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【ヨミ】シンソツサイヨウ

新卒採用

新卒採用とは?

新卒採用とは、企業が大学を卒業して間もない学生を採用する活動のことです。一般的には、卒業の一年前から企業が採用活動、学生が就職活動を行い、選考ののちに企業が学生に内定を出し、学生が卒業後に入社する流れとなります。

更新日:2023/09/22

1.新卒採用とは

新卒採用とは、学生が在学中に選考を行い、一括で採用することを指します。まだ社会人としての経験がない学生の中から、自社で活躍できる可能性がある人材を発掘し、将来を担うリーダーに育成することを目的としています。インターンシップや会社説明会、エントリーシート、適性検査、面接などの選考フローを通じて、入社者を決定するのが一般的です。内定を出せば終わりではなく、入社するまでフォローすることも重要です。

共同通信社による「2024年度(24年4月~25年3月)入社の新卒採用に関するアンケート」によると、2023年度実績より新卒採用を増やすと回答した企業の割合は44%で、1年前より上昇しています。新型コロナウイルスによる景気への影響が小さくなり、企業の採用意欲が高まっています。

新卒採用の歴史

新卒採用の歴史は、明治時代にさかのぼります。旧帝大の学生が、幹部候補として旧財閥系企業に採用されたのが始まりとされています。第一次世界大戦後の好景気のもとで、企業が高等教育を受けた人材を求めるようになり、旧帝大以外の教育機関出身者も採用されるようになりました。

第二次世界大戦中は就職難が深刻になり、国が新卒者を企業に割り当てる制度や、初任給の一律化が導入されました。戦後は人口増加に伴い、新卒採用が再度活発化し、日本の就職文化の一つとして定着。採用競争が激化したことを受けて、就職あっせん開始日を定めた「就職協定」が発表されました。

1980年代に入ると、経済成長に伴い、多くの企業が大量採用を行うようになり、新卒採用が一層普及しました。しかし、1990年代に入ると、バブル崩壊により、就職氷河期が到来。経済産業省や日本経済団体連合会(経団連)が、新卒採用についてのガイドラインを作成するなど、新卒採用に関する規制や指針の整備が進みました。

中途採用との違い

新卒採用は、大学や専門学校を卒業したばかりで、未経験の若い人材を対象に行われる採用です。一方、中途採用は、既に社会人としての経験を持ち、他社から転職してくる人や、ブランクがあっても社会人経験のある人材を対象に行われる採用です。新卒採用と中途採用の違いは、ポテンシャル採用と経験者採用の違いと言い換えることができます。

【目的】
・新卒採用:将来の経営を担う人材を確保するため、一から育成することができる若手を採用すること
・中途採用:社会人としての経験を持ち、即戦力となる人材を採用すること

【対象(ターゲット)】
・新卒採用:大学や専門学校、高等学校など、各種教育機関を卒業する見込みの人
・中途採用:社会人として働いている人、もしくは過去に社会人として働いたことがある人

【採用に期待すること】
・新卒採用:長期的な育成を経て、企業に貢献する
・中途採用:短期間で業務を遂行できるようになり、即時の成果を出す

【期間】
・新卒採用:学生の在学中から卒業時期に行われる。選考期間は1ヵ月から数ヵ月で、内定から入社まで半年から1年程度の期間がある。入社時期は大学卒業直後の4月
・中途採用:応募から内定までの期間は短く、2週間から1ヵ月程度。入社時期は相談の上、柔軟に決められることが多い

【手法】
・新卒採用:新卒採用に特化した就職情報サイトや合同説明会などを利用して、一度に大量の学生を集める手法が一般的。学生の動向に合わせたSNS活用やインターンシップ、逆求人などの新しい手法も生まれている
・中途採用:転職求人サイトのほか、人材紹介会社やヘッドハンティングなども利用される。リファラル採用やアルムナイ採用なども活用されている

2.新卒採用の実務・スケジュール

企業は優秀な人材を囲い込むため、学生は希望する企業に就職するため、早めに活動を開始しようとします。他社に出遅れないためにも、どのようなスケジュールで動けばよいのか、一般的な流れを知っておくことが重要です。

採用活動時期の変遷

16年卒採用は、3月1日に広報活動、8月1日に選考活動を開始するという方針のもとで行われましたが、17年卒採用は、選考活動が6月1日開始と2ヵ月繰り上げられました。それ以降、広報活動開始は3月、採用選考活動開始は6月というスケジュールで実施されてきましたが、2026年より、専門活用型インターンシップを通じて専門性を判断された学生であれば、3月より選考を開始することが可能になりました。

