イベントレポート

【特別企画】新たな学びの場つくりのユニット
『アトリエMALLプロジェクト』を密着取材 <最終回>
[ 取材・レポート ] 一般社団法人経営学習研究所 理事 板谷和代(2015/3/31掲載)

『アトリエMALLプロジェクト』は、自ら手を上げて集まった見ず知らずの異業種のメンバーが日常業務から離れ、オープン・コラボレーションの進め方や、ワークショップ型イベントの企画・運営方法を体験的に学びながら、これからの人材育成のあり方を知的に探求することを目指す、越境的な取り組みです。リレーレポート最終回はMALL理事の板谷さんからの総括レポートです。

※「アトリエMALLプロジェクト」の初会合からイベント開催までは、ぜひ、リレーレポート(第1回~第5回)をご覧ください。
[  第1回  |  第2回  |  第3回  |  第4回  |  第5回  ]

「アトリエMALLプロジェクト」をふりかえる

「新企画では、板谷理事に担任をお願いします」。
私に依頼があったのは、昨年6月8日のことでした。そして、ちょうど半年後の12月8日のリフレクションで、このユニークな企画は幕をおろしました。今日のビジネスにおいてイノベーティブな活動を展開していくには、組織の枠を超えたオープンなコラボレーションをデザイン&実践していく若手企業人が不可欠です。そのためにMALLができることは何か? それが越境型アクション・ラーニング「アトリエMALLプロジェクト」でした。今回のレポートでは、理事チームの一人として、またS-park(Bチーム)担任の立場から、このプロジェクトをふりかえります。

MALLも寄せ集めチームだけど……

そもそも企画を主催した経営学習研究所(Management Learning Laboratory=MALL)自体が、寄せ集めチームです。8名の理事は、大学教員4名+実務家4名。それぞれに本業があり、かなり忙しい日々を過ごしています。「これからの人材開発・人材育成を面白くする」という目的のもとに集まったメンバーが非営利の一般社団法人を立ち上げ、仕事を終えて集まっては、密度の濃い議論を重ねていくつかのイベントを実施しました。MALLは、いい大人がチームビルディングにすったもんだした結果の産物なのです。しかも、MALLの基本姿勢は「一人1ラボ(ひとり・ひとラボ)」。一人きりで、企画、作、演出(場合によっては主演)を行います。基軸がしっかりしているので、他のメンバーのサポートを受けながら、個人の思いを具現化できるのです。

今回の募集企画「アトリエMALLプロジェクト」の命題は、「短期間で、しかも多くが初対面のチームでひとつのイベントを実施すること」。募集告知に反応してくださった多くの方から熱い応募動機が寄せられました。理事全員で皆さんの応募書類を審査し、ようやく決定した13名。誰もが企業人としての経験を持っていて、それぞれが思い描く景色があります。「心揺さぶられる場を創造したい」「知識の引き出しが多く、人脈の広い人材になることで、社会で広く通用する人材になりたい」「組織の枠にとらわれず、同じ志を持つ意欲的な仲間に出会いたい」など、20代~30代の方々から、強い思いをいただきました。まさに、MALL理事が共有している「自律性」と「多様性」を楽しむチャンスです。一方私は、純日本企業で育ち、管理職といえばバランス感覚がほめ言葉のような時代に生きてきました。そのため、多様性推進を頭では理解はしているものの、そのバラバラ感をハラハラしながら見守っていたような気がします。

自身の立ち位置に悩む

今、思えば「担任」の定義を明確化しないままのスタートでした。今回のプロジェクトには、二つのチームがあったことから、担任と副担任をそれぞれ2名置きました。担任は各々一つのチームを受け持ちました。もう一人の担任である田中理事曰く「小学校ではなく、高校の担任のイメージ」ということで、何から何まで教育、指導するわけじゃないという距離感です。また、2名の副担任はチームにつくのではなく、両チームに対してその専門性を活かしてアプローチする、という位置づけになりました。8名のMALL理事のうち企業に勤めている4名が担任、副担任につき、大学教員4名がまるで社外取締役のようなご意見番を担うこととなりました。非日常のポジションを体験することで、自分たちにも学習を埋め込んでいるように感じました。

