株式会社アサツー ディ・ケイ:
応募者に「どんな人と、どう働きたいか?」というリアルなイメージを喚起
新卒採用活動の既成概念をリセットし、応募者と社員の相互理解を図る「相棒採用」とは(前編)
株式会社アサツー ディ・ケイ 執行役員 人事・ガバナンスセンター統括
春日 均さん
企業と応募者の相互理解を促進
「相棒採用」の概要を改めてご説明いただけますか。また、「相棒採用」と「リクルーター」はどう違うのでしょうか。
相棒採用は、応募者が「この人と働いてみたい!」と感じる社員を探して指名し、そのまま選考を受けることができる新しい採用システムです。相棒社員候補として87名の社員が採用サイト上に登場。まずは、インスタグラムやイベント、プロフィールページなどを通じて、会社の顔であり資産でもある社員のリアルな姿を知ってもらいます。そのなかで、応募者が「この人と一緒に働いてみたい!」と感じた社員を相棒社員として5名指名します。指名された社員の一人が、書類選考と一次面接を担当。書類選考はオファーシート(OS)に基づいて行われ、応募者は指名した社員に向けて熱い思いをぶつけていきます。一次選考の通過者には、指名を受けた社員がサポーターとなって、「なぜ評価されたのか」を話したり質問を受け付けたりするなど、さまざまなフィードバックを行います。多くの新卒採用活動は、企業が学生に一方的に情報を伝え、選考を行うだけですが、当社はそうした「当たり前」をリセットし、新たな採用の仕組みを作り上げたのです。
「リクルーター」はあくまでも人事の代理人として、学生とコンタクトを取ります。一方、「相棒採用」では応募者と当社の相互理解を図ることが一番の目的です。面接官ではありますが、あくまでも会社を学生に理解してもらうためのハブのような存在です。この点は、「相棒採用」と「リクルーター」との大きな違いと言えるでしょう。それに、「リクルーター」は指名できませんし、選べません。また、日ごろどんな仕事をしているのかも、よく分かりません。しかし、「相棒採用」なら学生の側から、どの相棒社員の話を聞きたいかを選ぶことも、業務内容を知ることも可能です。
「相棒採用」というネーミングにもインパクトがありましたね。
「より良い新入社員を選ぶには、どういう採用をすればいいのか」「話題性があり、当社のユニークさを伝えられて、よく理解してもらえるような仕組みはないのか」を検討した結果、「相棒採用」というアイデアが生まれてきました。確か、最初の企画書から「相棒採用」というタイトルがあったと記憶しています。「これは面白い」と思いましたね。社員と応募者の接点をどう増やすかが相互理解を深めるキーだと思っていたので、学生がその日たまたま会った面接官に選考されるのではなく、自分のやりたいことをしている人とコミュニケーションを取った上で選んでもらうのは良い仕組みだと思ったんです。
発信の仕方も新しく、例えばインスタグラムに業務中の写真を載せて、リアルに何をやっているのかが伝わるようにしたりしています。応募者に「本当はこんな風に働いているんだ」とか「実はこういう厳しい一面もあるんだ」といったことをリアルに理解してもらえるので、大変効果的だと思います。
指名した社員と面接ができる、フィードバックがもらえる点も画期的でした。
もともと採用面接は、企業側が優位に立ち、学生側がいかに企業に合わせられるかがポイントとなっています。しかし「相棒採用」は企業が一方的に学生を選ぶのではなくて、学生側も面接官として社員を選んだり、意見を言ったりすることができます。また、企業側から学生にしっかりとフィードバックを行う点も特徴ですね。
学生は非常に画一的で、マニュアルで覚えたことをそのまま答えてくる傾向があります。しかし、我々はそんなものは求めていません。面接の場では「本当にあなたが考えていることを聞かせてください」と何度も言うんですが、「本当のことを言ったら企業に受け入れてもらえないのでは」というトラウマがどこかにあるようです。「広告会社はこのようなプロトタイプの人を求めていて、こんな答えをする人を採用するんだ」という既成概念に縛られている。しかし聞きたいのは本当に思っていることなので、少しでも可能性がある応募者が次のステップに進む際には、「こういうところに気を付けた方がいい」「もっと自分の素を出そうよ」などとアドバイスしています。
その分、相棒となる社員の皆さんには負担を掛けて申し訳なく思っていますが、「大事な人材への投資なので力を貸してください」とお願いしています。選考に残った学生と面談をしたり、メールで幾度となくやりとりをしたりするなど、多くの人が熱心にフィードバックやアドバイスを行ってくれたようです。とても感謝しています。