。
数日後、E社にぜひ紹介したい人材と出会った。ベンチャー企業に興味があるNさんだ。ただし、紹介を急いでほしい事情があるという。
「先週、大手企業の最終面接を受けて結果待ちなんです。ただ、ベンチャーなどの成長企業で働くチャンスがあれば、ぜひチャレンジしたいんです。すぐに結論が出る企業があれば、教えてください」
転職の機会はそうそうあるものではない。できるだけいろいろな可能性を検討してみたいというNさんの気持ちはごく自然なものだ。
「E社はいかがですか。スケジュールが合えば一次面接から社長が会われるそうですよ。トップと直接話ができれば、判断しやすいのではないでしょうか」
「おもしろそうな会社ですね。ぜひ紹介していただけますか」
求人票を見て、Nさんは興味を持ってくれたようだった。こうしてE社でのNさんの面接が行われた。面接の翌日、Nさんに連絡して感触を聞いた。
「おっしゃっていたように、社長に面接していただきました。非常に好印象です。ぜひ話を進めていただきたいと思います」
手応えは良かったようだ。私も「よしっ!」と心の中で思わずガッツポーズをしていた。最高のマッチングになりそうな予感がするが、企業側の評価がわかるのはこれからだ。さっそくE社に、Nさんの反応を伝えた。