平成29年度最低賃金、今年も大幅な引上げ~改定の影響は?
最低賃金の影響が大きい職種(業界)
同じ埼玉県で、清掃作業員のデータを見てみましょう。
■図3 募集時賃金額の推移(平成21年1月~平成29年4月)
平成21年当時は、25%ile値が800円、50%ile値は850円未満で推移しており、最低賃金と平均的な賃金額とは100円程度の開きがありました。募集時の賃金と最低賃金額にある程度の開きがある場合は、最低賃金に連動した賃金の上昇は見られません。この状況は、平成26年まで続いています。
しかし、平成26年10月に最低賃金が802円に改定されると、それまでの25%ile値800円を最低賃金が上回り、賃上げをせざるを得ない企業が多くなり始めます(いわば、25%の企業は最低賃金に抵触することになるわけですから)。
そのような状況になると、平均値がじわじわと上昇し始めます。平成21年から平成26年9月まで5年間の賃金上昇率は836円から863円に上昇し約3.2%。平成26年9月から平成29年4月の上昇率は863円から899円に上昇し約4.2%。2年半で過去5年間の上昇を上回る結果となりました。
また一方、募集時賃金の分布において上位層といえる75%ile値の賃金額は、平成24年頃から900円となっていて、ほとんど変化がありません。下位層である25%ile値とは100円程度の開きがありましたが、その幅は縮小を続け、50円程度まで圧縮されています。競合他社との間で、募集の賃金額によって差別化が難しい状況になってきています。
職種(業界)によっては、清掃作業のように現場単位で業務を請け負い、受注金額の範囲内で賃金を決定せざるを得ない場合もあると想像されます。おのずと賃金の額にも支払える限界があり、採用現場の厳しさが増している様子をうかがい知ることができます。
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