パートが定着する上司、定着しない上司
アイデム人と仕事研究所 研究員
古橋孝美
採用が難しいならば、“定着”をめざす
8月の求人倍率は1.52倍。43年5ヵ月ぶりの高水準を記録した7月から横ばいと、引き続き高くなっています。そのような中で聞こえてくるのは、やはり「人が採れない……」という声。労働条件の見直しや採用手法の工夫が欠かせない状況となっています。また、そのような状況下では、退職させないという視点も重要です。“採用”という入口から人が入ってこないのであれば、出口つまり“退職”を防ぐ=定着させることで、企業内の人員を維持していくのです。
先日、弊社が発表した『パートタイマー白書』の最新版では、パート・アルバイトの“定着”についてまとめています。まず、“定着”に関する考え方を見ていきましょう。調査対象となった企業の、実に95.1%が、パート・アルバイトに対して「同じ人にできるだけ長く働いてほしい(どちらかと言えばも含む/以下同)」と希望していました。一方、パート・アルバイトのうち、「現在の勤務先にで、できるだけ長く勤めたい(どちらかと言えば含む/以下同)」と考えている者は、全体で60.9%。半分強のパート・アルバイトしか長期勤続を希望していないという、企業側にとっては厳しい結果です。
上司への“信頼感”は定着のカギ
では、どうすれば、パート・アルバイトに長く働いてもらえるのか。パート・アルバイトの長期勤続意向を“上司への信頼感”というキーワードで見てみると、違いが表れてきます。上司に信頼感を「持っている(どちらかと言えばも含む/以下同)」パート・アルバイトは、「現在の勤務先で、できるだけ長く勤めたい」と考えている者が70.2%に上ります。一方で、上司への信頼感を「持っていない(どちらかと言えばも含む/以下同)」パート・アルバイトでは、「現在の勤務先で、できるだけ長く勤めたい」が42.8%に留まっており、信頼感のある上司の下で働くことは、「この会社で働き続けたい」という思いに繋がっているようです。
「この会社で働き続けたい」という意識に、上司への信頼感が影響していましたが、では、そもそもパート・アルバイトはどんなときに上司へ信頼感を持つのでしょうか。結果は、以下のようになりました。
1位「必要なときに助言や手助けをしてくれる」57.5%
2位「業務における指示や判断が的確である」55.9%
3位「挨拶や会話など、日頃から積極的にコミュニケーションをとっている」52.9%
見てみれば“当たり前のこと”のようですが、それこそが“大事なこと”なのです。反対に、上司への信頼感が損なわれる場面は、以下のようになっています。
1位「人によって違った対応をする」59.3%
2位「言うことと行うことが一致していない」57.0%
3位「業務における指示や判断が的確でない」49.2%
こちらも、ビジネスパーソンからすれば配慮すべき“当たり前のこと”が並んでいます。ただ、時間をかけて上司と部下の信頼感を築いても、崩れるのは一瞬、ほんの些細なことからです。パート・アルバイトは、仕事やメンバーに対する上司の“誠実な姿勢”を見ているのです。
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。