突然の申入れにどう対応するか?
合同労組からの団交申入れのパターン&基本的対応法
弁護士
山田 洋嗣
4. 日時・場所の指定
合同労組からの団交申入れにあたっては、その日時が一方的に指定され、しかも、申入日からわずか数日後が指定されている場合が実務上多数見られます。場所についても組合事務所または会社内と指定されていることが多くあります。
しかし、これをそのまま受諾してしまった場合は、事前準備不足のままでの団体交渉を余儀なくされたり、極め て長時間にわたる団体交渉を事実上強制されたり(ひどいケースだと軟禁状態で数時間にわたり交渉を余儀なくされるケースもある)、会社業務ないし施設管理 上の支障を甘受せざるを得なくなったりと、多数の不利益を被ることがあり得ます。
当然ですが、団体交渉の日時・場所については、組合側が一方的に決定できる事項ではありません。
したがって、上記のような場合、会社としては、書面(口頭ではなく書面でのやり取りを申し入れる必要もあります)により事前協議を行ったうえで、双方納得できる日時・場所を決定する必要があろうかと思います。
実務上は、複数回の書面のやりとりを通じて、日時・場所の調整を行った後、双方の都合の付く日時に、双方の中間距離にある貸会議室等を協議に必要な合理的時間借りて、団体交渉を実施する場合が多いのではないかと思います。
会社側としては、上記日時・場所の調整と並行して、できる限り早期に労働法に詳しい弁護士等によるアドバイスを受け、団体交渉の実施に向けた準備に着手すると良いでしょう。
5. 参加者・人数
合同労組からの団交申入書には、組合側の参加人数が明記されていない場合が多数あります。
しかし、これをそのまま、受諾する場合は、同業他社の労働者を含む多人数の出席を許し、妥結に向けた平穏な 話合いが困難になる危険があります。実例としては、弁護士が関与する以前の団体交渉において、定員10名程度の会議室に数十名の組合側出席者が参加して、 一方的に組合側の要求を連呼し、使用者側出席者が恐怖を覚え、退席しようとしても出入り口付近に多数の組合側出席者が立ちふさがり、退席できなかったとい う事案があります。
したがって、この点についても上記・と同様、書面により事前協議を行い、団交事項について、「妥結に向けた平穏な話合いを行う」という団体交渉の目的との関係で合理的な人数に絞った開催を求める必要があります。
実務上、この点についての協議は団交の日時・場所の設定と同時に行われる場合が多いため、貸会議室等での開催としたうえで、借りる会議室の広さ等の問題と絡めて事前協議を行い、参加人数確定後必要な広さの会議室を借りると良いでしょう。
6. 回答期限
合同労組からの団交申入書には、それに対する回答期限を、一方的に、わずか数日後に設定するものが多々見られます。
しかし、そのような一方的な期限の設定に法的拘束力はなく、合同労組からの団交申入れに対して、使用者が検討・準備すべきことは多数ありますので、それを甘受する必要はありません。
もっとも、合同労組の指定する回答期限までに何らの連絡も行わない場合は、合同労組が、組合活動と称して、面 会強要・ビラ配布・街宣車による街宣活動等を行うなど、不測のトラブルが生じる可能性がありますので、回答期限までに、回答猶予を求める旨の連絡文書を送 付する、具体的には、「○月○日までに回答をするように、とのことでしたが、当社業務多忙のため、未だ社内での検討ができておりません。○月○日までに回 答いたしますので、今しばらくお待ちください」等記載した文書を送付する等の対応は必要です。そして、自己が設定した回答期限までに、労働法に詳しい弁護 士等への相談等を実施すると良いでしょう。
やまだ・ようじ●山田洋嗣法律事務所 所長。平成10年同志社大学法学部卒業。同11年司法試験合格。同13年弁護士登録。経営法曹会議会員。労働事件(使用者側)を中核業務とし、その他会社法、独占禁止法・下請法に関する法律事務等を重点取扱分野とする。弁護士会、税理士会、社会保険労務士会等での使用者側の労働法対応に関する講演多数。
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