それにしても、この担任という位置づけは難しかったです。このチームのために、私にできることは何なのか? 何よりも、本業のピークとぶつかり、打ち合わせに参加ができなかったことが申し訳なかったし、関係性の難しさを痛感しました。Facebookグループを通じてチームの進捗状況はなんとなくわかるものの、打ち合わせの場にいないのですから迂闊に書き込みや発言もできません。自立性の尊重と、介入のタイミングに悩んだ4ヵ月でした。

二つのチームが、試行錯誤、紆余曲折、存亡危機、原点回帰、意気揚々そして意気消沈・・・…と大騒動になっていることはわかっていました。それゆえ、理事は理事で進捗共有や進め方について、かなり頻繁にメールで意見交換をしたり会合で議論をしたり、この初プロジェクトに右往左往していました。私は、そもそも担任という存在がチームメンバーから何を期待されているのかもわからず、それでもMALLの看板を背負ってイベントを実施してもらうからには、言わなければならないことがあり、どのように伝えることがより効果的かと悩みました。理事とチームの事務的情報のコミュニケーターではあったものの、果たして良きモチベーターになれていたのでしょうか。

リフレクションからの新たなスタート

「イベントを開催できた、楽しかった」ではプロジェクトの目的達成とは言えません。参加メンバーの学習は成立したのでしょうか? アトリエMALLでの経験を「イベント自体の成果」と「チームの成果と個人の貢献のプロセス」の二つの側面からふりかえるため、12月8日にリフレクション・ミーティングを実施しました。

参加メンバーには、事前課題が課されていました。

(1)グループ課題
イベントを終え「MALL理事からアドバイスやコメントが欲しい点はどのような点か、それはなぜか」についてのまとめ。

(2)個人課題(こちらは、担任も事前に取り組みました)

  • イベント自体の自己評価シート
  • 4ヵ月間のライフラインシート(チームの成果と自身のやる気の変化)

当日はこれらを持ちより、チーム発表、質疑応答、グループワークと濃密なふりかえりを行いました。イベント当時までの自身の関わり方について率直に語ったり、プロジェクトを通じて新たな自分に気づいたという発言もありました。また、理事からはイベント当日の運営に対する辛口のコメントが出たり、「ラーニング」において「誰がターゲットなのか?」「どういう状態にしたいのか?」といったそもそもの議論も白熱しました。決して、ダメ出し反省会ではなく、未来に繋げるリフレクションでした。平日の夜の開催でしたが、多くの気づきや学びの刺激的な対話は、クロージング飲み会の場に移動してからも尽きることなく、朝まで話し合ったメンバーもいたそうです。

こうして、暑い夏にスタートしたアトリエMALLプロジェクトは、冷たい北風の季節の熱いリフレクションで終了しました。いえ、新たなステージの始まりかもしれません。それは、人それぞれ…。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆

13名のメンバーは、その後どうしているのでしょうか。きっと、4ヵ月の経験を通して得たチームワーク、リーダーシップとフォロワーシップ、イベント開催のノウハウ、新たな知識とスキル、コミュニケーションの辛苦と喜び。制約がないことが、どれだけ制約となるかも体感したのではないでしょうか。また、思いがけない自分発見もあったことでしょう。MALLが目指す世界観は「学習立国・日本」。日本中に学びが満ちあふれることによってこそ、日本がキラッと輝ける存在感を持ち続けられる。そんな想いに共感し、貴重な時間をエキサイティングな4ヵ月に費やしてくれた13名のメンバーのますますの活躍が楽しみです。私たち理事チームも、多くを学習させてもらいました。さて、次回はどんな試みを実施しましょうか。早いものでMALLは、まもなく4度目の春を迎えようとしています。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事にコメントする

