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日本の解雇規制は本当に厳しいのか?
社員が納得する雇用と評価のあり方

日本の解雇規制は本当に厳しいのか? 社員が納得する雇用と評価のあり方

雇用を考える上で切っても切れない「解雇」の問題。昨今、GAFAMをはじめとする大手IT企業による大量解雇がニュースをにぎわせており、多くの人事パーソンがひとごとではないと捉えているのではないでしょうか。また外資系企業は解雇がしやすく、日系企業は解雇のハードルが極めて高いと思われがちですが、本当にそうなのでしょうか。中央大学商学部教授の江口匡太さんは「日本の解雇規制は法律や解雇にまつわる判例、国際機関の調査などを見ても決して厳しくない」と語ります。江口さんに、日本の雇用や評価のあり方を考えるためのヒントをうかがいました。

プロフィール
江口 匡太さん
中央大学 商学部 教授

えぐち・きょうた/1968年生まれ。東京大学経済学部卒業。東京大学大学院経済学研究科経済理論専攻博士課程修了。博士(経済学)。筑波大学システム情報系社会工学域准教授。2013年より現職。主な著書に、『大人になって読む経済学の教科書』(ミネルヴァ書房、2015年)、『解雇規制の法と経済』(共著、日本評論社、2008年)。

日本の解雇規制が“厳しくない”理由

江口さんは、なぜ日本の解雇規制は厳しくないとお考えになっているのでしょうか。

客観的に見て、解雇規制が厳しいという根拠がないからです。

たとえば、解雇規制に関わる労働契約法の第16条の条文では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」となっています。

法律の条文なので堅苦しい印象があり、解雇は簡単にはできないと捉えてしまうかもしれません。しかし「社会通念上、正当な理由があれば解雇はできる」と捉えることもできます。

私は以前、一橋大学の神林龍先生のチームに加わって解雇規制にまつわる法律や経済合理性などについて調査し、それを神林先生が中心になって『解雇規制の法と経済』という書籍にまとめました。その際、解雇をめぐる東京地裁で争われた解雇の裁判について徹底的に調査しました。その結果明らかになったのは、裁判の内容は本当に多様で、労働者の言い分ばかりが認められているわけではなく、認められても企業が支払う解決金はそれほど多くないということです。

そもそも解雇をめぐって裁判になり、判決に至るケースはまれです。ほとんどは裁判以前の話し合いや、法廷で和解します。解雇規制の厳しさは、実際の解決金の額に反映されています。

解決金の額を調べると、相場は中央値で「1ヵ月の賃金の半分×紛争期間」でした。仮に月50万円の賃金を支払っている社員を解雇し、1年間裁判をして和解した場合、企業側が支払う金額は300万円ほどです。もし解雇規制が厳しければ、この金額はもっと大きくなるでしょう。

裁判以外の解決で、「ミニ裁判」と呼ばれる労働審判制度では金額の絶対水準が裁判よりも低くなっています。労働局のあっせんによる解決では、数十万円程度。少なくとも解雇規制が厳しいという割には、大した解決金額ではないのです。

国際的に見ても日本の解雇規制は厳しくありません。OECDが作成している解雇規制の厳しさに関する雇用保護指標(Employment Protection Legislation indicator)では、日本は安定して半分より下位にランクインしています。米国に比べると規制が厳しいように見えますが、多くのヨーロッパ諸国に比べれば厳しくないのです。

江口匡太さん

厳しいイメージにつながる「割増退職金」

それでは、なぜ日本は解雇規制が厳しいというイメージが広まっているのでしょうか。

「円満に解決したい」と考える企業が多かったことと、人員整理による解雇時に支払う割増退職金が、そのような印象を与えているのだと思います。

大企業を中心に、日本の賃金体系は「長期雇用」が前提です。若いうちは賃金を低く抑えられていますが、50歳代ぐらいまでは年数が経つにつれて確実に増えていくのが一般的です。この雇用形態は「暗黙の契約」のようになっています。

しかし賃金が増えていく途中で解雇されたら、後々支払われるはずだった高い賃金は支払われません。企業が経営の状況からリストラせざるを得ないとき、若い世代がそれを見てどう思うかです。今は低い賃金なのに将来も報われないのであれば、モチベーションが下がって離職してしまう人が増えるでしょう。そうすると残って活躍してほしい人材にも悪い印象を与えかねません。

