採用時に求められる「情報の透明性」
「自社をよく見せる」ことは逆効果?
最近は採用難や人手不足が問題となっており、企業の人事担当者は採用を成功させるためにさまざまな努力を重ねている。自社をアピールする際に、採用の障害になるかもしれない情報をできるだけ伏せようとする企業も多いようだ。しかし、それが入社すればすぐにわかってしまうことであれば、得策にならないこともある。採用において、「情報の透明性」はますます大切になってきている。
ネガティブ情報もオープンにする時代
「この企業の場合、年間の平均残業時間はそうでもないのですが、年度の変わり目をはさむ2ヵ月くらいは非常に忙しいそうです。その期間は、平日夜にプライベートの予定を入れることは難しいでしょうね」
採用の障害になりそうなネガティブな情報はなるべく表に出したくない、という企業は多い。しかし、都合の悪い情報を隠したことで、入社早々に「話が違う」と退職されてしまっては元も子もない。そのため多くの人材紹介会社では、求職者に企業のネガティブな情報をしっかりと伝え、それを理解した上で応募してみたいという人のみを紹介するようにしている。
この日の転職相談では、繁忙期には業務が大幅に増えるという企業の事情を説明していた。反応は人によってまちまちだ。
「それは厳しいですね」とやんわり断ってくる人もいれば、「メリハリがつくのはいいんじゃないですか」「年平均の残業時間が多くないということは、繁忙期以外はかなり残業が少ないんですね」と前向きに考えてくれる人もいる。後者のような場合は少なくとも、入社後に「思っていたのと違う」ともめるリスクを回避できるはずだ。
実情を説明するには、企業から情報を聞いてしっかりと理解しておく必要がある。しかし、中にはまだ「情報の透明性」を高めることに積極的でない企業もある。
人事が「事前にすべてを伝えてしまうと採用ができない」と思っている企業は、特にこの傾向が強い。恒常的に残業が多い会社や、目標管理が非常に厳しい会社、職場環境が整備されていない会社などは、「できるだけよく見せよう」という意識が働いてしまうのだろう。
そういった企業の場合、「採用してしまえば何とかなる」と軽く考えていたり、もっとひどい場合には「何割かでも残ってくれればいい」と”歩留まり”を計算していたりすることもある。
このような企業を紹介してしまうと、人材紹介会社は転職希望者からの信頼を損ねてしまいかねない。多くの場合は事前に訪問した際になんとなくわかるのだが、まれに気付かないこともある。過去には、面接に行った転職希望者から「あの会社には問題があるんじゃないですか」と言われたこともあった。こうした企業は、あまり積極的に紹介しようという気になれないのが正直なところだ。