イマドキの若年労働者の就労意識
岸川 宏(きしかわ・ひろし)
社会が成熟すると若者の成人への移行が緩やかになり、社会的な自立が遅れると言われています。「多くのモノを望まなければ、それなり暮らしていける」「親の庇護のもと一定期間暮らしていける」そんな環境は、“あくせく働なくても、暮らせればいい”という価値観・ひとつの生き方として、より多くの若者に支持されるようになって来たような気がします。
若者にキャリア教育を積極的に行うことも重要なことだと思います。
その一方で、企業においても、その多様な価値観に応える働き方を用意することが必須条件になって来ているのではないでしょうか。今後も続くであろう人材不足を解消していくには、新しい労働力の掘り起こしは必須のものです。
もともと、日本企業は、新卒一括採用を行い、長期雇用を前提に、職能資格制度によって自社の社員を育成してきました。今後は、社内で活躍・成長する人材を育成するための働き方は、無限定に働ける従来型の正社員である必要はないかもしれません。
我々の調査では、「仕事を通じたキャリア形成に対して前向きな姿勢を持っている若者が多い」と言う結果も出ています。
「働き方」への多様な価値観と、「キャリア形成」に対する価値観を分けて考え、組み合わせを行うことで、新しい労働力の確保にもつながっていくのではないでしょうか。
以下の調査結果から確認してみましょう。
働き方の志向
自身の“働き方”についての考えを大きく分けて2つのタイプに分類し、どちらに近いのかを聞いてみた。
○しっかり働きたい:「自分のやりたい仕事」や「高い収入の仕事」であれば、大変な仕事(労働時間が長い、責任が重い、難易度が高い、体力をつかう等)であっても構わない
○そこそこ働ければよい:「仕事」や「収入」に強いこだわりはないので、あえて大変な仕事(労働時間が長い、責任が重い、難易度が高い、体力をつかう等)をしたいとは思わない
結果は、
【A】初職が非正規(正規雇用経験なし)の者は「そこそこ働きたい派」41.4%
【B】初職が非正規(正規雇用経験あり)の者は「そこそこ働きたい派」34.7%
【C】初職から現在まで正規雇用のみの者は「そこそこ働きたい派」29.1%
正規雇用経験が少ない者の方が「そこそこ」で良いという傾向となっている。さらにその理由について聞いてみると、最も多かったのは「趣味など働くことよりもやりたいことがあるから」で32.4%だった。次いで、「頑張って働いても、それに見合うお金は得られないから」25.8%、「そこまで働かなくても、生活に困らないから」21.3%と続いている
正社員での就労意向
現在非正規雇用で働いている者に、将来的に正規雇用で働きたいかを聞いた。「働きたい」59.9%、「働きたくない」11.6%、「わからない」28.5%と、約6割が「働きたい」という意向を持っていることが明らかになった。しかし、これを“働き方の志向別”で見ると、「しっかり働きたい派」のうち、正規雇用で「働きたい」者は74.8%に上る一方、「そこそこ働ければよい派」では46.4%に留まり、その差は30ポイント近く開いている。
将来的に正規雇用で「働きたくない」と回答した者に対し、その理由を聞くと、「労働時間や休日の融通が利かないから」49.4%、「労働時間が長時間だから」42.9%、「仕事の責任が重いから」41.6%が上位となり、拘束されることや責任を負うことに対して否定的な考えを持っていることがうかがえる。
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