■採用活動時期の変遷表
卒業時期 広報活動(卒業前年度) 採用選考活動(卒業年度)
2014年度(2015年3月) 12月 4月
2015年度(2016年3月) 3月 8月
2016年度(2017年3月)〜 3月 6月
2024年度(2025年3月) 3月 6月
2025年度(2026年3月) 3月 6月(※)
※専門活用型インターンシップを通じて
専門性を判断された学生に限り、3月

2025年卒に向けた企業のスケジュール

2025年卒とは、2025年(令和7年)の3月までに大学卒業・大学院修了予定の学生のことを指します。就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議では、2024年度卒業・終了予定者(=2025年卒)の学生について、就職・採用活動日程を変更しないとしています。

2023年6月〜8月:早期囲い込み

  • 前年度の採用振り返り
  • サマーインターンシップの実施

今年度の採用活動に向けた準備を始める時期です。学生が長期休暇に入り、インターンシップの参加率が高くなるため、積極的に学生と接点を持つことが重要です。他社よりも先に有望な学生と良好な関係を築くことで、採用活動をスムーズに進行することができます。

2023年9月〜11月:計画

  • 採用計画の策定
  • 採用要件や求める人物像の明確化
  • サマーインターンシップの振り返り
  • オータムインターンシップの実施

新卒採用の要となる「採用計画・採用方針」を決定する時期です。この時期に人事が行うべきこととして、採用要件や求める人物像の明確化、採用情報の作成、選考方法の決定、サマーインターンシップの振り返り、オータムインターンシップの実施などがあります。

2023年12月〜2024年2月:準備・調整

  • 企業の新卒採用サイトや動画など各種コンテンツの準備・制作
  • 各部門への採用人数確認
  • 選考方法の決定
  • 面接官育成

冬季は3月以降の広報活動解禁に向けて、選考の精度を高め、応募者に魅力的な企業像を提示するために追い込みをかける時期です。自社の新卒採用サイトを充実させるほか、就職ナビサイトに掲載する広告文やパンフレットの制作などを行います。工数がかかるものを用意する場合は、余裕を持ったスケジュールで進める必要があります。

また、選考に関わる従業員への働きかけも重要です。説明会の登壇者や面接官を選定し、事前に学生とどうコミュニケーションをとるかを打ち合わせることで、学生から見た企業のイメージを統一する必要があります。

2024年3月〜5月:採用活動開始

  • ターゲットとなる学生へのアプローチ
  • 内定者の個別フォロー
  • 採用目標に関する進捗確認

3月から広報活動が解禁となり、会社説明会や就活イベントが集中して行われます。6月の採用選考活動解禁を待たずに、書類選考・面接に入る企業も出始めます。合否や日程調整などの連絡、書類選考、面接官の調整といった事務作業が一気に増えるため、常に進捗を確認しながらミスがないように気をつけることが重要です。また、採用情報の公開に向けて、応募者からの問い合わせや質問に対応する体制を整える必要があります。

学生も一気に活動を開始する時期であり、密にコミュニケーションが取れるため、慎重に対応しなければなりません。企業イメージが損なわれることのないように、適切なふるまいを心がけることを従業員に伝えます。

2024年6月〜9月:選考・内定者フォローと振り返り

  • 応募者数、選考に進んだ人数、内定者数の進捗確認
  • 内定者の個別フォロー
  • 必要に応じて追加選考の準備〜実施

応募を締め切り、選考に進む学生の面接や内定出しを行う時期です。早くから就職活動を行っていた学生は、6月ごろには内定を得ていることが多く、入社する企業を比較検討する段階に入ります。他社の選考状況や志望度、競合企業の動き方などを把握しておくことが重要です。

6月は、サークル活動が落ち着いた学生や学会学内発表を終えた修士院生が就職活動を開始し、他社で内定しなかった学生が活動を再開する時期であるため、必要に応じて追加の選考を行うことを検討します。

2024年10月〜:内定式・入社準備

  • 内定式の準備・実施
  • 内定者フォローの実施(イベント開催やコミュニケーションツール契約など)
  • 入社前研修の企画・実施

内定式から入社までの期間は、人事担当者にとって重要な作業が数多くあります。内定承諾後に辞退されることもあるため、内定者との信頼関係を築き、志望度を下げないように、継続してコミュニケーションを取らなければなりません。

また、採用計画に到達していない場合は、追加で募集を行う必要があります。経営陣と連携をとり、臨機応変に対応することが求められます。

通年採用は未だ過渡期

2020年卒まで、新卒採用の開始時期は経団連の「採用選考に関する指針」によって定められていました。しかし、2021年卒以降は政府主導になり、経団連の「就活ルール」が廃止。これに伴い、経団連は企業に対して新卒一括採用の見直しを促し、通年採用や中途採用の拡大を進める方針を打ち出しました。通年採用になると、企業は時期に左右されずに採用活動ができるようになり、在学中の学生だけではなく、留学生や帰国子女、既卒者にも柔軟に対応することが可能です。

