5分以内の残業について
いつもお世話になっております。
飲食店の勤怠管理を担当しております。
当社では所定終業時刻を17時と定めていますが、
実際のタイムカード上では17時を少し過ぎた「17:02」「17:04」といった打刻が散見されます。
これらの多くは、接客や後片付けなどの業務ではなく、単に本人が時計を見て打刻するまでの“わずかな遅れ”によるものと思われます。
しかし、「毎日数分でも超過しているのだから、残業として支払うべき」との主張がありました。
実際に業務をしておらず、打刻遅れの場合でも支払いの義務はあるでしょうか?
さかのぼった場合に業務をしていたか不明な場合の対応はどのようにしたらよろしいでしょうか?
今後こういったことを防ぐために有効な方法をご教示ください。
投稿日:2025/11/10 15:08 ID:QA-0160419
- PUSHIさん
- 東京都/販売・小売(企業規模 101~300人)
プロフェッショナル・人事会員からの回答
プロフェッショナルからの回答
回答いたします
ご質問について、回答いたします。
|実際に業務をしておらず、打刻遅れの場合でも支払いの義務はある
|でしょうか?
実際に業務をしていなければ支払義務はありませんが、トラブルに発展した
場合は、実際に業務をしていないことを事業主側は立証する必要があります。
立証することはハードルが高い為、支払うことが通常対応と言えるでしょう。
|さかのぼった場合に業務をしていたか不明な場合の対応はどのようにしたら
|よろしいでしょうか?
|今後こういったことを防ぐために有効な方法をご教示ください。
一般的に用いるのは、以下の運用方法です。以下を併用して用いることで、
従業員とのトラブルを予防することは可能かと思案いたします。
↓ ↓ ↓
・残業は事前許可制とし、許可がなければ残業をしてはならないルールとする。
(残業理由が不明な残業は認めないことを一律のルールとする。)
・終業時間前に業務を終了するフローへ見直し、打刻までの余裕を持たせる。
・1か月単位で時間外時間を集計し、30分未満は切り捨て・30分以上は切上げの
計算方法を適用する。(なお、日々における労働時間の端数処理はNGです。)
なお、本質的にはマネジメントの問題でもある為、社員教育の徹底はいづれの
対応をとった場合においても、必要ではあります。
投稿日:2025/11/10 15:42 ID:QA-0160421
相談者より
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/11/11 10:28 ID:QA-0160470大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご回答申し上げます。
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
「終業時刻を数分過ぎた打刻」をどう扱うかは、労働時間の定義と証拠上の推定の問題が絡みます。以下、法的根拠・実務対応・今後の予防策を体系的にご説明申し上げます。
1.法的原則:労働時間とは何か
労働基準法上の「労働時間」は、
使用者の指揮命令下にある時間(=労働者が使用者の指示により業務を行う義務のある状態の時間)を指します(最判昭和59.3.14 三菱重工長崎造船所事件など)。
したがって、
実際に仕事をしていた時間
使用者の管理下で待機していた時間
は労働時間に含まれますが、
打刻が遅れただけ
着替えや私的行為で居残っていた
などは、労働時間に含まれません。
2.タイムカードの法的推定力
タイムカードは「客観的な記録」として労働時間を推定しますが、
これは覆すことが可能な推定(反証可能な証拠)です。
つまり、
原則:タイムカードの打刻時刻=労働時間
例外:使用者側が「業務外であった」ことを合理的に説明できれば、労働時間とは扱わないことも可能
この「合理的説明」には、例えば以下のようなものが有効です。
防犯カメラやレジ締め時刻の記録
日報・POSシステムの終了記録
店長の確認メモ など
3.5分以内の残業をどう扱うか
(1)原則的考え方
労基法には「5分未満切り捨て可」といった規定はありません。
したがって、実際に業務をしていた場合には、1分単位でも賃金支払義務があります。
ただし、業務をしていない単なる打刻遅れの場合は、
労働時間に該当しない=残業手当不要です。
(2)運用上の考慮(合理的な範囲での丸め処理)
厚生労働省の通達(昭和63.3.14 基発150号)では、
「1日あたりの始業・終業の時刻について、1か月単位で集計した結果が実労働時間と大きく乖離しない範囲であれば、一定の単位(例:15分未満切捨て・15分以上切上げ)で端数処理をすることも許容される」とされています。
ただし条件があります。
勤務実態と大きく乖離しないこと
双方に不利益・不公平がないこと
就業規則や勤怠規程で明記していること
4.さかのぼって確認できない場合の対応
過去に「業務をしていたかどうか」が不明な場合:
原則として、使用者側に労働時間の管理義務があります(労基法108条、109条)。
記録がなく、実態も曖昧な場合は、「業務をしていなかった」ことを会社が証明しにくいため、トラブル防止の観点から支払う方向で処理するのが安全です。
(ただし、明確に私的滞留だとわかるものは除外して構いません。)
5.今後の防止策
(1)「打刻=労働時間」ではないことを明示
→ 就業規則または勤怠管理規程に次のような文言を追加します。
(例)
第○条 勤務時間は、業務の開始から終了までの時間とし、
単なる打刻時刻をもって労働時間とみなさない。
終業後の後片付け・着替え・私的残留等の時間は労働時間に含まれない。
(2)丸め処理ルールを明文化
→ 厚労省通達に沿って、明確な基準を設定します。
(例)
始業・終業時刻の記録に5分未満の端数がある場合は、
実労働時間と著しい乖離がない限り、1分単位で処理するものとする。
ただし、終業後の5分以内の打刻遅れが業務によらない場合は、労働時間に含めない。
(3)現場での実務的工夫
レジ締め・厨房片付け時刻を明示的に記録
タイムレコーダーを出口付近ではなく、業務終了報告後に押す位置に設置
店長が「業務終了確認ボタン」やチェックリストを運用
勤怠システム上で「業務終了報告」欄を追加(本人のコメント「後片付け終了後に打刻」など)
