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事故・機密漏洩等への対応は?
「インターンシップ」導入の際の法的留意点と企業のリスク管理

ロア・ユナイテッド法律事務所 弁護士

竹花 元

3. 企業のリスク管理

インターンシップに関連する事故としては、(1)企業側の過失等による学生の不利益、(2)学生の過失等による企業の不利益等が想定されます。以下、具体的な対策を検討します。

1. インターンシップ生に事故が生じたら

労中の事故へのリスクを完全に回避したいのであれば、研修をしないか、文字通り座学の一般研修にとどめるべきでしょう。しかし、それでは、インターンシッ プの趣旨である実地体験の機能を喪失させてしまうことになります。そうであるならば、むしろ、積極的にアルバイト労働契約を結び、賃金を支払って、労災保 険の適用を求め、さらには、上積み補償(民間の保険による)での対応をすることも検討に値します。

また、学校の正課または課外活動としての実習の場合には、学生教育研究災害傷害保険(任意加入)の適用対象になります。学校が関与していない場合については、企業等または学生個人が一般の傷害保険等で個別に措置する方法があります。

いずれにせよ、万一の事故の場合に学生個人や学校、受入れ先企業等の負担をできる限り軽減するため、保険へ加入しリスクに対する備えを十分にしておくことが必要です。

この点、厚生労働省が募集しているインターンシップにおいても、「受入に際しては、災害傷害保険、賠償責任保険に加入していることを条件とします」と明記していることも参考になります( http://www.mhlw.go.jp/general/saiyo/internship.html )。

2. 企業に損害が生じたら

また、インターンシップの普及に伴い、学生が事故に遭うにとどまらず、学生による企業に対する損害(機器・ソフトの損壊、機密漏洩等)等が発生するリスクも増加しています。

企業に損害が生じたら(「インターンシップ」導入の際の法的留意点と企業のリスク管理)

学生の過失により企業に生じた損害は、本来は学生が企業に対して賠償すべきものです。しかしながら、企業に 生じる損害は甚大で、学生が損害を賠償することが不可能な場合が多いのが実情ではないでしょうか。このようなリスクがインターンシップの普及に対して萎縮 的な効果を及ぼすことも懸念されます。

そこで、学生は、企業に生じさせた損害をカバーする保険へ加入しておくべきです。これらの対応方針等については、学校・学生・受入れ先の3者間で、保険への加入状況などを、できる限り文書等により明確化しておくことが望ましいです。

3. まとめ

以上、上記1と2のリスクに対応するためには、学生または大学等に対して、保険への加入を要請することは必須で、企業としては、図1のような書面を大学等 から提出されることを検討するべきです。また、大学等が関与しないインターンシップでは、学生の保険加入状況が不明なことも多くあります。その場合は大学 または企業は、学生本人に対し、こうしたリスクに関する意識の喚起を図るとともに、加入手続きを督励することが求められます。

さらには、企業秘密や個人情報の漏洩を防止するためには、図2のような誓約書を学生に提出させるべきです。

4. セクハラ等の防止

短期間のインターンシップとはいえ、社員からインターンシップ生に対するセクハラにも注意すべきです。インターンシップ生に対する言動もセクハラに当たりうることは周知徹底させる必要があります。

仮に、セクハラが発生した場合は、企業は、学校や社会からの信頼を失い、企業秩序は大きく乱れます。行為者 に対して懲戒処分を行う必要が生じる場合もあるでしょう(なお、裁判所は一般的に、研修生に対するセクハラについては、行為者に対する厳しい処分を認める 傾向にあります(東京都教委(新宿山吹高校)事件・東京地判平成12・5・31労判796号84頁)。

5. 契約書式例

インターンシップの契約書例は図3を参照してください。

『ビジネスガイド』は、昭和40年5月創刊の労働・社会保険の官庁手続、人事労務の法律実務を中心とした月刊誌(毎月10日発売)です。企業の総務・人事・労務担当者や社会保険労務士等を読者対象とし、労基法・労災保険・雇用保険・健康保険・公的年金にまつわる手続実務、助成金の改正内容と申請手続、法改正に対応した就業規則の見直し方、労働関係裁判例の実務への影響、人事・賃金制度の構築等について、最新かつ正確な情報をもとに解説しています。ここでは、同誌のご協力により、2011年1月号の記事「『インターンシップ』導入の際の法的留意点と企業のリスク管理」を掲載します。『ビジネスガイド』の詳細は日本法令ホームページへ。

たけはな・はじめ ● 長野県上田市出身。平成18年早稲田大学法学部卒業、平成20年上智大学法科大学院卒業、同年司法試験合格、平成21年ロア・ユナイテッド法律事務所入所。主な著書に『人材サービスの実務』(第一法規、共著)、主な論文に「刑事事件で起訴された社員を一方的に『起訴休職』にできるか」(労政時報3781号134頁)等多数。

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