しかし、経団連が2022年1月に発表した「採用と大学改革への期待に関するアンケート結果」によれば、「通年採用」実施企業は33%と少ない状況です。通年採用はいつでも対応できる一方で、教育・研修制度の構築や人員の配置、コストなどの問題などもあるため、導入に踏み切れていない企業は多いようです。

3.新卒採用のメリット・デメリット

新卒採用では、社会経験が浅く、実務経験も乏しい学生・若手のポテンシャルを見て採用することが一般的です。即戦力となる経験者採用と比べると、育成に相応のコストがかかりますが、学習能力や適応力、コミュニケーション能力などを持つ若手人材を採用・育成することで、能力を最大限に発揮してもらえる可能性があります。

企業が新卒採用を行うメリット

育成計画の立てやすさ、育成経験の蓄積

新卒社員は社会人としてまっさらな状態です。そのため社会人としての経験がバラバラな即戦力人材よりも、育成計画が立てやすいと言えます。新卒社員に教える経験を通して、既存の従業員も成長することができるでしょう。若手が入ることは、組織に新しい風を入れることにもつながります。

企業理念や文化の継承

新卒社員は、特定企業での就労経験がないため、先入観を持たずに会社の理念や文化を理解し吸収することが期待できます。企業の成長のために大事な働き方やスタンスなども身につけやすいでしょう。新卒社員が違和感をもった部分があれば、検証して修正することにより、悪い文化をなくし、良い文化だけを残すことができます。

企業イメージの向上

新卒採用活動は、自社のビジネスを学生に向けて広報する数少ない機会の一つです。学生は就職活動を通じて、企業が行っているビジネスなどの情報を収集します。より良いイメージを持ってもらうことができれば、採用につながらなくても、企業イメージを向上させるきっかけとなるでしょう。

特に選考活動は、学生と接点を持つ機会として重要です。候補者へ丁寧に対応することで、候補者の周囲にも良いイメージを波及させることができます。

企業が新卒採用を行うデメリット

受け入れ準備、選考、育成など長期的な投資が必要

新卒採用は、多数の応募者を選考し、選考プロセスに時間もかかるため、採用担当者や面接官に負担をかけます。また、入社後も教育やトレーニングに多くの時間・労力を費やします。人的な負担がかかることをデメリットとして認識し、新卒採用を行うかどうかを検討する必要があります。

人材見極めが困難でミスマッチが起こる可能性

新卒採用においては、未経験者や経験の浅い人物を採用するため、選考の判断材料が不足しがちです。採用に至ったとしても、選考時に候補者に伝えていた業務内容と実際の業務内容に食い違いが起こり、活躍することができなければ、最悪の場合は早期離職につながります。選考材料と業務理解という二つの点を意識し、ミスマッチを起こさない取り組みが求められます。

4.新卒採用の基本手法

優秀な学生と接点を持つためには、さまざまな手法を活用しながら選考を行う必要があります。一つの方法だけでは、自社の求める人材にアプローチすることが難しいため、複数の方法を組み合わせて採用活動を行うのが一般的です。

●新卒採用ナビサイト(就職情報サイト)
新卒採用ナビサイトは、就職活動をする学生が求人情報を収集し、選考スケジュールの確認やエントリーなどを行うための情報サイトです。企業は採用情報を掲載することで、多数の求職者にアピールすることができます。

●人材紹介(エージェント)
人材紹介会社や採用エージェントを利用することで、自社に求める人材像に合った優秀な新卒生を紹介してもらいます。企業が自社だけで行う新卒採用と比べると、より多様な人材に出会える可能性があります。一方で、エージェントは年収に応じた紹介手数料がかかることや、採用プロセスがエージェントに委ねられることから、自社の採用プロセスに関する制御力が弱まるなどといった課題もあります。

●会社説明会
会社説明会は、学生に向けて、企業情報や業務内容、採用に関する情報などを説明するイベントです。学生が企業理解を深め、応募への意欲を高めることも目的としています。

●インターンシップ
大学生や学生に一定期間職場での業務を体験してもらうことで、企業と学生が相互理解を深め、適性を確認する採用手法。セミナー型の短期インターン(※)から、数ヵ月を要するプロジェクト型、アルバイトとして就業する長期のものなど、幅広い種類があります。インターンシップを行うことで、優秀な学生を早いタイミングで発掘・採用できるほか、学生の能力や性格を深く理解できるため、採用後のミスマッチを防ぐこともできます。

