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人材採用“ウラ”“オモテ” 
企業・求職者・人材紹介会社の「転職」三角関係

「年収交渉代理人」としての人材紹介会社
職務経歴書の添削に熱心な人材紹介会社

控えめな希望を伝えて後悔…

企業との年収交渉は“一発勝負”

転職の目的が「年収アップ」であるケースは多い。また、目標自体は「キャリアアップ」であっても、これまでの経験を生かしてのキャリアアップなら、年収アップも含まれる…と考える人は少なくない。それほど大事な年収だが、転職の際、自分で企業と交渉するのはそう簡単ではない。交渉代理人として人材紹介会社を利用するという人もけっこういるのではないだろうか。

ちゃんと伝えて欲しい「希望年収」

「年収交渉する人を、ウチは基本的に採用しないことにしているんですよ」

ずばりそう言い切るのは、外資系IT企業として有名なU社。

「面接の時に前職での年収と希望年収を聞いていますからね。それを元に当社の規程に沿って計算した金額を提示しているんです。ですから、交渉されても変わりませんし、それでも無理に交渉してくる人はウチには向いてないと思いますよ」

たしかにこれは非常に分かりやすい話である。交渉されたからといって、提示額をアップしているようでは、逆に「最初の金額は何だったんだ?」となる可能性がある。それ以来、このIT企業に応募する人には、あらかじめその話を伝えるようにしているのはいうまでもない。

「U社は条件提示後になると給与交渉ができないんですよ。一発勝負ですから、面接の時に希望年収を聞かれたら、必ず納得して入社できる金額をおっしゃって下さいね」

これはU社だけに限った話ではなく、基本的にどの企業にも共通していえることだろう。特に大手企業になると、中途採用のための稟議書を役員クラス(場合によっては社長)が決裁してはじめて条件提示となっている場合も少なくない。面倒な手続きを経てようやく決裁をとった条件を、候補者に交渉されたからといって簡単には変更できない…という事情もあるようだ。

ところが、候補者からすれば面接の際に「思ったことが言えなかった…」というケースは多いもの。

「いかがでしょう、ちゃんと希望年収はお話されましたか」

とある企業での2次面接が終わったその日、候補者のTさんに電話してみると、なんとなく浮かない感じの声がした。

「実は希望年収を400万円と言ってしまいました」

なぜ…Tさんの希望年収は500万円ではなかったのか?

年収額算出前の交渉がポイント

「確かに希望年収を聞かれたんですが、『最低』いくら必要でしょうか…という質問だったので…まあ最低限400万円でも生活は大丈夫です、と答えてしまったんです」

「最低」という言葉にひっかかってしまったようだ。どうしても面接の場では候補者は「弱者」になる。「最低」という言葉が入ったことで、ついつい「あまり給与に執着している人物だと思われたくない」という心理が働いてしまったのだろう。

Tさんは、「やはり400万円程度の提示になってしまうでしょうか」と落ち込んでいる。

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しかし、こんな時こそ交渉代理人としての人材紹介会社の腕の見せ所である。私はさっそく企業側に電話を入れた。

「本日はTさんの面接ありがとうございました。実は…」

その日の面接の企業側の反応を探りつつ、Tさんの本当の希望年収は500万円であることをお伝えする。企業がTさんに提示する年収額を計算する前…というところがポイントだ。

「面接の場でつい控えめに希望をお伝えしてしまったようです。競合他社さんにも希望は500万円とお伝えしているそうですので、ご配慮よろしくお願いします」

その結果、Tさんへの条件提示は500万円に近い額を提示してもらうことができた。これがもし、400万円を基準として計算された後であれば、いくら再交渉しても100万円近いアップを実現するのは容易ではなかったはずだ。

人材紹介会社はどこも「給与交渉もおまかせ下さい」と言っているが、実際には「事前の交渉、打診」というのが正確なところであろう。最初のU社の例のように、いわゆる「交渉してくる人を好まない」企業も多い。唯一の例外は、非常に希少・貴重な経験(技術や資格など)を持った人材を同業他社と奪い合うような場合くらいではないか。そのケースでも、マネーゲームに陥ることだけは避けたいという企業がほとんどである。

