日立電子サービス株式会社
「自律考動」できる人財の育成に向けて
~「体験・体感型研修」でプロフェッショナルを育てる
荊沢光彦さん(人財開発本部 コンピュータシステム技術学校 校長)
広谷正宏さん(チーフエキスパート)
なぜ、「体験・体感型研修」を実施するのか?
貴社の教育プログラムに独自性を感じるのは、パソコンを実際に分解・組立するようなことから、大山クリーン登山やコ学生・喜多郎氏の交流会など、参加者が一体となって物事をやり遂げる「体験・体感型研修」を実施されていることです。これらの研修を導入するきっかけや、目的についてお聞かせください。
荊沢:コ学のスローガンに立ち返れば、基本とコア・スキルを身に付け、自律考動できる人財を育成する、ということになります。その中で、「身に付ける」という部分が、実はなかなか難しい。この身に付けることを実践するために有効な手段が体験なのです。頭の中で理解することと、体を使って体験・体感することというのは、別次元です。五感を通じて感じたこと、身をもって感じたこと。そうして、成功したこと、失敗したことは体に染み込んで、忘れることはありません。
実際にやらせるということが、現実の仕事を進めていくためには、とても大切な経験となります。そういう意味で、体験・体感を重要視しています。事実、「実習のプログラムの中での失敗は許される」とあえて言っています。こういう失敗をすると、お客様に大変なご迷惑をお掛けするということを体験、体感してもらうことがとても大切なのです。
また、もう一つの狙いとして、いろいろなイベント体験を通じて、仲間としての一体感を醸成し、同期の絆をより強いものにしてもらうことがあります。
同期の絆の重要性について、近年、人財の定着などの面から、言及する人が多くなっています。
荊沢:例えば、会社を辞めようかなと思ったとき、職場の上長には相談しにくいでしょう。しかし、同期の仲間なら、そうしたことを気軽に相談できるし、また、親身になって考えてくれます。その結果、転職を踏み止まったというケースをよく聞きます。
かつて、日本企業にはそのような職場風土がありました。こうした取り組みを、継続して行っていることが、貴社の強みの一つだと感じます。実際、この8ヵ月間で新入社員の行動や意識には、どのような変化がありましたか。
荊沢:体験型のイベントでは、仮に一人で悩んでいる人がいたとしても、そこに仲間がいま すから、彼らに相談することで、何とか自分の目標を達成することができる。そういうプロセスを通じて、自主性、積極性、あるいは協調性など、社会人として不可欠な要素が養われていきます。イベントを時系列で追ってみると、このような要素が彼らに身に付いていくことが、とてもよく分かります。
広谷:一人ひとりが自信を持つようになるのです。当初は、今年の新人は例年に比べておと なしいなと思うことがよくあります。例えば、質問をするにしても、最初は誰も手を挙げません。それが、時期が経つに従って、手を挙げる人が増えてきます。自分なりに考えて行動し、だんだんと自信がついてきたからでしょう。実際、8ヵ月経つと、彼らの顔の表情が生き生きとし、別人になってきます。
その意味でも、8ヵ月間という一定期間を仲間と一緒に過ごし、研修を継続して行うことが大事なのでしょうね。