この記事に対するご意見・ご感想のコメントをご投稿ください。
※コメントの投稿をするにはログインが必要です。

※コメントのほか、ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)がサイト上に公開されます。

※投稿をしたコメントは、『日本の人事部』事務局で確認後、掲載されます。投稿後すぐには掲載されませんので予めご了承ください。

イベントレポートのバックナンバー

『健康経営会議2016』
2016年9月5日(月)経団連会館において、健康経営会議実行委員会の主催による「健康経営会議2016」が開催された。健康経営とは、従業員の健康を経営課題の一つと...
2016/11/01掲載
ATD International Conference & Expo 2016 参加報告
~ATD2016に見るグローバルの人材開発の動向~
2016年5月22日~25日に、米国コロラド州デンバーにて、“ATD ATD 2016 International Conference & Expo(ICE)...
2016/07/06掲載
『パフォーマンス・マネジメント革新フォーラム』開催レポート
2016年3月18日(金)お茶の水のソラシティカンファレンスセンターにおいて、株式会社ヒューマンバリューは、『パフォーマンス・マネジメント革新フォーラム』を開催...
2016/04/13掲載

関連する記事

「学習する能力」を科学する「ニューロサイエンス(神経科学)」とは
~脳の学び方を知り、職場のパフォーマンスを高める~
2016年11月に東京で開催された世界最大級の人材開発会議「ATD 2016 JAPAN SUMMIT」の特別講演で初来日した、この分野の第一人者であるNeur...
2017/01/12掲載編集部注目レポート
眞﨑大輔さん(トーマツ イノベーション株式会社 代表取締役社長)
これからの人材育成業界に大切なのはマーケティング的発想
リーダー自らも新たなサービス・商品を生み出す「事業家」であるべき
中小企業の場合、予算的な制約、あるいは人材育成のノウハウそのものがないなどの理由で、外部研修の導入などに踏み出せずにいるケースも少なくありません。そんな中小企業...
2016/09/23掲載HR業界TOPインタビュー
帝人株式会社:
「One Teijin」の旗印の下、大胆な人事改革に着手
帝人が取り組む人財育成の要諦とは(後編)
風土改革を実現するために行った「One Teijin」の取り組みにより、帝人グループのコミュニケーションは活性化し、グループダイナミクスが向上しました。その背後...
2016/07/29掲載となりの人事部
マネジメント・管理職研修の今後の課題
求められる「組織変革力」「次世代リーダー育成」への取り組みをまとめ、企業としてどのような支援体制が必要なのかを解説する。
2016/06/10掲載よくわかる講座
最近のマネジメント・管理職研修の「事例」
求められる役割が多様化、複雑化している近年の管理職であるが、大切なのは自社の管理職に対して具体的に何を求め、何を目的とした研修を行うのかを明確にし、プログラムを...
2016/06/10掲載よくわかる講座
グローバル人材育成特集
会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。会員ができること
TKPの貸会議室ネット 詳しくはこちら

記事アクセスランキング

注目コンテンツ


グローバル人材育成特集

本特集では、「グローバル人材」の育成に向けヒントとなるインタビュー記事やセミナー・サービスをピックアップ。 貴社のグローバル化推進にお役立てください。



従業員のヘルスケア特集

本特集では、従業員の心と身体の健康管理に役立つ多彩なプログラムをご紹介。これを機に、自社のヘルスケアの取り組みについて見直してみませんか。


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


人を採り、定着させる人材戦略を「昼食」が支える!<br />
単なる福利厚生ではない「食事補助システム」の活かし方とは?

人を採り、定着させる人材戦略を「昼食」が支える!
単なる福利厚生ではない「食事補助システム」の活かし方とは?

近年、社員を取り巻く生活環境や価値観・就労観の変化などにより、企業にお...