※近年は、一日だけの就業体験を伴わないイベントを「インターンシップ」と称さないように、経団連から要請が出されています。

●ダイレクトリクルーティング(スカウト型)
ダイレクトリクルーティングは、求人広告を出さずに、企業が直接学生をスカウトする方法です。大量採用では見つけられない希少な人材を探すために活用されています。学生にとっては、自ら企業にアプローチする必要がなく、自分の能力やスキルが評価されてスカウトを受けるという点がメリットといえます。

●企業の採用サイト
新卒採用活動のために運営する、企業独自のWebサイトで、企業の魅力やビジョン、社員インタビュー、採用情報、エントリー方法などを掲載します。学生にとっては、企業を調べる際に重要な情報源であり、志望度にも大きく影響を与えます。企業が自由に情報をカスタマイズして発信できるため、企業のブランディングや採用活動の効率化にも大きく貢献します。

●リファラル採用
リファラル採用は、従業員が保持する人脈から該当者を企業へ紹介し、その中から採用する方法です。すでに企業で働いている従業員は企業と候補者の双方を深く理解しているため、採用に至ったときの定着率は高いとされています。

●大学・専門学校での就職課
大学や専門学校にある就職支援機関との協力により、学生を紹介してもらう採用手法です。学生の相談窓口である就職課と深くつながっておくことで、市場には埋もれてしまうような隠れた人材を紹介してもらえる可能性があります。学生にとっても、信頼できる就職課からの紹介のため、安心して応募することができます。

●研究室との連携
大学・大学院の研究室と企業が連携して、学生の就職を支援する取り組みです。大学や研究機関との提携によって、特定の分野における専門性の高い学生を採用することが可能です。技術開発や研究開発に必要な人材をピンポイントで獲得できるため、特に理系学生の採用で活用されています。研究成果を活かせる場を提供されるため、学生にとってもメリットがあります。

5. 新卒採用の最新トレンド

近年の新卒採用市場では、企業がより効果的な採用手法を模索するようになっており、インターンシップの充実やHRテクノロジーを活用した選考など、新たなトレンドが次々と生まれています。採用競争に勝ち抜くためには、最新トレンドを把握して上手に取り入れることが重要です。

インターンシップなど学生のキャリア支援の推進強化

近年、企業が新卒採用で求める人材像は多様化しており、単に学歴や成績だけでなく、実務経験や人間力も重視されています。学生が自己成長していくため、企業には学生のキャリア形成支援を強化することが求められています。

2022年6月、経済産業省、文部科学省、厚生労働省は共同で「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」を改訂しました。これは、学生のキャリア形成支援におけるインターンシップの基本方針であり、改訂により、現在の大学2年生から一定の要件を満たしたインターンシップについて、企業などが取得した学生情報の広報活動や採用選考活動への活用を可能としました。これにより「採用直結型のインターンシップ」が当たり前となり、企業による優秀人材の囲い込み競争が加速すると考えられます。

SNSや情報発信ツールを用いた採用活動

現代の若年層はSNSを中心にインターネットを活用して情報を収集し、自身のスキルアップや就職活動につなげています。そのため、企業側でもSNSや情報発信ツールを活用した採用活動に注力しています。TwitterやTikTokなどのSNSやブログ、YouTubeなどを利用して、自社の魅力をアピールすることで、多くの学生や若者に情報を届けることができます。学生が企業に対する興味や関心を高めるきっかけになるので、応募につながる可能性もあるでしょう。しかし、手軽に情報を発信できるがゆえ、採用担当者は、情報の正確性や適切性に十分に配慮しなければなりません。従業員のSNS活用にも気を配る必要があります。

オンラインとオフラインを組みわせた選考

コロナ禍で対面での選考が難しくなったことから、新卒採用にオンラインを取り入れた企業が増加しました。しかし、オンラインだけでは選考の深掘りができない不安もあるため、オンラインとオフラインを組み合わせた選考が注目されています。オンラインとオフラインを上手に組み合わせることで、より多角的な視点で応募者を見ることができ、選考の信頼性や透明性が向上することが期待されます。

スカウト型による優秀人材の狙い撃ち

求人サイトの掲載や合同説明会の参加によって広く大量に応募者を募る方法ではなく、ダイレクトソーシングや逆求人など、企業側が興味のある学生に絞り、スカウト形式で直接アプローチをかける方法に注目が集まっています。学生が求める条件や適性を把握した上で、企業が声をかけることができるため、採用成功率が高まると同時に、採用に至るまでの時間やコストを削減できる利点もあります。一方、デメリットとして、優秀な人材は競争率が高いこと、自社の訴求内容に左右されること、また大量採用には向いていないことが挙げられます。スカウト型だけに絞るのではなく、他の手法と組み合わせることが大切です。

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6.新卒採用におすすめの書籍

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