企業の時短はどこまで進んだ?休日は増えた?
「労働時間」と「休日日数」の最新実態
日本の企業の問題点として、しばしば指摘されるのが、「労働時間が長い」ということです。労働基準法で「使用者は労働者に休憩時間を除き1週間について週40時間を超えて労働させてはならない」と週40時間制が謳われ、また「年間労働時間は1800時間」との目標を含む時短促進法も制定されましたが(同法は2006年3月に期限切れ)、今、企業の労働時間の実態はどうなっているのでしょうか? 年間休日の日数はどれくらいあるのか――主要企業と中堅・中小企業の2004年度の労働時間と休日について、労務行政研究所の調査結果をもとに探ってみます(注参照)。
主要企業の年間労働時間は1897時間12分、年間休日は119.9日
ここでは、調査対象の企業について、(1)主要企業(2)中堅・中小企業の2つに分けます。主要企業とは、全国証券市場の上場企業および店頭登録企業と、それに匹敵する非上場企業(資本金5億円以上で従業員500人以上)の会社です。一方、中堅・中小企業は先の主要企業以外の非上場企業で従業員100人以上の会社です。
では、表(1)(2)(3)をごらんください。
これらは、主要企業の労働時間と休日日数をまとめたものですが、2004年度の各企業の本社における1日当たりの所定労働時間(休憩時間を除く)は平均7時間45分。休日日数は年間119.9日となっています。
年間の所定労働時間は1897時間12分。これを基に、1ヶ月当たり(12分の1)と1週当たり(52分の1)の労働時間を単純計算すると、それぞれ158時間6分、36時間29分となります。労働基準法の週40時間制はクリアしています。
1000人以上と1000人未満の企業を比較してみると、前者のほうが年間の労働時間が短く、逆に休日は多くなっています。1000人未満の企業では年間労働時間が1900時間を超えているのに対して、1000人以上規模では1800時間台で、休日日数でも2日以上の差があります。
「週40時間制」へ完全に移行して時短の取り組みも一段落?
労務行政研究所では1975年度から同様の年間労働時間の調査を行っています。その推移を見ると、労働時間短縮に向けた労使の取り組みは1990年代初頭まではバブル経済の好況にも支えられて積極的に行われ、「時短元年」と言われる89年度には一挙に20時間も短縮されました。その後も徐々に時短は進み、93年度には1899時間5分と調査開始以来初めて1900時間を切りました。そして2000年度以降、年間労働時間は1900時間前後を推移しています。週40時間制へ完全に移行し、時短も一段落したと言えるかもしれません。
休日の日数についても75年度から同様の調査を行っていますが、その75年度の年間休日は98日と、100日を切っていました。しかし、その後、週休2日制の定着を背景に休日日数は着実に増加し、97年度には120日に達しました。95年度以降は119から120日台で推移しており、大きな変動は見られません。1年間のうち、ほぼ3分の1が休日となる計算です。
主要企業に比べて年間休日が2.1日少ない中堅・中小企業
主要企業の年間労働時間は1890~1900時間台、休日の日数は120日前後ですが、では、中堅・中小企業はどうでしょうか。
表(4)(5)(6)をごらんください。
従業員100人以上の中堅・中小企業における所定労働時間は、1日7時間39分、年間1888時間1分です。年間休日の日数は117.8日。表(1)(2)(3)に見た主要企業に比べると、年間労働時間は約9時間短く、年間休日は2.1日少ない結果となっています。
産業別に見ると、製造業が年間所定労働1922時間9分、年間休日117.6日。一方、非製造業は同1855時間37分、同118.0日です。年間休日についてはほとんど差がないものの、年間所定労働時間では工場部門を持つ製造業のほうが66時間も長くなっています。
なお、労務行政研究所の5年前の同じ調査の結果と比べると、年間所定労働時間は約6時間増加し、休日の日数は1.1日減少しています。
注)
* ここでは、労務行政研究所が2004年6月9日から7月28日まで「2004年度労働時間・休日・休暇等に関する実態調査」と題して行った独自調査に関する結果を基に、「日本の人事部」編集部が記事を作成しました。同調査の内容については、『労政時報』第3640号(2004年10月22日発行)に掲載されています。
* 同調査の対象は、全国証券市場の上場企業および店頭登録企業3627社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上)360社の「主要企業」3987社。同時に、それ以外で抽出した非上場企業(従業員100人以上)の「中堅・中小企業」2339社。
* 表(1)~(6)は、労務行政研究所の調査結果をもとに「日本の人事部」編集部が作成しました。
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