外部との交流が仕事の意義を見出し自信へとつながる
石坂産業を地域で愛される会社にした“考える”マネジメントとは
石坂産業株式会社 代表取締役
石坂典子さん
産廃処理と製造が同じ土俵で語れる社会にすることがミッション
産業廃棄物処理業の枠組みを越え、地域社会との共生を図る取り組みにも注力されています。どのような組織をめざしているのでしょうか。
今は社内に向けて、「50年先には、エネルギー供給産業になろう」というメッセージを伝えています。施設にやってきた廃棄物を単に処理するだけでは、未来がありません。廃棄物をリサイクル化するプロセスにおいても、私たちはエネルギーを使っています。施設では振動や騒音、大風が生じていますが、これらの持つエネルギーを発電に使えないかと考えています。人が交わる場面では、「あの人に会えて、元気をもらった」といったことが起こりますよね。つまり私たちも、エネルギーを供給している可能性を秘めているのです。
しかしこの未来のビジョンは、簡単に実現できることではありません。例えば技術開発などは、私たちだけで進めていくことが難しい。すると、ステークホルダーを中心としたパートナーシップが大切になってきます。特に今は、製造業の方たちに向けた環境教育が不可欠だと考えています。なぜなら、世に出回るプロダクトが将来ゴミで終わるのか、それとも資源に生まれ変わるのかは、製造の時点で決まってくるからです。モノづくりと産廃処理は、決して切り離して考えるものではありません。むしろ私たちの未来の仕事は、モノの循環において次のタームのスタート地点になることです。そうでなければ、廃棄物を出さない社会が訪れることはないでしょう。
しかし日本では今のところ、ここまでのレベルで語れるだけの産廃処理や資源保護についての認識が広がっていません。廃棄物に関する教育も、せいぜい小学校の頃に地元の清掃工場を見学したくらいでしょう。その程度では、大人になってモノづくりの仕事に就いたところで、廃棄物のことまで考えは及ばないはずです。そのためにも、まずは廃棄物に対する世間のイメージを変えなければいけません。
結局、仕事の価値とは、自分次第で変わって来るものです。産廃処理は、本当に大変な仕事です。ところが“ゴミ屋さん”という世間の見方に合わせて、自分の仕事を「つまらない」と思ってしまう人もいます。私は、そうやって仕事の価値を自分自身で決めつけてしまうな、と言いたい。私たちの仕事に対する価値を変えていく、つまり産廃処理と製造が同じ土俵で語られるようにすることがこれからの使命だと思います。このような意義のある仕事に携わっていることは、社員のやりがいにもつながってくるはず。今の石坂産業は、社会に貢献できる企業体としてのメンバーシップを強めていく時期にあると考えています。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。