日立電子サービス株式会社
「自律考動」できる人財の育成に向けて
~「体験・体感型研修」でプロフェッショナルを育てる
荊沢光彦さん(人財開発本部 コンピュータシステム技術学校 校長)
広谷正宏さん(チーフエキスパート)
若手の育成で「思うように成長しない」「こちらの意図がうまく伝わらない(コミュニケーションがうまくいかない)」などの悩みを抱える教育・人事ご担当者も少なくありません。最後に、こうした方々に向けて、教育ご担当者の視点でアドバイスをいただけますか。
荊沢:教育といえども、給与をもらって勉強しているわけです。その意味で学生時代とは全く違う。そういう認識を最初の段階で持ってもらうことが大事だと思います。その上で勉強だけでなく、挨拶や立ち振る舞い、マナーなど、社会常識を厳しく指導していく。決して、甘やかしてはいけません。というのも、インストラクターが厳しく接しても、愛情と熱意があれば、彼らはこちらの意図を分かってくれると思うからです。もちろん、それには時間がかかるかもしれませんが、愛情と熱意をベースに、新入社員教育ではそうした厳しさを大切にしていかなくてはならないと考えています。
広谷:今、各企業では組織の中に壁が出来ています。若い人たち、中堅クラス、その上の層といった具合です。その部分をうまく解除していかないと、若い人たちが成長していかない。そういう意味では、今こそ「原点」に戻る必要があると思います。
以前は、先輩社員が親身になって若い人たちに対して、叱咤激励しながらいろいろなことを教えていました。ところが今はスピードの時代だから、皆が時間に追われています。以前のような意味での教育がほとんど行われていません。そこで、多くの人が置いてきぼりの感じを持っている。確かに忙しいのは事実ですが、スピードの部分を少し緩めて、上にいる人間が親身になって若い人たちを教えていく。それが必要な時期だと感じています。
人財の段差ができてしまい、技術の伝承がうまくいっていない組織が増えてきています。
広谷:意識して教えていかないと、DNAが途切れてしまいます。いいところ、伝えるべきことはきちんと伝えていく。これを怠ると、大変な事態になってしまうと危惧しています。
8ヵ月あるから大丈夫という期間の問題ではありません。受け入れる側の人たちが、その人財をどのように育てていくのか、そういう部分も含めて、きちんと人を育てていくという強い気持ちがない限り、ダメなのではないでしょうか。
研修して終わりということではなく、その後もその人の成長をちゃんと見ていく。そうした気持ちを伝え、支援していけば、人は自ら成長していくようになる。貴社の取り組みをうかがって、そのことを非常に強く感じました。
広谷:今の若い人は、叱られたことがない人が多い。だから、叱ったとしても、反応がない。一方で、若いインストラクターも叱ることができない。ダメなことは叱らなければならないことを、双方に対してこの8ヵ月できちんと教えていきたいと思っています。一方で、ほめるときはちゃんとほめる。そういうモチベーションが向上できる取り組みをしていかないと、人間は成長していきません。
事実、今年も当初、叱った生徒はたくさんいましたが、最後はその意味を分かってくれて、親しくなっています。今では、いろいろな質問をしてきたり、困ったときには相談に来てくれています。
自分のことを、本当に想ってくれているという気持ちが伝わったからですね。かつては、学校の先生がそういう存在でした。
荊沢:現実問題として、お客様先に行くと、リアルなビジネスの現場ですから、厳しい言葉を浴びせられることがあります。だからこそ、若いときにチヤホヤしてばかりではいけない。何が良いのか悪いのか、あるいは世の中の常識といったことを教えていかなければならないわけです。そういう点からも、社会に出ることの厳しさを、「コ学」にいる間に教えなければ、その後、彼らにとって不幸なことになってしまいます。このような意味からも、当社のような新入社員教育の持つ価値があると思っています。
コンテンツはもちろんですが、人を育てるという気持ち、それを仕組みの中にいかに組み込んでいくか。そのことが、人事・教育担当者にはますます求められてくるわけですね。本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。
(取材は2010年12月22日、横浜市・戸塚区の日立電子サービス「コンピュータシステム技術学校」にて)