海外ではプロに依頼するのも普通

「職務経歴書」何種類作りますか

中途採用の選考の山場は何といっても面接。しかし、「書類選考」を通過しなければ、そこにたどり着くこともできないのだから、まず重要なのは応募書類だといえるだろう。我流では本人の良さを十分にアピールできないことも多いから、人材紹介会社では書類の「添削アドバイス」も行っている。場合によっては、 10回以上の書き直しをしてでも書類選考の通過率を上げようという紹介会社もあるようだ。

応募企業ごとに、違う職務経歴書を準備

「職務経歴書はこんな感じで良いでしょうか。一度見ていただければ…」

転職活動中のエンジニア、Nさんが私に差し出した職務経歴書は、A4用紙にびっしり3枚分の内容が書かれた密度の濃いものだった。ざっと見たところ、細かい部分までとても詳しく書き込んである。全体のデザインもすっきりして、読みやすい。書体の使い方も洗練されている。

「非常に分かりやすいですね。情報量は多いですけど、きれいにまとめられていますし、これで十分じゃないでしょうか。理想をいえば2枚程度の長さならもっと良いのでしょうが、これ以上削ると大事な情報が漏れてしまいそうですし…」

そうお伝えするとNさんはほっとしたような表情になった。

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「そう言っていただけると助かります。実は10回以上書き直しているものですから…」

Nさんによると、現在、人材紹介会社を数社利用しており、それぞれの会社で応募書類の添削サービスを受けたのだそうだ。ところが、コンサルタントによって書類に対する意見が違っており、非常に苦労しながら現在の形にまとめ上げたのだという。

「コンサルタントの方によってそれぞれ好みが違うんでしょうかね。ある人材紹介会社で入れろと言われた内容が他のところでは不必要だと言われたり…。今日は特に書き直しの指摘がなかったので安心しました…」

Nさんは苦笑いしているが、確かにそういうこともあるのかもしれない。

「おそらく、ご紹介先企業の違いが原因じゃないでしょうか。業種や職種によってアピールしなくてはいけないポイントが違うように、採用する企業ごとでも微妙にポイントが違うものなんです。各人材紹介会社のコンサルタントは自分が紹介したいと思った企業のイメージにあわせて、いろいろなアドバイスをしていたのかもしれないですね…」

近年の職務経歴書はパソコンのワープロソフトを使って作成することがほとんどだ。そのため、細かい部分を変えた「バージョン違い」をたくさん作ることがそれほど難しくはない。

「10社応募するとしたら10パターンの職務経歴書を作って下さい、という人材紹介会社もあるそうですよ」

そんな話を披露したらNさんはひたすら驚いていた。

「直筆」「自作」にこだわる日本企業

「それにしても職務経歴書を代行で作成してくれる人材紹介会社はないんでしょうか。忙しい人には需要があると思うのですが…」

Nさんに言われて思い出したのはアメリカの話だった。アメリカでは、職務経歴書(レジュメ)をプロに依頼して書いてもらうことがごく当たり前だという。

「自分が作成したものをきれいにまとめるだけのサービスもあれば、丸1日かけてインタビューし、それを専門のライターが立派なレジュメに仕上げてくれるサービスまであるそうですよ。もちろん料金もそれなりに掛かると聞いていますが…」

「なぜ日本にはそういったサービスがないのでしょうか」とNさん。

「一つには、“候補者自身が書いた職務経歴書を見たい”という要望が企業側に強くあるからではないでしょうか」

職務経歴書はワープロソフトを使って書くことがほとんどといっていい。しかし、履歴書に関してはまだ「手書き(直筆)」のものを求めてくる企業が少なからず存在していることと関係があるのかもしれない。

「直筆を見たい…というのは、文字に人柄が出るという考え方からでしょうね。もちろん文字が汚いとか乱雑だとかいう理由で不採用になった人は見たことがありませんが、合否の何らかの参考にされている可能性はあります。同じ理由で、職務経歴書に関しても“本人らしい個性が表れたものを見たい”という企業が多いため、人材紹介会社が代筆しにくい環境にあるのかもしれません」

代筆まではできないが、それでも企業ごとに合った職務経歴書を提出したい。そんな人材紹介会社の思いが、度重なる「職務経歴書の書き直しアドバイス」というサービスにつながっているのかもしれない。



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