このような事態を恐れて、リストラする際は割増退職金を支払うわけです。特に大企業の人員整理では、場合によっては1年や2年分の賃金に相当する金額を追加して支払うケースもあるほどです。このような対応を見ると、「日本では解雇が厳しい」という印象が広まってもおかしくないと思います。これが、規制そのものは厳しくないのに解雇のハードルが高いと思われる理由の一つではないでしょうか。大企業が現状の雇用関係を維持したいと考えていることが根本にあります。

企業側からすると解雇のハードルが高い、ということですね。最近話題になっている外資系企業の解雇の動きも、企業の事情によるところが大きそうですね。

労使の関係はあくまで民事のビジネス上の契約なのです。外資系金融機関などでは、高い成果を出せば年齢に関係なく高額な賃金が支払われますが、成果をあげなければあっさりと解雇されます。日本の解雇規制が厳しいなら、外資系金融機関のやり方の多くは違法になるはずですが、実際には労使とも納得していて問題になっていません。お互いが同意しているのであれば、現状のルールの下でも基本的に問題は起きないのです。

最近話題になっている巨大IT企業の大量解雇も、米国ではお互いが同意して契約を結ぶことを重視するので、契約の不履行でなければ問題ではありません。ツイッター社の件も、契約を不履行にしたわけではないのです。

日本の場合、長期雇用を暗黙に約束しておいて、途中で解雇するのは「暗黙の契約」の不履行です。「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」必要があるという法律の文言は、暗黙の契約を履行させるための法律上の表現なのだと思います。長期雇用を前提とし、職務や成果に比べて賃金が低く抑えられている場合、何の保障もなく解雇するのは契約の不履行なので問題です。途中で解雇する可能性が高いなら、外資系の企業のような雇用関係にして、若いときから相応の報酬を支払う必要があると思います。

法律で割増退職金の基準を決めるのは難しいのでしょうか。

さまざまな業種や職種があるのに、それらを一緒くたにして基準を設けることは難しいと思います。一律に基準を決めることは必要かもしれませんが、多様な働き方が進む現在では、どのように決めても何らかの不満や批判が出てくるでしょう。解雇時の割増退職金については、賃金体系や解雇対象者の事情なども踏まえながら、労使で折り合いを探すしかないでしょうね。

「決定者不明」というガバナンスの問題

日系企業が、外資系企業のように解決できないのはなぜでしょうか。

日系企業は、個人が意思決定することに躊躇することが多いのでしょう。「組織はガバナンスが大事だ」とよく言われますが、ガバナンスとはつまるところ、誰が決めたのか、個人名をはっきりと特定できることだと思います。どのような状況で、誰に権限があり、いつ決めたのか。外資系企業では明確ですが、日系企業は不明瞭に感じることが多いですね。

解雇は対象者の生活に大きな影響を与えます。だからこそ、誰も責任を取りたくない。その結果、以前話題になった「追い出し部屋」のようなものができてしまうのだと思います。

解雇の理由を言語化して「説明」できるかどうかも重要です。なぜ解雇するのかをきちんと伝えられないようでは、多様性が求められる時代に海外の優秀な人材を招き入れることは、難しいでしょう。

江口匡太さん

「ジョブ型雇用」は企業の雇用を変えるのか

近年、ジョブ型雇用という概念が話題になっていますが、解雇に対して何か影響はあるのでしょうか。

大胆に言ってしまうと、解雇には影響がないと思います。私はジョブ型雇用という言葉自体、ミスリーディングだと感じています。正規の労働者の賃金の多くは、個人の技能や役職などによって決まっています。現在の制度でもジョブ型の報酬の支払いというのは部分的に存在しているのです。

ジョブ型雇用が進んでも、暗黙の長期雇用の仕組みを重視するなら大きな変化はないように思います。結局、企業がどういう人事制度、賃金体系にしたいと思うかです。本当の意味で進めるなら、ジョブの成果基準を明確にし、社員へきちんと言語化して説明できなければなりません。解雇となれば、なおさらです。ジョブ型であろうとなかろうと、多様化、グローバル化を見据えるなら、きちんと説明できる、説明するという姿勢が大切です。