6.まとめ
項目結論数分の打刻遅れ(実務なし)労働時間ではない。残業手当不要。実際に業務をしていた場合1分でも支払義務あり。記録・証拠がない過去分安全策として支払方向が望ましい。今後の対応勤怠規程明確化+管理方法見直し+丸め処理ルール化。
以上です。よろしくお願いいたします。
投稿日:2025/11/10 15:44 ID:QA-0160422
相談者より
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/11/11 10:29 ID:QA-0160471大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ご質問の件
必ずしもタイムカード=労働時間とは限りません。
今後こういったことを防ぐためには、
残業する場合には、事前申請、許可制を周知、徹底することです。
投稿日:2025/11/10 16:06 ID:QA-0160426
相談者より
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/11/11 10:29 ID:QA-0160472大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
お答えいたします
ご利用頂き有難うございます。
ご相談の件ですが、終業時刻=打刻時間ではございませんので、実際に業務に従事されていなければ残業代の支払いは不要とされます。
一方で、業務に従事されていた場合ですと、原則として残業扱いになりますが、不明の場合または実際に従事されていた場合であっても、管理者が臨時の顧客対応等のやむを得ない状況を除き残業をされないよう周知徹底されていれば、会社から業務指示を行っていない以上残業扱いされなくとも差し支えないものといえます。
投稿日:2025/11/10 21:27 ID:QA-0160442
相談者より
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/11/11 10:30 ID:QA-0160473大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
ガイドライン
以下、回答いたします。
(1)「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(厚生労働省)では、「自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の、使用者が講ずべき措置」の一つとして、次のことが記載されています。
※ 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
(2)本件の場合、実態調査(ケーススタディ)を実施し、1)終業とは:どのような場合に終業となるのか、2)終業時刻の記録:正しく記録するためにはどうすればいいのか、3)補正:うまく記録できなかった場合にはどう対応すればいいのか、について労使間で話し合うことが有益であると考えられます。
投稿日:2025/11/10 21:29 ID:QA-0160443
相談者より
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/11/11 10:30 ID:QA-0160474大変参考になった
プロフェッショナルからの回答
対応
タイムカードは単なる記録ツールであり、「毎日数分でも超過しているのだから、残業として支払うべき」という意見は間違いです。
超過=残業であれば、上長の指示と承認抜きには実施できません。
勝手な残業は服務違反なので、懲戒となるはずです。
この辺りの扱いがルーズになっているのであれば、必ず残業時は指示と許可を得ること。得ない場合は服務違反となることなどを徹底しておく必要があるでしょう。
投稿日:2025/11/10 23:07 ID:QA-0160446
相談者より
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/11/11 10:34 ID:QA-0160475大変参考になった
人事会員からの回答
- オフィスみらいさん
- 大阪府/その他業種
タイムカード上では17時を過ぎた2分、4分といった時間が、労働時間と見なされるか否かという問題になりますが、「労働時間」と評価されるか否かは、「労働させた」といえるか否か、すなわち労働者が使用者の指揮命令下にあったか否かという客観的な事実関係によって判断されます。
ですから、タイムカードの打刻時間までが、必ずしも労働時間になるとは限りません。(労基署もこの考え方を採っています)
17時に業務が終業した後であっても、例えば、機械点検、清掃、整理整頓、引き継ぎ等業務に必要な行為であれば労働時間となりますが、着替えなどは、特段の事情がない限りは労働時間となりません。
実際に業務をしておらず、単に打刻遅れの場合は、それまでの時間は使用者の指揮命令下にあったと評価することはできず、労働時間とはなりません。
「毎日数分でも超過しているのだから、残業として支払うべき」との主張は的外れ、何の説得力もありません。
さかのぼった場合に業務をしていたかどうかが不明であるということは、労働していたという立証もできないわけですから、今さら対応の仕様がありません。
就業規則に所定終業時刻は17時と規定している以上、指揮命令下にある時間は17時まででしかありえませんので、社員にはその点を徹底するとともに、打刻遅れの時間は残業代の対象とはならない旨、周知すればよろしいでしょう。
投稿日:2025/11/11 08:10 ID:QA-0160449
相談者より
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
投稿日:2025/11/11 10:35 ID:QA-0160476大変参考になった
回答に記載されている情報は、念のため、各専門機関などでご確認の上、実践してください。
回答通りに実践して損害などを受けた場合も、『日本の人事部』事務局では一切の責任を負いません。
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