公開シンポジウム
「学ぶ意欲、働く意欲、明日への意欲」
~ モチベーションの探究と実践へのアプローチ
2011年6月18日(土)に、学校法人三幸学園 東京未来大学が主催する、公開シンポジウム「学ぶ意欲、働く意欲、明日への意欲~モチベーションの探究と実践へのアプローチ」が開催されました。
同大学では2012年4月に、「モチベーション行動科学部」を設置予定。やる気や意欲を高め、人を元気にする「モチベーション」について、理論と実践を踏まえて体系的に学ぶことができる、これまでに類を見ない学部ということもあり、大きな注目を集めています。
今回のシンポジウムでは、さまざまな分野の第一線で活躍するパネリストが参加し、教育心理学、経営学、社会心理学、組織心理学、ビジネスなど、それぞれの視点から、モチベーションについて熱く語りました。本レポートでは、シンポジウムの模様をダイジェストでご報告します。
主催 | 学校法人三幸学園 東京未来大学 |
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日時 | 2011年6月18日(土)13時~16時30分 |
場所 | 日経ホール |
パネリスト |
教育心理学・市川伸一 教授 / 東京大学大学院教育学研究科 経営学・金井壽宏 教授 / 神戸大学大学院経営学研究科 社会心理学・大坊郁夫 教授 / 大阪大学大学院人間科学研究科 ビジネス・小笹芳央 代表取締役社長 / 株式会社リンクアンドモチベーション |
司会・進行 | 角山 剛 教授 / 東京国際大学人間社会学部・大学院社会研究科 |
それぞれの視点から語る「モチベーション」
三幸学園理事長の鳥居秀光氏のご挨拶で幕を開けた、本シンポジウム。開始時には約600席の客席はほぼ満員になり、同大学のモチベーション行動科学部への関心の高さがうかがえました。
まず第1部では、4名のパネリストが、自身の専門分野における、それぞれのモチベーション論を展開しました。市川伸一教授は「学ぶ意欲をどのようにとらえ、教育場面で生かすことができるか」というタイトルで、教育心理学の視点から。金井壽宏教授は「リーダーは自分の仕事欲と、周りの人の仕事欲に、どのように影響を与えることができるか」とういうタイトルで、経営学の実践的視点から。大坊郁夫教授は「明日に向かう積極的な意欲を探る上でポジティブ心理学の役割」というタイトルで、社会心理学の視点から。そして、小笹芳央氏は「モチベーションがビジネスとして成立した背景」というタイトルで、ビジネスの視点から。各分野の第一線で活躍する方々の熱い講演に、観客の皆さんは熱心に耳を傾けていました。
どの講演も大変興味深い内容でしたが、その中からごく一部をご紹介します。まずは、人事ご担当者の皆さまにはおなじみの、金井壽宏教授のお話から。例えば入学や就職、転職など、人が自分のキャリアの中での「節目」を迎えたとき、心の中には「新しい環境でどんなことをするか」という「希望」と、「未知の世界でやっていけるのか」という「不安」が同時に発生しますが、その両方がモチベーションに繋がるとのこと。「希望」がモチベーションに繋がるのは当然ですが、「不安」も人に「このままでは不都合がある」と考えさせ、行動へと促していくそうです。つまり、「欠乏」や「未達成」は、マイナスイメージの言葉ではありますが、人を動かす動機付けとなるのです。「希望」と「不安」がモチベーションにおいては同根であるという考え方は、聴講者の皆さんに、多くの「気づき」を与えたのではないでしょうか。
小笹芳央氏は、「モチベーション」をビジネスとして展開し、成功してきたポイントについて詳しく講演されました。当然、企業と接する機会も多い訳ですが、モチベーションの低い会社には、ある特長があるそうです。それは、「経営陣への不信感がある」「理想の上司がいない」「会社のビジョンが不鮮明」「待遇が期待を著しく下回る」など。また、これらの問題は、社内の「コミュニケーション不全」が原因だと分析されていました。コミュニケーション不全は、まさに近年の日本の職場での大きな問題。特に人事ご担当者や経営者の方々は、この問題を改善していくことの重要性を、改めて認識されたことでしょう。
パネルセッションでは、それぞれの考えがより鮮明に
続く第2部は、東京国際大学の角山剛教授が司会者となり、パネリスト4名によるパネルセッションを実施。パネリスト同士が意見を交換したり、質問しあったりすることで、それぞれの専門分野や考え方がより鮮明になり、短い時間ではありましたが、大変な盛り上がりとなりました。特に、モチベーションに関する「内発的要因」「外発的要因」に関するパネリスト同士の意見交換は、非常に興味深いものでした。
「モチベーション」について徹底的に考え、議論した今回のシンポジウム。参加された方たちの多くは、きっと新たな「学び」を得ることができたことでしょう。最後は、主催者の東京未来大学学長坂元昴氏によるご挨拶で終了しました。
東京未来大学のモチベーション行動科学部は、「やる気を科学する」という、これまでにないユニークな学びを提供する注目の学部。企業にとって、従業員のモチベーション向上は重要課題の一つであり、同学部の今後の展開は、ビジネス界からも大きな注目を集めることになりそうです。
なお、本コーナーでは、シンポジウムの内容のごく一部をレポートいたしましたが、東京未来大学では、シンポジウムの内容をまとめた小冊子を、郵送にてお送りしています。詳しくは下記をご覧ください。