多様化する採用ルート人材紹介と競合も 増加する「リファラルリクルーティング」との併用
- 1
- 2
あやうく「二兎を追うものは……」に
「なるほど。そういうご事情があったわけですか」
Fさんから真相を聞いて私は納得した。たしかに、あの時は一次面接がものすごく好感触だったのに、二次の最終面接まで予想外に長く待たされた記憶があった。背景にそういう事情があったとは。
「担当部長も、部下が良い人材がいると自信を持って薦めてくるのを無視できなかったようです。部下の会社の役に立ちたい、という気持ちもわかりますしね」
ただし、リファラルリクルーティングでは、転職の心構えがまったくできてない人に声をかける場合も多く、そこから面接までもっていき、年収などの条件交渉までたどり着くには、最低でも数週間はかかる。そのため、私が推薦していたHさんは、その間ずっと待たされることになってしまった。
「本当にお待たせしてすいませんでした。ただ、縁故採用とてんびんにかけるのは御社にもHさんにも失礼だと思って、本当のことが言えなかったんです……」
そう言われてみれば、当時、決裁者の社長が忙しくて時間がとれないとか、部長が出張になったといった理由で待たされていたのを思い出した。Hさんは優秀な人材なので、待たせている間にも他社の紹介案件がどんどん進んでしまう。気が気ではなかった。
「それで、結局そのリファラル採用の方はどうなったんですか?」
私はふと疑問に感じたことを聞いてみた。というのも、最終的にHさんはA社に採用されたからだ。
「最終的な条件交渉で折り合わず、採用できませんでした」
「二兎を追うもの一兎をも得ず」になることだけは回避できたのだが、Fさんが思いがけず経験した初めてのリファラルリクルーティングは、そんなわけで不発に終わったのだという。ただし、新しい会社では、上層部からの指令もあり、「ダイレクトリクルーティング」や「リファラルリクルーティング」に本腰を入れて取り組まないといけないらしい。
「今後は人材紹介と新しい手法の併用になりますので、どうぞよろしくお願いします」
こちらこそ、と答えながら、私は「競合」がまた一つ増えたのか、と思わずにはいられなかった。
- 1
- 2