多様化する採用ルート人材紹介と競合も 増加する「リファラルリクルーティング」との併用
売り手市場の中、多くの企業では人手不足が常態化してしまっている。なんとか打開策を見出そうと、最近は「ダイレクトリクルーティング」や「リファラルリクルーティング」など、新しい採用手法に取り組む企業が増えているが、人材紹介や求人広告が必要なくなるほどの実績をあげているケースはまだ少ないようだ。現時点ではとりあえず併用してみよう、と考えるケースがほとんどなのではないだろうか。
似たような人、知ってます!
「以前、英語のできる技術営業の方を紹介していただいたことがありましたね。その節はものすごくお待たせしてしまって、申し訳ありませんでした」
この日はB社の人事部を訪問していた。A社で採用を担当していたFさんがB社に転職し、「よかったらまた、採用を手伝ってもらえませんか」と声をかけてくれたのだ。これまでB社とは取引がなかったので、人材紹介会社としては非常にありがたいケースである。
求人情報に関してやり取りをしているうちに、B社でも、企業がSNSなどを使って人材を直接スカウトしにいく「ダイレクトリクルーティング」や、社員の知り合いを紹介してもうために「現代版の縁故採用」とも言える「リファラルリクルーティング」に取り組んでいく予定だとわかった。
Fさんは、「以前、A社でもリファラル採用に挑戦したことがある」という。しかも、それは私が紹介した人材、技術営業の経験者・Hさんと同時並行での話だったそうだ。
「実は1次面接が終わった時点で、Hさんを採用したい、という話になっていたんです。ところが、担当部長が『今度、こういう人を採用しようと思っている』と部下の一人にHさんの履歴書を見せたところ、状況が変わったんです」
部長としては、「これで少しは人手不足が解消する」と安堵し、部下と情報を共有したかったのかもしれない。しかし、そこで思いがけないことが起こった。ある社員が、「こういうスキルを持った人材なら知ってますよ。僕から声をかけてみましょうか?」と言い出したのだ。
当時、A社では、リファラルリクルーティングの前例がなかった。しかし、社員を通して人材を採用することができれば、人材紹介会社経由で採用する場合に必要な「紹介料」がかからない。英語ができる技術営業の経験者はそれなりの年収だ。紹介料は人材の年収に比例するので、リファラルリクルーティングで採用できれば、数百万円の紹介料が浮く計算になる。
「それで、いったんリファラルリクルーティング優先で進めよう、ということになったんです」
Fさんは当時を振り返って申し訳なさそうに言った。