顧客を感動させるサービスは従業員の「内発的動機」から生まれる
マニュアルのないスターバックスは、
なぜエンゲージメントを高められるのか(前編)
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 人事本部 人事部 部長
久保田 美紀さん
スターバックスのイノベーションは「関係性」を見直すことで生まれる
スターバックスは、時代に合わせてお客様との関わり方を常に見直し続けているのですね。
スターバックスは46年の歴史の中で、失敗を通して多くのことを学んできました。スターバックスにおけるイノベーションとは、「商品そのものを見直すこと」ではなく「顧客との関係性を見直すこと」だと考えています。
かつて、一度退任したハワード・シュルツがCEOに復活した時の話はご存じかもしれませんが、2007年頃、アメリカ本国では業績悪化が止まらない状態にありました。その状態からスターバックスを再生するため、何よりも重視したのが、パートナーとの間に感情的な心の絆を取り戻すことでした。人々の考え方が多様化し、ビジネスステージが変わり続けていく中でも、スターバックスが正しいと思ったことにパートナーが共感しているか、パートナーが本気でやりたいと思っているか、そんな感情的なつながりがビジネスへも大きく影響します。ユニークかもしれませんが、そんな風にエンゲージメントをとらえることが、スターバックスの経営の根幹にあります。
従業員をパートナーと呼ぶのも、ともにスターバックスをつくりあげていく対等な立場だと考えているからです。そのためハワード・シュルツは、経営陣が集まる役員会の場でも常に、「その場にもしもパートナーやお客さまが座っていたら、どのように考え、発言するかを意識すべきだ」と言っています。
最近は、日本でもクオリティーの高いコーヒーが身近になって、コンビニなどでも本格的な商品が発売されています。カフェでゆっくりしなくても、おいしいコーヒーを楽しめるようになりました。差別化していかなければ生き残ることは難しい時代です。自分たちのビジネスモデルを自分たちで再定義していくためにも、1300店舗近くを構えるコーヒーチェーンとして単に存在するだけでなく、届けたい思いを持った一人ひとりのパートナーがそこに存在することが大切なのです。