採用時に求められる「情報の透明性」
「自社をよく見せる」ことは逆効果?
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まさかそこが「問題」になるとは……
「問題になるとは思ってもみませんでした。私たちにとっては日常的な習慣だったので……」
ネガティブ情報を意図的に伏せたわけではないのに、問題になることもある。A社の採用担当マネジャーから聞いた話だ。
中堅企業のA社は、いわゆるオーナー企業だ。社長自身は話しやすい人だというが、社長がオフィスに入ってくると、その場にいる従業員全員が起立して挨拶するという慣習があった。長年続いていることで、多くの社員には特に変わっているという意識もなかったようだが、中途採用した人材が「その慣習にどうしてもなじめない」と、1週間で退職してしまったという。
「私たちは、上司が入ってきたら挨拶するのがあたりまえだと思っていたので、入社前に伝えていなかったのです」
中途採用された人は面接や内定後訪問で何度かオフィスを訪ねていたが、たまたま社長が不在だったため、その場面に遭遇するチャンスがなかったのだ。
「それ以来、うちにはこういう慣習があるとはっきり伝えるようにしています」
私も求職者にA社を紹介する際は、この慣習について話すようにしている。抵抗を示す人もいるが、そういうものだと割り切って、特に問題だと感じない人もいる。
社風や企業文化は、「良い・悪い」ではなく「合う・合わない」が重要だ。営業成績のグラフや垂れ幕をオフィス中に貼り出す会社もあれば、キャンペーンだといって全員にハッピを着せる会社もある。事前に説明していれば、そういうことに抵抗のある人は「自分には向かない」と入社前に判断することができる。
実際に転職希望者の方からは、「そういう求人票には載っていない情報が欲しくて、人材紹介会社を利用している」と言われることもある。そのためには、企業の協力が欠かせない。「情報の透明性」を高めることが、入社する人材と採用する企業双方の満足度も最終的には高めるのだと、丁寧に説明するようにしている。
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