無視できない、転職とSNSの付き合い方
将来はさらに役割拡大か
企業と転職希望者を結ぶ人材紹介にとって重要なのは、やはりコミュニケーションだ。かつては電話や郵便が主流だったが、現在ではほとんどメールに置き換わっている。やがては、これが「SNS」へと移行する時代がやってくるのかもしれない。とはいえ、何事もオープンが基本のSNSと秘密保持が不可欠な転職活動との関係には注意が必要だ。不用意な使い方が思いがけない事態を招いてしまうのではという不安はぬぐえない。今はまだ、SNSに関してはあらゆることが模索の段階といえそうだ。
「リア充自慢」は転職に不利?
「人材紹介についてでも、転職活動全般についてでも結構です。何か質問はございますか?」
転職相談の最後はこういった「ご質問をどうぞ」という形で締めることが多い。そこでの質問に時折あるのが、「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)」に関するものだ。転職活動が初めてという人を中心に、近年少しずつ増えてきた印象がある。
「選考の中でフェイスブックなどをチェックされる場合があると聞くんですが、そういったケースは実際に多いんでしょうか。特に注意すべきことはありますか」
こういう質問をする人は基本的にSNSを積極的に使っている人だ。目立った使い方をしていない人の場合は心配のしようがない。何か思い当たるところがあるからこそ気になるのである。 「まず言えるのは、企業側がSNSをチェックしているかどうかはわからない、ということです。SNSに問題があって不採用になったという話は聞いたことがありませんが、だからといって絶対ないともいえません」
一般論しか伝えられないのがもどかしいが、それが正直なところなのだ。そもそも実名で登録され誰でも見ることができるようなSNSはごく限られている。さらに同姓同名の人も多いので、特定が難しい。そう考えるといちいち手間をかけてチェックしている企業はむしろ少数派ではないか、というのが実感である。
「そうなんですか。学生時代にSNSが就活に影響するといった話をよく聞いたものですから」
確かに学生の場合、社会的に問題がある武勇伝をSNSで公開してしまいニュースになったりもする。大学では学生への注意喚起を盛んに行っているのだろう。
「もし実名でSNSをご利用でしたら、注意するのに越したことはないですね。違法行為をアップするのは論外ですし、自社の内部情報の漏えいやライバル会社への誹謗中傷なども問題でしょう。派手な異性関係やトラブルなどをうかがわせる内容も……」
多くの人はSNSを利用しているうちに、「注目されたい」と思うようになる。そのため、つい尾ひれをつけた出来事を書いてしまいがちだ。楽しい飲み会に参加したとか、有名人の誰々に会ったといったたぐいの話である。しかし、いわゆる「リア充自慢」(リアルの生活が充実していることを自慢する)ばかりになると、見た人に「ずいぶん派手な人だな」という印象を与えかねない。
「なるほど。気になるものは削除しておいた方がいいですね」
たいていの人はこのあたりで納得するのだが、問題はインターネットに一度載せた文章や写真は思いがけない形で残ってしまうことがあるということだ。本人が削除したりアカウントにカギをかけても、検索で見えてしまうこともある。日々の注意こそが大切なのだ。