日系企業にとっては、ハードルが高いように感じます。

ただ少しずつ、試行錯誤しながら変わっていくのではないでしょうか。人口が減って働き手も足りなくなる中で、外国人や育児休暇から復帰する女性などに働いてもらうため、長期雇用が前提の今までの評価制度を変えなければならないと考える企業は増えていくでしょう。

社員が納得し、生産性の向上につながるような評価をするには、どうすればいいのでしょうか。

社員一人ひとりに「会社からの本当の評価」を伝えることだと思います。

会社の客観的な評価は、社員の主観的な評価と一致しないことが多いのです。他人の評価は冷静にできても、自己評価は甘くなりがちです。厳しい環境になるかもしれませんが、数字のような客観的な基準で示すのが一番いいでしょう。それも5段階などではなく、100点満点で細かく評価するくらいの取り組みが必要です。

営業のように仕事の成果が数字で明らかになる職種は良さそうですが、バックオフィスなど数字で評価するのが難しい職種もあると思います。

何かしら方法はあるはずです。外国ではきちんと説明できなければ、人種差別のような大きな問題になりかねません。会社が不当な評価をしていると訴えられたら、企業のブランドや評判が毀損されてしまいます。

よく「数字は独り歩きする」と言って、エラーを含む数値で評価すること自体を敬遠する向きもありますが、問題があるなら数値の評価方法を修正し、改善できます。一方、人間の主観的評価は思い込みが邪魔してなかなか修正できません。

そして、評価をきちんと「説明」することも大事です。そもそも、雇用者と被雇用者の利害を一致させるのはほぼ不可能です。合理的に考えれば、雇う側はできるだけお金を払わず、社員にたくさん働いてほしい。一方で、働く側は最小限の労力でお金を得たいわけです。このような利害が対立する中でお互いが納得するためには、伝えることをさぼってはいけません。

近年はAIを活用した人事評価のソリューションも登場しています。このようなソリューションの活用については、どのようにお考えですか。

有効なツールですが、うのみにするのはどうかと思います。聞くところによると、能力の評価をする際に、人間は差別や不利益を被っているマイノリティを救済する方向に修正しますが、AIだとストレートに割り切る評価が出てしまうことがあるそうです。以前、学歴を問わない採用をした結果、かえって有名大学出身者ばかりになったという話がありましたが、それと同じようなことが起きることがあります。ソリューションの癖なども念頭に置きながら、AIが評価を下した原因を考えるべきですし、場合によっては補正する必要もあるでしょう。どちらにしろ、最後は人間が決めるのです。人間が人間を評価するのですから、言語化して説明することは大切だと思います。説明をAIに任せてはだめでしょう。

誰もが納得する「評価制度」の確立を

最後に、読者の方々にメッセージをお願いします。

業界や業種によって状況は異なるので、雇用のあり方は、企業ごとに異なっていいと思います。時代が大きく変わりつつある中、自社にとってどのような雇用制度が最適かを模索し続けることが大切です。数値で客観的な評価をし、きちんと言語化することが採用、昇進、解雇といった人事管理において一層重要になると思います。

解雇や採用に関わる権限を、現場にどの程度移譲できるかもポイントです。現場のことは、現場のリーダーの方がよく分かっています。評価制度にも関わってきますから、現場の声をどれだけ取り込めるかも大切です。

採用では非正規社員の正社員化が論点になっていますが、現場ではその人となりや働きぶり、成果を見る一方で、人事部はどうしても経歴書を重視する傾向にあると思います。経歴書を見て職に就いていない期間などがあると、採用に慎重になってしまうこともあるでしょう。人間だけでなく企業も社歴が長くなると保守的になりがちで、異分子を入れたがらない傾向にあります。このようなことが起きないように、人事部は常に自らを省みる必要があると思います。

新しいビジネスや環境が先にあって、働き方の仕組みが変わっていきます。今後の社会の変化にどのように適応していくか、人事の役割は大きいと思います。

江口匡太さん

(取材:2023年1月23日)

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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この記事ジャンル 解雇

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