第二回 副業の実態・意識に関する定量調査
株式会社パーソル総合研究所
調査名 | 第二回 副業の実態・意識に関する定量調査 |
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調査内容 |
■副業に関する企業、個人の実態や意識を明らかにする。 ■副業による本業へのプラスの還元を高める要因、過重労働リスクを高める要因などを明らかにする。 ■企業の副業者(他社で雇用されている人材)の受け入れの実態、受入れ意向を明らかにする。 |
調査対象 |
【企業調査】 勤務先従業員人数10人以上、年齢70歳未満 男女 経営層・人事(主任・リーダー以上)で人事管理(制度設計・運用等)について把握している者 n=1,500 【個人調査】 ■スクリーニング対象者 勤務先従業員人数10人以上 正社員20-59歳 男女 n=34,824 ※調査結果の数値は平成27年国勢調査の正規の職員・従業員性年代の構成比に合わせてウェイトバック集計実施 ■本調査対象者 上記スクリーニング対象者条件に加え、副業(現金収入を伴う仕事)を現在行っている者(1ヵ月間で稼働0時間は除外) n=1,703 |
調査時期 | 2021年3月4日-8日 |
調査方法 | 調査モニターを用いたインターネット定量調査 |
調査実施主体 | 株式会社パーソル総合研究所 |
※報告書内の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも 100%とならない場合がある
調査結果(サマリ)
副業の実態(企業)
企業における正社員の副業容認率は55.0%、2018年より3.8pt上昇
企業における副業容認の実態について、企業の人事関係者に聞いたところ、「条件付き」も含めると55.0%の企業が副業を容認していることが分かった。2018年に当社が実施した副業に関する調査(以降、前回調査)の結果と比べると、副業を容認する割合は3.8pt上昇している。
副業容認の理由は、「禁止するべきものではない」が5.6pt増加
企業が従業員の副業を容認する理由は何だろうか。最も多かったのは「従業員の収入補填のため」(34.3%)であった。なお、2位に挙がっている「禁止するべきものではないので」は、前回調査と比べると大きく増加(図2右)。2018年当時と比べると、企業において副業が一般的なものとして認識されつつある様子がうかがえる。
他社で雇用されている人材の副業受け入れに前向きな企業は47.8%
副業容認拡大の動きに伴い、自社の従業員の副業容認だけでなく、他社で雇用されている人の副業を受け入れる例も散見されるようになっている。こうした受け入れ状況について聞いたところ、現在既に受け入れているという企業は23.9%、今後受け入れ意向がある企業を含めると47.8%が副業者受け入れに前向きであった。
また、副業者の受け入れ理由は、全体では「多様な人材確保が可能だから」が26.4%で最多。企業規模別に見ると、大企業では「新規事業の立ち上げ/推進のため」や「新たな知識・経営資源の獲得が可能だから」、「オープンイノベーションの促進」などといった新規事業やイノベーション創発の目的が多い傾向にあった。
副業の実態(副業者個人)
現在副業をしている正社員は9.3%、2018年より1.6pt減少
一方で、副業をしている個人に目を向けてみると、副業を「現在している」人は9.3%。前回調査に比べると、1.6ptの減少となった。企業における副業の容認自体は進んでいるが、実際に副業を行う人の割合はほぼ横ばいである。
現在副業していないが副業意向がある人は40.2%、2018年からほぼ変化なし
また、現在は副業をしていないが副業をしたいと思っている人は40.2%と、こちらも前回調査から大きな変化は見られなかった。ただし、年収別に副業の実施状況と意向を見ると、年収1,500万円以上の高所得層で副業の実施率が高く、反対に副業意向は低所得層になるほど多い傾向が見られた。副業の希望と実態にはギャップがあるようだ。
動機の1位は「収入補填」。ただし、職種によって動機に特徴的な違い
副業をしたいと思う動機を6つに分類し(図7)、相対的に比較して見ると、最も高い動機は「収入補填」であった。ただし、副業動機の傾向は、図8のように本業の職種によって違いが見られる。例えば、本業が「営業」の場合、「収入補填」や「継続就業不安」が動機として高い傾向にあるのに対し、「商品開発」では「スキルアップ」や「本業への不満」などが高い。さらに、副業として選ぶ職種についても、本業との関係は意識せず様々な職種に分散する場合と、本業とまったく同じ、もしくは近い職種を選ぶ場合に傾向が分かれていた。
副業による本業へのプラスの効果
副業者の3~4割が、副業をしたことで本業にプラスの変化があったことを実感
本業や副業の職種に関係なく、副業者に対し、副業をしたことによって本業にプラスになるような変化(本業への還元)があったかを聞いた結果が図9である。本業や副業の職種に関係な「本業に役立つスキル・知識が身についた」「問題に対して、創造的な解決方法を思いつくようになった」などスキル・知識面の変化は3割前後の副業者が実感。「視野が拡大した」「新しいことを取り入れることに抵抗がなくなった」などマインドセット面の変化は3~4割の副業者が実感している。
