転職と人脈
マネジャーが採用権限を持つ外資系企業などに見られる 転職した元上司に引っ張られての「転職」

「外資系企業」という言葉から受ける印象の一つに「人間関係がさっぱりしている」というものがある。つきあい残業がないとか、仕事帰りに飲みに行ったりしない、といったイメージだ。しかし、実際には各部署のマネジャーが採用権限を持っているなど、上司と部下の関係が非常に密なケースもある。時には、上司が転職後、元の職場の部下を転職先に連れてきて再び一緒に仕事をする、といったケースも珍しくないようだ。

尊敬できる上司との出会い

『なお、これまでの転職はすべて引き抜き(人脈によるもの)です』

Aさんの職務経歴書にはそんな一文が書き添えられていた。これまでに外資系企業を4社経験しているが、その在籍期間は最初の1社を除くと平均して2年ほど。キャリアコンサルタントの目から見ても、年齢の割にやや転職回数が多く、在籍期間が短いことが気になった。「今までの転職はすべて請われての転職であって、自分はそれだけの市場価値のある人間です」と伝えたくて、Aさんは冒頭の一文をつけ加えたのだろう。

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念のため、Aさんに転職相談で面談した際にこの文の意味するところを確認してみた。

「おっしゃる通りです。すべて1社目の会社で上司だった人に一緒にやらないかと誘われて転職したんです。ですから、人材紹介会社にお世話になるのも初めてなんです」

いかにも外資系経験者らしいスマートな雰囲気だが、話し方や物腰は丁寧なAさん。詳しく聞いてみると、やはりその上司にかなりほれ込んでいるようだった。

「経験豊富で非常に優秀な方でしてね。私も多くのことを学びました」

Aさんが最初の会社に勤めている時に、その上司が転職してきたのだという。一緒に仕事を進めていくうちに仕事観などが似ていることがわかり、何かとかわいがってくれた。ところが3年もしないうちに、その上司が再度転職してしまう。

「新しい上司の下で働きはじめたわけですが、どうしても以前のやり方と比較してしまう。ある時、思い立って今後のことも含めて元上司に相談に行きました」

すると話を聞いた元上司が、「だったらうちの会社に来ないか。ちょうど増員を考えていたし、もし君が来てくれるならぴったりだ」と誘ってくれたという。外資系企業の場合、各部署のマネジャーが採用権限を持っているケースも多い。

「うれしかったですね。人脈というのはこういう時に生きるのかと思いました」

それから上司が転職するたびにAさんも同じ会社に移り、そうこうしているうちに一緒に4社も経験することになったという。マーケティングのプロである上司はAさんが言う通り、おそらく非常に仕事のできる人物なのだろう。そうでなければキャリアップしながら何度も転職を繰り返せるわけがない。その仕事ぶりを目の当たりにして、「この人からもっと学びたい」と思ったというAさんの気持ちもまた、本物だったのだろう。

人材採用“ウラ”“オモテ”

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