なお、これら副業をしたことによって感じている「本業にプラスになるような変化」は、実際に本業におけるワーク・エンゲイジメントやパフォーマンスと正の相関関係があることも確認できている。
本業へのプラスの効果によりつながる副業の特徴と、職場支援の在り方
それでは、どのような副業であれば、本業へのプラスの効果につながりやすいのだろうか。その要因を探るため、「副業動機」「副業の仕事特性」「副業における意識」「上司のマネジメント行動」「職場の支援体制」について重回帰分析を実施した。その分析結果をまとめたものが、図11である。
副業動機については、「スキルアップ・活動の場の拡大」「自己実現」といったポジティブな動機の場合、本業へのプラスの効果を高めていた。また、「なりゆき・頼まれ副業」も本業へのプラスの効果を高めていたが、これは同時に過重労働リスクにもつながることも分かっているため注意が必要だ。
副業の仕事特性(内容)については、成長実感や社会貢献実感がある仕事内容の場合に、本業へのプラスの効果が高まることが分かった。また、本業のスキルを活かせる仕事である場合も本業へのプラスの効果は高い。本業への仕事が副業に役立ち、さらにまた本業での貢献に役立つという好循環が回っているようだ。
職場の支援や上司のマネジメントについては、次の図12に示す通り、「副業の労働時間の把握」「定期的な面談・ヒアリング」などの職場支援や、「副業についてのアドバイス」「副業に対する肯定的な評価」といった上司の副業に対する肯定的な態度が本業へのプラスの効果を高めていた。副業者の本業へのプラス効果度合いは、職場や上司の支援次第という側面もあるのだ。
過重労働リスクにつながりにくい副業の特徴と、職場支援の在り方
一方で、副業容認においてしばしば浮上する過重労働の懸念について、リスクにつながらない副業の在り方についても、本業および副業の「働き方・労働量」に注目し、重回帰分析を試みた。
その結果をまとめたものが図13、図14だ。まず、「本業の残業時間の長さ」や「副業の平日(本業勤務日)の労働時間の長さ」が過重労働リスクを高める要因になっていることが分かった。また、副業の報酬体系が労働時間報酬型よりも成果報酬型のほうが、過重労働リスクが高い。さらに、本業や副業において、時間の自由度・柔軟性が高い場合にも、過重労働リスクが高まる傾向が見られた。
転職につながりにくい副業の特徴と、職場支援の在り方
最後に、副業をきっかけとした転職など人材流出リスクへの影響も確認しておきたい。副業動機が「収入補填」や「本業への不安」、「現職の継続就業不安」であるなど、現職に対する不安・不満がきっかけで副業を始めている層は、副業によって転職意向が高まりやすい。また、副業開始後に、上司とのコミュニケーションが減少したり、責任のある仕事を任せてもらえなくなったと感じたりするようなケースにおいても転職意向が高まるため、部下に副業者を持つ上司は対応に注意する必要があるだろう。
分析コメント
モデル就業規則の改定から3年経ち、企業の間では副業の容認が少しずつ広がりを見せているが、実際に副業を行っている正社員の割合は約10%とほぼ横ばいとなった。副業者の増加には歯止めがかかっていると考えられる。その要因のひとつとして考えられるのがコロナ禍の影響である。飲食業の休業や営業時間短縮などにより、パート・アルバイトで働く副業者の受け皿が減少したことが推察される。
また、データからは、副業を望むのは一般的な会社員に多いが、企業側のニーズが高いのは高スキル人材であり、結果として高スキル人材に副業実施者が多いという実態が垣間見えた。個人にとって、副業は多様な経験を積みスキルアップできるひとつの有効な機会ともいえる。中長期的なキャリア形成につながる副業を行うためにも、さまざまな副業に目を向け、必要があれば新たなスキルを獲得していくなどの積極的な姿勢を持つことが求められるだろう。
一方、スキルアップや活躍の場の拡大を目的とするような従業員の副業は、本業へのプラスの効果も高く、職場や上司が副業への肯定的な態度を示すことで効果が促進されることが分かった。また、副業の働き方や、副業者に対する上司のコミュニケーション、アサインメントが、副業者の過重労働や人材流出のリスク低減に影響していることも見えてきた。企業側は、こうした点を意識し、組織マネジメントの在り方を見直すことで、従業員の副業に対し、本業へのプラスの効果を得ながら過重労働や人材流出のリスクを低減することができるのではないだろうか。
※本調査を引用いただく際は出所を明示してください。
出所の記載例:パーソル総合研究所「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」
調査報告書(全文)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/research/assets/sidejob02.pdf
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